目次
1.家庭内別居をするメリットは?
リリ子さんは、家庭内別居にどんなメリットがあると思う?
世間体が保てる、ストレスが減る、夫婦どっちも子どもと一緒に暮らせる・・・とか?
もう少し違う角度からのメリットもあるから、見てみようか。
夫婦関係が悪化した際に、離婚までのクッションとなる方法のひとつとなるのが家庭内別居です。家庭内別居は「互いにできるだけ接触しないで過ごす」生活をすることが目的です。
そんな家庭内別居のメリットとはどのようなものがあるのか、詳しく見てみましょう。
①妻や夫と一緒に過ごさなくていいためストレスが減る
②家賃や光熱費などを分担すれば離婚するよりも負担が少ない
③「自分のことは自分で」と決めておけば相手の食事や洗濯などをしなくていいため楽になる
④内情はどうであれ夫婦で一緒に住んでいるため世間体がいい
⑤子どもにとって両親がそろっていた方がいい
⑥子どもと離れ離れにならない
家庭内別居のメリットとしてもっとも大きいのは①です。
夫婦が気持ちの上ですでに冷めている状態だと、顔を合わせるたびに喧嘩といった毎日になりがちです。
家庭内別居をする段階まできているということはお互いが割り切っているケースがほとんどですから、顔を合わせる時間そのものを削ることで精神的なストレスが軽くなります。
また別居となると家賃や光熱費がそれぞれかかってしまい、家計をかなり圧迫しますから②もメリットとしては大きいでしょう。
特に妻が専業主婦や短時間のパート勤務だと家賃や光熱費を負担できませんし、夫の収入から出してもらうこと自体に抵抗を感じる場合も多いでしょう。
子どもがいる家庭なら、経済面を考えると無駄な出費をしなくてすむことは重要です。
③は①に重なる部分が多いですが、険悪な関係でありながら相手の食事や洗濯をするというのは苦痛なものです。特に食事は手間がかかることですから、する側としてはストレスが大きいですよね。
また食器や洗濯物というのはある意味私的な要素が強い物ですから、それらを共有せずにいることがストレス軽減になるでしょう。
④は社宅や住宅街など、夫婦関係が悪化していることを周囲に知られると何かと対応が面倒になる場合にはメリットとなります。
⑤⑥は親子関係に大きな変化を起こしたくない場合に離婚や別居よりもメリットが大きくなります。子どものために夫婦関係の摩擦に耐えることになりますが、①や③とあわせれば大したストレスにならない可能性があります。
2.家庭内別居をするデメリットは?
家庭内別居ならストレスも減って、お互いに良い生活が送れそうじゃない?!
でも、デメリットを見たらリリ子さんはどう思うかな・・・?
家庭内別居にはメリットと同時にデメリットももちろんあります。離婚や別居までは踏み切れないから家庭内別居をしようと考えている方にとっては特にデメリットの面をよく検討する必要があります。
詳しく見ていきましょう。
①嫌な相手と同居していることに変わりはない
②家事分担をしていれば顔を合わせることが増える
③婚姻関係が続いているため好きな人ができると都合が悪い
④お互いの私生活が意図せず垣間見えてしまう
⑤子どもの成長に悪影響を与える可能性がある
⑥虚しさを感じる
⑦離婚前提でない場合は老後の生活に不安がある
もっとも大きなデメリットはやはり①です。さまざまな条件を踏まえて離婚や別居ではなく家庭内別居を選んだものの、同じ屋根の下で暮らすわけですから、互いの気配をどうしても感じざるを得ません。
すでに気持ちが冷めている相手とそういった空気を共有するのは大きなストレスと言えます。
①の影響はそれ以外のデメリットにも大きく影響を与えます。②も生活していく上で必要な家事を通して相手の行動を事あるごとに感じるということになります。
いくら生活パターンをずらしたとしても、電化製品や収納家具は共有するわけですから、顔を合わせたくないレベルによっては精神的に負担が大きいです。
③④は、夫婦それぞれが割り切っていると思っていても、同居していることでどうしても気配を感じるものです。言ってみれば知りたくない情報が勝手に入ってくるようなものでやはりあまり気分のいいものではありません。
またもし不貞行為を行った場合、家庭内別居の段階はまだ婚姻関係にあるわけですから、離婚の方向に話が進んだ時に不利になり慰謝料の請求をされる可能性があります。
別居よりも不貞行為の証拠を握りやすいだけに注意が必要です。
また子どもがいるなら⑤は気になるところですね。しょっちゅう喧嘩をしているのなら当然ですが、一切口を聞かず一緒に過ごすこともなく外出もばらばらにしている両親の姿も子どもの心身の成長に悪影響を与えます。
こうした生活をずっと続けることで⑥につながることも多いでしょう。また家事や介護といった面から⑦もじわじわと不安感を大きくさせるデメリットと言えるでしょう。
子どもがいる夫婦が実際に離婚してひとり親になった場合、現実としてどんなことに困るのかというアンケートをとったところ、1位が生活費、2位が子どもの養育や教育、3位が就職や仕事でした。
参考・参照:京都市「ひとり親家庭実態調査2013」
夫側は子どもの養育や教育、妻側は生活費に関する不安が特に大きいようです。
つまり離婚するとお金や子どもに関する面での不安が大きく、それを避けるために家庭内別居を選択している夫婦が多いことが分かります。
家庭内別居のメリットとデメリットがどう当てはまるかはそれぞれの夫婦によって異なりますが、不安への対処を探る意味で離婚にすぐ踏み切らず家庭内別居で様子を見るというのはひとつの方法と言えます。
3.家庭内別居は子どもの成長・心理にこんな影響を与える
それに、老後のこととか、相手の私生活が垣間見えることについては盲点だったわ・・・
家庭内別居による夫婦の不仲は、子どもからすると両親の不仲であり、子どもにさまざまな悪影響を与えます。
父子家庭を支援するNPO法人ファザーリングジャパンが2016年9月に公表した「結婚生活と離婚に関する意識調査結果概要」によると、次のような結果が出ています。
離婚したいと思ったことがある:夫35%、妻50%
別居したいと思ったことがある:夫33%、妻48%
このデータを見てみると、離婚はしたいけど、別居はしたくないという微妙なラインで揺れ動いていることが分かります。
このうち家庭内別居をしているのは3~4%ですが、結婚生活を続けている理由としては、
- (離婚や別居によって)子どもにつらい思いをさせるから
- 愛情があるから
- 経済面が安定するから
- 我慢すればいいから
などが挙げられています。
子どものために夫婦関係は冷めていても離婚や別居はしない、こうした考えは子どもにとってはどうなのでしょうか。
2013年の日本社会福祉学会第61回秋季大会で「両親の不仲が子どもに与える影響-自己肯定感と家族安心感の心理調査から-」という研究成果が発表されました。
一方の親への悪口を子どもに聞かせるという行為が子どもの心理に与える影響を明らかにするために行われた調査です。この調査によると、一方の親への悪口を聞かされている子どもは、
・自分はひとりぼっちだと思う
・自分は不幸だ
・家にいると嫌な気分になる
といった項目の値が高く、逆に
・今の生活が好き
・他の人と話すことは楽しい
といった項目の値が低くなっています。
両親の不仲という環境は子どもの心理に悪影響を与えることが分かります。
両親の不仲というのは日常生活のさまざまな場面で遭遇することになります。
両親が口を聞かず無視しあっている、同じ家にいるのに食事も就寝も別にしている、こういった姿を見せられ続ける子どものストレスは相当なものです。
離婚や別居ではなく家庭内別居をすることで子どもに配慮しているつもりかもしれませんが、こうした険悪な雰囲気の両親の姿をずっと子どもに見せ続けるというのが家庭内別居の現実です。
子どもは純粋で敏感です。夫婦がどんなに不仲な姿を取り繕ったとしてもたいてい察知しています。
「お父さんとお母さんは仲良くしてほしい」と考えますが、よそよそしい両親の姿を見てそれがかなわないと知ると「自分のせいではないか」と自分を責めてしまうケースが多いのです。
自宅でいい子にしていなければいけない、そういうプレッシャーが大きく、子どもにとっては家庭が安らげる場所ではなくなってしまいます。
その結果他人とのコミュニケーションがうまくとれなくなったり、消極的になったり、感情表現が苦手になったりして学校生活に異変を起こすのは珍しくなく、最悪の場合はPTSDを起こすケースもあります。
家庭内別居を選ぶのは夫婦の事情です。にもかかわらず「子どもがかわいそうだから離婚をしないために」といった理由をつけるのはNGです。
ぎくしゃくとした雰囲気の家庭で育てることがいい養育・教育環境とはとても言えないからです。
子どもへの影響は何をおいても一番に考えなければならないでしょう。
険悪な家庭内の雰囲気によって子どもに気を遣わせるくらいなら、夫婦仲の険悪さによっては離婚や別居を考えたほうがいいという意見は少なくありません。
離婚は子どもにとってどのような影響を与えることになるのか、精神的にどのような影響があるのか等についても、知っておく必要があります。
【離婚を決めるその前に】その離婚、子供を最優先に考えた結果ですか?
4.家庭内別居中の生活費や家事分担、不倫はどうなる?
さっきゴン太さんが、子どものためと言って家庭内別居を選択することに苦言を呈していたのは、このことが関係していたのね。
不倫とか、お金とか・・・ね。
心情的な面だけでなく、物理的な面でも家庭内別居について考えなければいけません。
家庭内別居中に注意したいことは主に3つあります。
- 生活費
- 家事分担
- 不倫
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
【注意点1】生活費
まず現実的な問題として気になるのは生活費ですよね。特に妻が専業主婦や短時間パートというケースだと問題は深刻です。
収入がある夫から生活費をもらえればいいのですが、険悪な関係だけに渡さないというケースもあります。その場合の対応策として知っておきたいのが婚姻費用分担請求です。
婚姻費用とは、別居中の夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用をさします。衣食住にかかる費用や子どもの養育費、医療費、一般的に必要な娯楽交際費などがこれに当たります。
婚姻費用は、収入が多い方が少ない方に支払います。したがって夫が妻に支払うというのではなく、妻の方が収入が多い場合は妻から夫に支払う場合もあります。
婚姻費用の金額は夫婦の話し合いによって決めてもいいですし、話し合いでは決まらないようであれば夫と妻の収入をもとに算定表を参考にして算出します。
算定表には2種類あります。ひとつは裁判所が利用している「養育費・婚姻費用算定表」、もうひとつは日弁連が作成した「新算定表」です。通常は前者を使用します。
算定表で金額を決定する場合、確認するのは子どもの年齢と人数、夫と妻それぞれの年収です。年収については、給与所得者なのか自営業者なのかによって該当する欄が変わります。
事例1:夫の年収450万円、妻の年収150万円
14歳未満の子どもが1人だと6~8万円、2人だと8~10万円となります。
事例2.夫の年収400万円、妻の年収300万円
14歳未満の子どもが1人でも2人でも4~6万円となります。
事例3.夫の年収600万円、妻の年収0円
14歳未満の子どもが1人だと10~12万円、2人だと12~14万円となります。
夫婦関係が悪化すると、婚姻費用の支払いにおいて揉めることはよくあります。同じ住宅に住んでいることで家賃や光熱費の負担を分けにくく、どちらがどれだけお金を出すか話し合いがつきにくくなります。
しかし婚姻関係がある以上、前述したように互いが生活を維持するために必要なものですから、算定表という客観的な視点で淡々と決めるのがスムーズです。
ただし夫や妻によっては婚姻費用は出さない、家から追い出そうとするといった冷たい対応をする人もいます。そういった事態になることも想定して生活費を確保しておくことは重要です。
【注意点2】家事分担
生活費の次に考えたいのは家事分担です。家庭内別居において予想以上に精神的な負担となる部分です。
夫婦関係が悪化していながらも同居しているわけですから、生活パターンをずらすとすれば食事や洗濯、掃除はそれぞれが行う形が自然です。しかし実際にはきっちり自分の分だけやって相手の分は一切やらないというのはなかなか難しいものです。
特に子どもがいれば目の前であからさまに家事を分けることができないケースも少なくありません。
お互い自分の家事だけを行い他人に近い生活を送る夫婦もあれば、分担がゆるやかでできる方がするというスタンスで生活する夫婦もあり、家庭内別居における家事分担に正解はありません。
そのため、夫婦関係が壊れている上にさらにとらえ方の違いによる無用な喧嘩を防ぐためにも、家庭内別居をする意味を考えながら事前にどう家事を分担するのかよく話し合い、互いに納得しておくことが必要です。
【注意点3】不倫
そしてややこしい事態になりやすいのが家庭内別居中の不倫です。
家庭内別居をしているとはいえ婚姻関係にあるので、夫または妻が不倫した場合は、離婚か修復どちらが前提であっても問題です。
別居していたり、離婚について積極的に協議している・調停中であるといった場合は、不倫している相手に対して慰謝料を請求することができます。しかし家庭内別居の場合は慰謝料の請求は難しいケースがほとんどです。
その理由は「婚姻関係の破綻の有無が証明しにくい」ことにあります。
不倫による慰謝料の請求は婚姻関係が破綻していないことが前提ですが、第三者が証明することは非常に難しいです。
たとえば家庭内でほとんど会話がない、家事分担がなく生活費を完全に分けている、食事をはじめ生活時間をずらしている、性交渉はいっさいない…家庭内別居として普通と言えるこういった実態があれば、婚姻関係は破綻していると考えられ、慰謝料の請求は認められません。
夫婦として気持ちは離れているが家事や育児は分担していた場合は、婚姻関係が破綻しているとまでは言えず慰謝料の請求が認められることがあります。
婚姻関係が破綻しているかどうかという証明自体がとてもデリケートな問題ですから、慰謝料の請求ができるかどうかも判断が非常に難しいと言えるでしょう。
5.家庭内別居を少しでも円満にする方法
家庭内別居中の不倫って、ややこしいのね。
相手の私生活が中途半端に垣間見える分、不倫にも敏感になると思うんだけど、家庭内別居中の不倫で慰謝料がとれるかっていうと、ややこしい問題なんだよ。
ただでさえ「別居」って言葉が入ってるから険悪ムードなんだけどさ、少しでも円満に家庭内別居する方法ってないの?
円満に家庭内別居するためには、いくつかの約束事・ルールを作っておけばいいんだよ。
・・・できるだけ顔を合わせないとかかな?
家庭内別居は離婚や別居を避けるための選択です。
さまざまな事情で離婚や別居はしたくない、けれど夫婦間には溝がある、そんな時は少し距離を取って互いが冷静になることが必要ですよね。家庭内別居はそういった冷静さを得るために有効です。
家庭内別居をする上ではいくつかのルールを決めておくことがおすすめです。
【ルール1】互いに他人だという意識を強く持ってマナーや礼儀を守る
婚姻関係が続いているとはいえ気持ちとしてはすでに他人という感覚が強い状態ですから、他人と同居しているのだと割り切っておくことが大切です。
他人だからこそ「おはよう」「おやすみ」といった日常の挨拶はドライに、そして最低限交わすことが必要です。
【ルール2】互いを干渉しない
家庭内別居を「他人との同居」という感覚で続けるのであれば、互いは単なる同居人です。プライベートの干渉はしないのが基本でしょう。
【ルール3】家事分担を明確にする
日々発生する家事について、どちらが何をするのか、互いが納得する内容できちんと決めておくことも大切です。
食事や洗濯といった毎日行う家事だけでなく、ゴミ捨てや庭掃除といった時々行う家事についてもできるだけ細かく決めておくといいでしょう。
【ルール4】育児の分担もきちんと分けておく
家庭内別居において何より配慮しなければいけないのは子どもへの接し方です。
子どもへのケアをこまめにするために離婚や別居ではなく家庭内別居を選択したのですから、互いに対する感情とは別に子どもに対してはしっかり向き合うことが重要です。
保育園児であれば送り迎えはどう分担するのか、休日はどちらがどのように遊んでやるのか、小学生なら宿題のチェックはどちらがするのか等、子どもが日常生活を楽しく過ごせるよう互いに協力するよう心掛けたいですね。
家庭内別居は、互いを他人と位置付けることで、たとえ憎らしさを感じているとしても最低限のマナーを守って生活を営むことができます。少しでも円満に過ごすためには、互いの割り切りと歩み寄りは欠かせないと言えます。
6.家庭内別居と離婚、どちらがいいの?
一つ屋根の下で暮らしていても、他人だっていう意識を強くもっていれば、最低限のマナーとか礼儀を守って生活できるからね。
ここまで家庭内別居についてさまざまな角度から見てきましたが、やはり気になるのは「結局家庭内別居と離婚のどちらがいいのだろう?」ということではないでしょうか。
どちらがいいのかはさまざまな要因を考慮して決めなければいけませんが、検討する際のポイントとしては次のような項目があります。
ポイント1.経済的な問題
家賃や食費などの生活費、子どもの養育や教育にかかる費用等は生活をする上で必ず必要です。
離婚すれば一般的には妻が子どもを引き取ることが多く、夫が妻に対して養育費や教育費を支払わなければいけません。また妻が専業主婦や短時間パートだった場合は生活能力が低く、再就職したとしても生活していけるだけの収入を得るのは大変です。
夫婦とも経済的な負担は離婚する方が大きくなるという点を踏まえて検討することが大切です。
ポイント2.子どもの養育問題
家庭内別居のメリットやデメリットの項目でも触れたように、離婚ではなく家庭内別居を選ぶ夫婦の多くは「子どものことを考えて」という理由を挙げます。
しかし離婚のみならず、家庭内別居も子どもの心に大きな負担を与えるのは同じです。
まだ小さい子どもなら夫婦が決めるしかありませんが、小学生高学年程度から上の年齢の子どもなら自分の意志がはっきりしていますから、子どもの意見を取り入れることもひとつの方法でしょう。
ポイント3.年齢の問題
互いに対して無関心で、存在を無視する形で生活する家庭内別居は、体力や気力が低下する年代からスタートすると、もしもの場合に命にかかわる問題につながるケースがあります。
2014年、広島県広島市の団地の5階にある一室のベランダで女性の腐乱死体が発見され、家庭内別居状態だった77歳の夫が死体遺棄容疑で逮捕されるという事件がありました。
同じ年に兵庫県明石市でもマンションで男性の遺体が見つかり、家庭内別居中の60歳の妻が逮捕されています。さらに大阪府堺市では死後1ヶ月経過した女性の遺体が見つかって、70歳の夫が逮捕されました。
にわかには信じがたい悲しいニュースですが、これらはいずれも家庭内別居中の家庭で起きた事件です。互いの無関心さが要因のひとつと言えます。
ポイント4.夫婦の心情の再確認
こうしたポイントを検討するのに加えて、家庭内別居か離婚かを決めるには夫婦それぞれの心情を確認しなければいけません。双方、もしくはどちらかが離婚を拒否しているのであれば、なぜ離婚したくないのかを考える必要があります。
では離婚したくない理由としてはどのようなものがあるのでしょうか。
まず夫が離婚を拒否する理由の代表的なものを挙げてみます。
・まだ妻に対しての愛情がある
・子どもがかわいそう
・子どもと離れたくない
・家庭内別居だと養育費を支払わなくてよい
・慰謝料を請求されずにすむ
・家庭内別居だと妻が家事をしてくれるから楽だ
・職業柄離婚をすると信用問題にかかわる
対して妻が離婚を拒否する理由の代表的なものを挙げてみます。
・まだ夫に対しての愛情がある
・子どもがかわいそう
・夫が親権を取ろうとするのを阻止したい
・離婚すると養育費しかもらえなくなるので損だ
・慰謝料を取られる立場になるため支払いたくない
・経済力がなく離婚したら生活できない
これ以外にもさまざまな理由がありますが、重要なのは「なぜ離婚を拒否するのか」という理由をつかむことです。
もし理由が分かれば話し合いもスムーズに進みますし、家庭内別居と離婚のどちらがいいのかを決めやすくなります。また根本的な問題である不仲が解消される可能性もゼロではありませんね。
家庭内別居と離婚のどちらを選ぶべきなのか、その正解は夫婦によって異なります。
今後の生活を考えると年齢は重要なポイントです。また「離婚を選ぶとしたら後悔しそうかどうか」を考えるのもいいでしょう。
互いのいいところと嫌なところをそれぞれ書き出して、離婚に本当に進んでもいいのかを考える時間をとるのもおすすめです。
その時の瞬間的な気持ちで決めるのではなく、今後の人生のために時間をかけて考える必要があるでしょう。
以下の記事では、納得して離婚するために必要なことや、円満離婚のために知っておくべきことをまとめています。
平成16年に始まった離婚方法についても説明していますので、参考にしてみてください。
>【納得できる離婚のために】6つの離婚の仕方と円満離婚の7つの約束
また、離婚する前にあらかじめ確認しておくことで、離婚時に起きがちなトラブルを予防することができる項目があります。
失敗しない離婚のためにやっておくべきことを必ず押さえておきましょう!
7.家庭内別居体験談
特にリリ子さんは、すぐに思考停止するし、一時的な感情でダダダダダ!って突っ走るからね。よく考えないと。
では最後に、実際に家庭内別居を経験した体験談をいくつかご紹介します。
【事例1】育児中心の生活がすれ違いを生み家庭内別居へ(30代・Tさん)
結婚してすぐ1人め、続いて年子で2人めを産んで私の生活は子ども中心になりました。
食事は子どもが食べられるメニューを中心に作ることが多くなり、深夜でも子どもが起きるとあやしたりして慢性的な寝不足になっていたため、土日に夫が家にいる時は長めに昼寝をしたりするようになりました。
夫は子ども中心で自分が二の次になった私の態度に不満を感じるようになったらしく、だんだん仕事から帰っても不機嫌なままという日が続くようになりました。でも私も子どもの世話で忙しかったので、「仕事で何かあったんだろう」と勝手に解釈して放置していました。
そのうち夫は「おはよう」「おやすみ」といった挨拶をしなくなり、私の挨拶も無視するようになりました。会話は最低限になり、子どもたちとだけ話すような状態です。そのうち夕食は市販のお弁当など自分が食べたいものを買って帰って食べるようになってしまいました。
そんな状態が二週間ほど続いたので私も嫌な気持ちになり、挨拶をしなくなって夕食も夫の分は作らなくなりました。洗濯はしていましたが乾いたものをたたむところまで。タンスに入れることはしなくなりました。
すると夫は寝室ではなくリビングのソファで寝るようになり、家庭内別居状態になってしまいました。
そんな状況が約1ヶ月続き、険悪な空気に耐えられなくなったので実家に戻ろうとある晩荷物をまとめていたら、帰宅した夫が驚いて「どこに行くの?」と声をかけてきました。
そこで即席の話し合いになり、互いの不満を出し合いました。はじめは激しく口喧嘩しましたが、考えていることが分かってすっきりし、お互いできる努力をしようということになって以前の生活に戻ることができました。
不満を自分の中でためこんでしまうのではなく、相手にきちんと伝えることが大切なのだと痛感しました。家庭内別居といっても短かったですが、精神的なストレスが大きかったのでもう二度としたくないですね。
【事例2】仕事で外出が増えた妻への不満から家庭内別居へ(40代・Kさん)
結婚3年めで子どもを1人授かって以来私はずっと専業主婦だったのですが、子どもが幼稚園に入って時間が少しできたのをきっかけに、独身時代にやっていた仕事をフリーランスで再開することにしました。
再開して半年ほど経つ頃には仕事の量が増えてきて、翌年には子どもの預け先を幼稚園から保育園に変えてフルタイムで働くようになったため、夫に家事や育児の協力をお願いすることも増えました。
ある日曜日、子どもを夫に預けて仕事をして帰宅すると、夫が不機嫌な顔で「俺の休日がだいなしだ。一日中子どもの世話をして疲れたからもう今後はやらない」と言ってきました。
私はフルタイムで曜日に関係なく働き、夫の帰りが遅い平日は保育園のお迎えから寝かしつけまで毎日一人でやっています。それまでにも平日の家事や育児の負担を少しでいいから増やしてほしいとお願いしても拒否されたため、日曜日だけ子どもの世話をお願いしていました。
なのにそれも嫌だと言われたことで大喧嘩になり、その日以降家の中ではまったく会話をしない家庭内別居の状態になりました。
とはいえ家事や育児の負担は私が9割以上です。
夫は家にいづらいのかますます帰宅が遅くなり、つくった夕食すら食べないことが続きました。これではいけないと話し合いを何度か私から持ち掛けましたが夫は一切協力したくないとの答え。
さらにある日、子どもが「夜時々お父さんがお母さんを怒鳴っているからこわい」と言ってきたため、子どもに悪影響が出ると思い別居を申し出しました。
夫は猛反対しましたが私としては修復は不可能という覚悟ができていたので、迷わず子どもと家を出ました。その後別居しながら離婚調停、離婚裁判と進んで2年後に離婚しました。
家庭生活を円満に進めるには夫婦の話し合いは絶対に必要です。
しかしその話し合いがまったくかみ合わず、価値観の違いも大きいとなると離婚しか選択肢はありません。私の場合は子どもの一言がきっかけで覚悟を決めましたが、その前に家庭内別居を経験したことも大きかったと思います。
まとめ
家庭内別居から円満に戻ったり、はたまた家庭内別居から離婚に発展したり、いろんな夫婦がいるのね。
しっかり考えて行動するようにしたいね。
家庭内別居か離婚か、悩んでいる方にとっては日常生活はもちろん今後の人生がかかっているといっても過言ではなく、とても深刻な問題です。
だからこそその場の感情で結論を急ぐのではなく、さまざまな条件を考慮しながらじっくり考える必要があります。
特に子どもがいる場合は子どもへの悪影響がより小さくなるほうを選ぶべきでしょう。また経済面も生活レベルのことを考えると決して無視できない部分です。
それから離婚において、すごく重要な問題が他にもあります。
下の記事を見てあとあと困らないように事前に解決させておくことをオススメします。