私はパートだから、子どものことも考えると生活費がちょっと心配なの。
別居中の生活費は、相手に請求することができるんだよ。条件はあるけどね。
条件でもなんでもあっていいから、知りたいわ!
夫婦関係の見直しのためや、離婚を前提として別居を考えている、現在別居中といった方もいるのではないでしょうか。
自分たちの未来を考えた時に必要になることがある別居ですが、別居をするにあたってはさまざまな問題が考えられます。
特に不安を感じる問題として、別居中の生活費という問題があります。
中でも別居中の生活費に不安を感じる女性は多く、共働きの世帯でも収入は夫の方が高く、必然的に経済的な点については夫に頼っているという妻が多いため、別居してしまうと夫の収入を頼れないという事情があるためです。
やはり経済に不安を抱えた状態では、別居したいと思っても、なかなか難しいですよね。
ただ、専業主婦(専業主夫)として暮らしてきた方でも、別居をしているという方もいますし、パートやアルバイト程度の収入でも、別居をしているという方もいます。
このような方は、婚姻費用を夫・妻からもらっている可能性があります。
夫婦には例え別居中であっても「扶助義務」というものがあり、生活に困ることがないように協力し合う必要があるのです。
この生活費を、婚姻費用と言います。
別居中でも生活に困らないように、夫婦のうち収入が多い方が、収入が少ない方に対して生活費を支払い、生活に困らないようにしなくてはなりません。
・婚姻費用の相場はどのくらいなのか
・婚姻費用が貰えなかった場合にはどう対処すればいいのか
・過去に遡って請求することはできるのか
・困窮状態にある場合の請求方法はあるのか
などについて、詳しくご説明していきます。
生活費の心配をなくして安心して別居生活を送れるようにするため、少し難しい部分があるかもしれませんが、頑張って知識をつけていきましょう。
また、後悔しない離婚をするために、こちらの問題も先に解決しておくことをオススメします!
目次
1.別居中の生活費はどうしたらいいの?
ちゃんと覚えとかないと、餓死しちゃったりしたら大変!
困窮している場合の生活費の請求方法もあるから、そういうことについても勉強していこう!
じゃあ、まずは婚姻費用についてみていこう!
結婚をしている夫婦には、いくつかの義務が課せられています。
一緒に暮らしているときにはあまり意識をすることがない義務も、別居するときには気にすべきものがいくつかあります。
民法によって定められている義務の中には、次のようなものがあります。
・同居、扶助義務(752条)
・婚姻費用分担義務(760条)
・日常家事債務の連帯責任(761条)
・貞操義務(770条1項)
・未成年の子の監護義務(820条)
本来であれば夫婦は同居して互いに助け合い、収入が多い配偶者は収入の低い配偶者に対して生活費を多く負担しなければならないことも、この義務の中には含まれています。
ただ、別居すると民法752条の同居、扶助の義務には違反することになりますが、別居自体が夫婦の合意の上であれば問題はありません。
別居にあたり気にすべき義務は、婚姻費用負担義務です。
この婚姻費用負担義務というものについて、詳しくみていきましょう。
婚姻費用分担義務とは一体なにか
まず民法760条の条文をみていきましょう。
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法第760条
婚姻から生ずる費用というのは、婚姻中に必要な生活費の事です。
夫婦お互いの収入などを考慮して、お互いに分担することになっています。
別居をしていても、離婚届を出していない間は婚姻中になるため、必要な生活費は夫婦お互いの収入などを考慮して、分担する必要があります。
つまり、収入が高い方が収入が低い方に対して生活費を支払うということです。
ただ、収入が高い方が生活費の全額を負担しなければならないわけではありません。
「その資産、収入その他一切の事情を考慮して」という部分があるため、もし収入が低い方でも、収入がまったくない専業主婦(夫)の場合と、パートやアルバイトなどの少ない収入でもある場合とでは、分担の度合いなどが変わってきます。
扶助義務と婚姻費用分担義務との関係性
先ほど夫婦の義務として民法752条に同居、扶助義務があることを少しご紹介しました。ちなみにこの民法752条の条文についても少し見ていきましょう。
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
引用:民法第752条
かなりシンプルな条文ですが、夫婦は同居すること、そして扶助”しなければならない”とかなり強い義務が課せられていることが分かります。
実は、配偶者が嫌いになったから。といって勝手に別居をすることはこの義務に違反しますが、同居の規定については例外がいろいろあります。
例えば、仮に同居をしたとしても実益がない場合は、同居しなくても義務違反とならない、というようなものです。
・実質的に夫婦関係が破たん状態にある場合
・一方が強く同居を拒否していて、翻意する可能性がない場合
・その他正当な事由がある場合(DVやモラハラなど)
このような場合は、同居義務を果たしていなくても義務違反とならないという判例が、札幌家庭裁判所で平成10年11月18日に行われた審判にあります。
ですが、扶助義務については、同居・別居を問わず課せられている義務と考えられてます。
夫婦はお互いに自分と同じ水準の生活を保障する必要があり、子どもがいるときにはその子どもも自分と同じ水準の生活を保障する必要があります。
民法752条と民法760条に書かれていることを合わせると、
婚姻中には夫婦で収入に差がある場合には、収入が高い方が、収入の低い方にたいして生活費を支払い、自分と同じ水準の生活が送れるようにする義務があるということになります。
別居中の妻ならだれでも婚姻費用を貰える・・・わけではない
日本では男性の収入と女性の収入には格差があり、夫婦の間では夫が妻よりも高い収入を得ているケースが多いため、妻が夫から生活費を貰うというイメージがとても強くありますが、最近では妻の方が収入が多いケースもみられます。
もし、このようなケースで別居をした場合には、妻が夫に婚姻費用を支払うことになる場合もあります。
また、別居をした妻がどのような場合でも婚姻費用を貰えるわけでもありません。
つまり、婚姻費用を貰えないケースもあるということになります。
この辺りの詳しいことについては、後でより詳細にご紹介していきます。
婚姻費用の請求によって別居中の生活費の心配は減らせる
専業主婦の方や、パートやアルバイトなど比較的収入が少ない方は、別居後の生活に金銭的な面での不安を抱えている方は多くいます。
ですが、離婚届を出していなければ、夫・妻から婚姻費用といって別居生活費を貰える権利があります。
逆に収入がある夫・妻は、別居中でも収入が低い相手に対して生活費を渡す義務があるということになります。
生活をしていくためにはどうしてもお金は必要ですので、しっかりと婚姻費用を貰い生活をしていきましょう。
同居中に貯めたお金があっても、別居が長引けば底をついてしまう可能性はあります。
自分から出ていったのに婚姻費用を請求するのは我儘かな?と思わずに、まずは話し合いをしてみてください。
もちろん、自分が出ていったのではなく、相手が出ていった場合でも、相手の収入の方が高ければ、婚姻費用は請求できます。あきらめる必要はありません。
夫婦には同居の義務はあっても、DVやモラハラ、不貞などの理由によって一緒に暮らせない場合もあります。
ですが、法律上婚姻関係にある間は、お互いに扶助義務と婚姻費用分担義務があるということをしっかりと伝え、生活に困らないようにしていきましょう。
2.婚姻費用請求の手続きや仕組みを大解剖!
妻なら必ず貰えるってものではないけど、収入が夫より少なかったら支払ってもらえるのね!
最近では奥さんのほうが収入が多い家庭もあるから、そういった場合には逆になるね。
私の場合は悔しいけど旦那のほうが収入があるから、別居したら私が請求していいのね。
・・・どうやって??
別居中でも婚姻費用として、収入が高い配偶者は、収入が低い配偶者にたいして生活費を支払う義務があることは、ご説明しました。
では、どうしたらこの婚姻費用を払ってもらえるようになるのでしょうか。
ここからは婚姻費用を貰うための手続きについてご説明をしていきます。
◆婚姻費用を貰うための5つのステップ
婚姻費用を貰うためのステップとして次の5つのものが挙げられます。
step1 夫婦の話し合いで婚姻費用の取り決めを行う
step2 裁判所に「婚姻費用の分担請求」調停を申し立てる
step3 裁判所に「婚姻費用調停前の仮処分の申請」を申し立てる
step4 裁判所に「婚姻費用審判前の保全処分」を申し立てる
step5 裁判所で「婚姻費用の分担請求」審判が開始される
一つ一つ具体的にご説明していきます。
step1 夫婦の話し合いで婚姻費用の取り決めを行う
婚姻費用の取り決めは、基本的には夫婦間の話し合いで決定することが望ましいとされています。
別居する前や、別居後でも良いので、別居中でも収入が高い人は、収入が低い人に対して生活費を支払う義務があり、別々の生活を送っていても、同等の生活が送れるように扶助する必要があることの説明をしていきます。
この段階で合意があれば、これ以上のステップに進む必要がありません。
話し合った内容はしっかりと公正証書に残すことで、この後さまざまなトラブルを防げます。
ですが、話し合いがうまくいかず、収入が高い人が生活費の支払いを拒否したり、非常に低額の生活費しか支払わないという場合には、次のステップに進むことになります。
step2 裁判所に「婚姻費用分担請求」調停を申し立てる
婚姻費用の分担請求は、裁判所に対して収入が高い配偶者に婚姻費用を支払ってもらえるように第三者(裁判官や調停委員)の意見を取り入れながら話し合いを行うための「調停」を開きたいということを求めるものです。
婚姻費用だけではなく、離婚についても合意ができず、離婚調停を行いたいという場合には、婚姻費用の分担請求調停と離婚調停を同時の申し立てられます。
どちらも、第三者の意見を取り入れながら、夫婦が裁判所で話し合いを行うものになります。
最初の調停が開かれるまでには、申し立てから通常1ヵ月~2ヵ月程度かかることが一般的です。
調停が整えば調停案が作成され、内容を確認して問題がなければ調停調書が作成されます。
調停調書には強制力があるため、もし調停で合意した婚姻費用の支払いがない場合には、強制執行をしてもらえます。
step3 裁判所に「婚姻費用調停前の仮処分の申請」を申し立てる
婚姻費用を支払ってもらえるよう調停の申立をしても、実際に調停が開かれるまでには1カ月~2ヵ月程度かかるため、その間婚姻費用を貰えないと生活が成り立たないというケースもあります。
このような場合には、婚姻費用調停前の仮処分の申請を行うことになります。
裁判官や調停委員から、とりあえず婚姻費用を支払い相手が生活できるようにお願いするのがこの仮処分という手続きです。
ただ、婚姻費用調停前の仮処分には強制力がないため、あくまでも相手がお願いを聞いてくれなければ意味がありません。
ですが、このお願いをきいて支払いに応じないと、相手は10万円以下の過料を支払う必要がでてくる可能性を秘めています。
過料を支払うくらいなら、調停が整う前までは生活費を支払おうという人がでてくる可能性を利用した方法といえます。
step4 裁判所に「婚姻費用審判前の保全処分」を申し立てる
過料を払ってでも、婚姻費用は支払いたくないと思っている。どうしても婚姻費用を支払ってくれないという場合には、「婚姻費用審判前の保全処分」が申立てられます。
審判前という名前がついていても、調停がまだ整っていない状態でも利用できる制度です。
調停前の仮処分と異なり、審判前の保全処分は強制力があり、万が一婚姻費用の支払いをしない場合には、財産や給料などを差押えて強制的に支払ってもらえます。
step5 裁判所で「婚姻費用の分担請求」審判が開始される
婚姻費用の分担請求の調停が不調に終わると、自然と審判へと進み、審判で結論を出すことになります。
調停で提出されたさまざまな資料を基にして、裁判官が判断を下して婚姻費用を決定することになります。この決定には強制力がありますので、もし支払いが滞れば強制執行を行ってもらえます。
まず簡単に流れをご説明しましたが、それぞれの手続きがどのように行われていくのかということを詳しくみていきましょう。
話し合いで合意した場合にしておきたい手続き
夫婦が話し合いを行って、両者が納得の上別居後の生活費の取り決めを行った場合には、公正証書に残すことがおすすめとなっています。
公正証書に残さなくても、合意の内容が守られれば問題はありませんが、万が一合意の内容が守られないときには、公正証書に残すことで強制執行が可能となってきます。
話し合いでは婚姻費用の金額を自由に決められます。
婚姻費用として考えられるものは
- 日常生活のために使う費用
- 病気やケガの時に必要な医療費
- 子どもがいる場合には養育費と教育費
- 一般的に考えられる交際費と娯楽費
このような費用です。
家計簿などを利用して、だいたい毎月いくらくらい生活をしていくために必要かを話し合います。
公正証書に残すためには、公証役場に夫婦で出向き、公正証書を公証人に作成してもらいます。
この時に、万が一公正証書に残した内容を反故にした場合に、強制執行を行えるように「執行認諾約款」をつけることが重要です。
公正証書を作るときには本人であることを証明する書類が必要です。
・運転免許証
・パスポート
・顔写真付きのマイナンバーカード
・印鑑証明
この4つのうちのどれかになりますが、a~cの場合には認印も、dの場合には実印も必要になります。
もし当事者がどうしても公証役場に行けない場合には、委任状を持参した代理人が出向く必要があります。委任状には本人の実印の押印が必要で、印鑑証明書も添付することになります。もちろん、代理人の本人証明書類も必要です。
公正証書を作るためには、手数料が5,000円(目的価格が100万円以下の場合)200円~1,000円の収入印紙、正本・謄本代(1ページ当たり250円)、特別送達代(送達手数料1400円と送料)、送達証明(250円)、執行文付与(1,700円)かかります。
おおむね1万円以内の費用が掛かると考えておくといいですね。
公正証書に残すことで、万が一支払いが滞ってしまったときに、裁判を起こさずに強制執行を行ってもらえます(執行認諾約款がある場合のみ)
お互いの口約束や書面だけの場合には、滞った場合には調停を申し立てる必要がでてきます。
◆「婚姻費用の分担請求」調停を申し立てる
話し合いがうまくいかない時に生活費を貰いたい人が裁判所に申し立てるのが調停です。
話し合いでうまくいかなかった場合、婚姻費用を請求できるのは、調停の申し立てを行った段階からになるため、少しでも多く婚姻費用を貰いたいならば、早めに婚姻費用の分担請求調停を申し立てる必要があります。
では、どこの裁判所に申し立てを行うことになるのでしょうか。
裁判所は日本国内に沢山ありますが、調停を申し立てる場合には、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てることになります。
- 妻が夫に対して婚姻費用の分担請求調停を申し立てるのであれば、夫の住所地
- 夫が妻に対して婚姻費用の分担請求調停を申し立てるのであれば、妻の住所地
というものが基本です。
別居先が遠い場合には、調停の度に申し立てを行った家庭裁判所に出頭する必要がありますので注意が必要になってきます。毎回交通費がかかり、さらに場合によっては宿泊費も必要になります。
調停を申し立てるためには必要になる費用や書類があります。
・収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なるが800円前後)
・申立書及びその写し1通
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・申立人の収入関係の資料
必要に応じて書類が増える可能性もあります。
では、自分で申立書を作成する場合、どのような内容で作成していくことになるのでしょうか。申立書自体は裁判所のサイトからダウンロードが可能です。記載例もダウンロードできます。
申立書に記載する内容は次のようになっています。
項目 | 内容 |
事件名 | ・記載されている「調停」の前のチェック欄にチェック ・事件名は「婚姻費用分担請求」のチェック欄にチェック |
申立先家庭裁判所と申立日 | 申立てを行う家庭裁判所名と申立日を記載 |
申立人の記名押印 | 申立てをする人の名前を記載と押印 |
添付書類 | 準備してある添付書類の前のチェック欄にチェック |
申立人 | 申立てをする人の
・住所 |
相手方 | 相手方の
・住所 |
未成年の子 | 未成年の子
・住所(申立人か相手方と同居している場合には、チェック欄にチェック) |
申立ての趣旨 | ・記載されている項目の該当箇所にチェックまたは〇をする ・請求する婚姻費用の月額を記入 |
申立ての理由 | ・同居を始めた人別居をした日をそれぞれ記載 ・婚姻費用の取決めの有無や内容を記載 ・婚姻費用の支払い状況を記載 |
記載はチェック欄にチェックをしたり、該当箇所に〇印をつけるなど決して難しいものではありません。記載例を見ながら記載していきましょう。
(出典URL:http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7504konpi.pdf)
婚姻費用分担請求調停の流れ
ここからは申立てを行った後の調停の流れについてみていきます。
1)婚姻費用分担請求調停の申し立て
2)第一回目の婚姻費用分担請求調停
3)第二回目の婚姻費用分担請求調停
*結論を得るまで第3回目以降の婚姻費用分担請求調停が繰り返される
4)調停成立→終了
5)調停不成立→婚姻費用分担審判に以降
それぞれについて詳しくご説明していきます。
1)申立てから第一回目の婚姻費分担請求調停までの間
家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停の申し立てを行うと、裁判所は書類を精査し、第一回の調停を開くための手続きを行います。
自分と相手方に対して、第一回目の婚姻費分担請求調停を開催する日付が記載された呼び出し状が送付されてきます。
申立てから呼び出し状が送付されるまでには約2週間かかります。さらに、第一回の調停は、申立てから約1か月後に開催されることが多くなります。
2)第一回目の婚姻費用分担請求調停
収入の状態が分かる書類を持参する必要があります。
・源泉徴収票
・直近3か月分程度の給与明細
などを準備して、呼出し状に記載された家庭裁判所に出頭します。
裁判所に到着をしたら、待合室で待機することになりますが、この時に夫婦が合わないような配慮もされています。
待合室で待っていると、係の方が呼びに来ますので、調停室に入ります。
調停室には調停委員(男女1人ずつ)がいます。場合によっては裁判官や書記官なども同席することがあります。
今後の調停の進め方の説明があったのち、婚姻費用請求調停を申し立てた経緯についての質問があります。
約30分ほどの質疑応答が行われたのち、待合室に戻ります。
待合室で待つ時間は約30分ほどになりますが、これは調停を申し立てた人と同じように、相手方にも同様の質疑が行われるためです。
申立人の言い分を調停委員が相手方に伝え、相手方の意見を聞くための時間が約30分間です。
夫婦はこの時もお互いにすれ違うことや同席することなく、調停委員を介して話し合いをする状態になります。
相手方の質疑応答が終わると、申立人がもう一度調停室に呼ばれます。
相手方の主張を調停委員から聞かされ、婚姻費用算定表を見ながら適正な婚姻費用を提示されることになります。算定表に沿った合意案が提示されることが多くなります。
だいたい30分ほどかかり、待合室に戻ります。同じように相手方も婚姻費用算定表を見ながら合意案を示されます。
この段階で婚姻費用の金額が合意できれば、調停が終了となりますが、合意が得られない場合には、2回目以降の調停が行われることになります。
だいたい2時間程度時間がかかることになります。調停は平日の昼間に行われるため、仕事をしている場合には、仕事を休むことになるケースが多くなります。
3)二回目以降の婚姻費用分担請求調停
基本的には1回目の婚姻費用分担請求調停と同じような流れになります。
調停が長引くとその分交通費や仕事を休まなければならない日が増えることになりますので、金銭的負担が増える危険性があります。
4)調停が成立した場合
無事に調停において婚姻費用の金額の合意となった場合には、調停案というものが作成されることになります。
その内容を確認したあと、約2週間で調停調書が届きます。
5)調停が不成立の場合
調停が不成立になると、自動的に審判というものに移行することになります。
◆裁判所に「婚姻費用調停前の仮処分の申請」を申し立てる
婚姻費用分担請求を行う間の生活費が困窮する危険性がある場合に
・調停委員会が職権を発動して仮処分を決定する
・調停を申し立てた人が調停委員会に対して職権を発動するように上申する
という方法で相手方から生活費を貰える制度です。
詳しくは別の項目でご説明いたします。
◆裁判所に「婚姻費用審判前の保全処分」を申し立てる
婚姻費用調停前の仮処分で、調停員会が相手方に婚姻費用の支払いを命じたとしても、支払いを拒否したり、今後婚姻費用の支払いが始まる前に財産を処分するなどして支払いを逃れようとする可能性がある場合には、「婚姻費用審判前の保全処分」を申立てられます。
強制力をもつもので、別居中の生活費を確実に貰える方法になります。
詳しくは別の項目でご説明いたします。
裁判所で「婚姻費用の分担請求」審判が開始される
婚姻費用分担請求調停が不調に終わると、自動的に審判に移行されることになります。調停を行った後の審判への移行は、申立書などを提出する必要もありません。
調停は調停委員を間に挟んではいますが、お互いの話し合いによって解決をしていくのに対して、審判は当事者の意見を聴き、さらに家庭裁判所が事実の調査を行って、裁判所が判断を下すことになります。
裁判所が結論を出してくれるため、話し合いをする必要がなくなり、収入に関係する書類などの提出をしたり、家庭裁判所の調査官の方が聞き取り調査を行うなどして判断に必要な情報を集めることになります。
裁判所が婚姻費用の額などをすべて判断して決定することになります。もしこの決定に不服がある場合には、決定から2週間以内に不服の申し立てを行い、高等裁判所で再度審理を行ってもらえます。
不服申し立てを行わなかったり、高等裁判所で不服申し立てが認められなかった場合には、家庭裁判所で行われた決定が審判として確定します。
審判の結果が確定すると、その決定を守る必要が出てきます。審判のには強制力がありますので、もし審判によって決定した婚姻費用を支払ってもらえないときには、履行勧告手続きがとれます。
◆婚姻費用はいつからいつまで貰えるのか
婚姻費用を請求する方法を詳しくご説明しましたが、肝心の婚姻費用は一体いつからいつまで貰えるのかという点が気になってきます。
もともと婚姻費用は婚姻中にかかる生活費ですので、正確には婚姻届けを出せば、収入が低い方が収入が高い方から貰える費用です。
ただ、別居中の生活費として考えた場合には、別居した時点から貰える。と考えられそうですよね。
step1の話し合いによって合意した場合には、婚姻費用をいつから払うのかという点についても話し合いで決められます。
話し合いの末、では今日の時点から毎月払いますという合意をすることもできますし、別居した段階から婚姻費用を払います。という合意をすることもできます。
ただ、step2以降、つまり婚姻費用分担請求調停や審判となった場合には、事情が変わってきます。
多くのケースでは、婚姻費用分担請求調停や審判を申立てた時には、その申立てを行った時点以降の婚姻費用しか支払ってもらえません。
例えば、1月に別居をして、6月に婚姻費用というものを知り、話し合いを始めたものの合意に至らず、9月になって婚姻費用分担請求調停の申し立てを行った場合でみていきましょう。
通常の婚姻費用分担請求調停では、調停を申し立た時点から婚姻費用の支払い請求が可能になります。
つまり、婚姻費用分担請求の調停が整うと、9月分以降の婚姻費用の支払いをしてもらえることになります。1月~9月までの9か月間の婚姻費用は貰えないのです。
過去の婚姻費用の支払いが可能になると、収入が高い方の通常の収入以上の支払いが必要になる可能性が出てきます。
そうなると、収入が高い方の生活が成り立たなくなってしまう危険性が出てきます。裁判所はこの危険性も回避する必要があると考えていると言われています。
婚姻費用分担請求調停が申立てられていないということは、その時点までは生活が成り立っていると考えることもできてしまいます。
ただ、6月の時点で、婚姻費用を下さいという手紙を、内容証明郵便を使い相手方に送っていたという場合には、6月の時点で婚姻費用を請求する意思があったことが立証できるため、6月以降の婚姻費用の支払いが受けられる可能性が出てきます。
東京家庭裁判所で平成27年8月13日に決定された審判で、平成25年に別居し、平成26年1月に内容証明郵便で婚姻費用を請求し、さらに平成26年2月に婚姻費用分担の調停申立てを行ったという例では、平成26年1月からの婚姻費用の支払い請求を認めています。
この審判の例にならえば、6月以降の婚姻費用の支払い請求が認められる可能性が出てくることになります。
ただ、内容証明などで婚姻費用を請求した場合でも、その後調停申し立てまでの期間が長いと、やはり調停申し立て時点以前の婚姻費用を貰えない可能性もあります。
やはり長期何の婚姻費用を支払うことが相手方に大きな負担となるためという理由や、そこまで婚姻費用を貰わなくてもやってこれたという実績ができてしまうためです。
婚姻費用がいつからもらえるかという点については、本来なら別居を開始した時から貰えるものだが、別居時点でもらえなかった婚姻費用は、相手方に請求をした時点からしか貰えないということになります。
さらに、婚姻費用は婚姻中の生活費ですので、別居から離婚ということになれば、離婚をした時点で婚姻費用を貰えなくなります。
別居から再び同居してやり直そうという時は、とくに婚姻費用を支払ってもらう必要もなくなります。ただ、同居後も生活費を貰えない場合には、後ほどご説明する決まった婚姻費用を貰えない場合を参考にして請求していきましょう。
◆婚姻費用請求を調停や審判で決定するメリットとデメリット
ここで少し婚姻費用分担請求調停や審判をすることで得られるメリットやデメリットについてみていきましょう。
婚姻費用分担請求調停をすることで得られるメリット
- 確実に婚姻費用を貰える
- 法的知識がなくても順を追えば自分で申立てられる
- 相手方と顔を合わせずに話し合いを行えるため自分の意見を伝えられる
- 相手方の収入によっては調停や審判が整う前に婚姻費用を貰える
- 別居後離婚したい場合にスムーズに進められる可能性が高くなる
婚姻費用分担請求調停をすることで得られるデメリット
- 協議によるものよりも婚姻費用の金額が低くなりやすい
- 調停が長引けば交通費が嵩み仕事を休む日も増える
- 別居後離婚をしたくなくても、離婚に至りやすい
デメリットである交通費や宿泊費などを浮かせる裏技
別居中の配偶者の住まいと離れた場所で暮らしているという場合、基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で調停や審判を行うことになりますが、自分の住所地の家庭裁判所で調停や審判を行えれば、交通費や宿泊費を浮かせられます。
婚姻費用分担請求調停を申し立てるのと同時に、審判前の保全処分を、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるという方法です。
通常自分の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行っても、家庭裁判所が相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に移送という手続きをとり、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所での調停となりますが、保全処分が必要なほど緊急を要している状態では、交通費や宿泊費の負担が難しいことや、保全処分の手続きが遅れてしまう危険性が出てきます。
そのため、自分の住所地を管轄する家庭裁判所が保全処分の手続きをとり、相手方に保全処分を命じることがあります。
保全処分を命じた家庭裁判所で調停を行った方が合理的ということで、自分の住所地を管轄する家庭裁判所で婚姻費用分担請求調停や審判が行われる可能性も出てきます。
これは必ず認められるというわけではありませんが、可能性としてはあります。
3.いくら貰える?婚姻費用の相場となるべく高く貰う方法
もしそこで合意が得られなかったり、そもそもの話し合いにならないって時には、調停を申立てるんだ。
大体の相場ってどのくらいなの?できれば高めに欲しいな~・・・
少しでも高く貰いたい気持ちもわかるから、そのことについても見ていこう!
民法760条によって、婚姻中はたとえ別居中でも貰える婚姻費用ですが、いったいどのくらい貰えるのか。という点は非常に気になりますよね。
別居後の生活を考えるうえで、婚姻費用の金額によって、どのくらいの賃貸住宅を借りられるか、生活水準などを考えなければならなくなります。
婚姻費用には、相場と言えるものがあり、家庭裁判所で行われる調停や審判では、たびたびこの相場をもとに婚姻費用が決まる傾向があります。
まずは家庭裁判所で婚姻費用を決める元となっている「婚姻費用算定表」についてご説明していきます。
婚姻費用算定表とは一体何か
婚姻費用算定表は、夫婦の年収や養育中で未成熟の子どもの数、年齢などに応じて、その世帯ごとに必要になる婚姻費用が大よそいくらになるのかということを表している表になります。
婚姻費用算定表は2003年4月に東京と大阪の裁判官6名によって作られました。それ以前はかなり複雑な計算をして算出していたようですが、この表ができたことで比較的短時間で婚姻費用を算出できるようになりました。
簡単に算出ができるようになったことで、調停や審判も少ない回数で結果が出せるようになってきています。
家庭裁判所で主に使われている婚姻費用算定表は、東京家庭裁判所の公式サイト上で見られます。
前半は離婚後養育が必要な子供がいる場合に利用されている養育費算定表になりますが、表10(13ページ)以降が婚姻費用算定表として使われています。
1)婚姻費用算定表の見方
実際に婚姻費用算定表から婚姻費用がいくらになるのかを見ていく方法をご紹介していきます。
婚姻費用算定表は表10~表19までの10つの表がありますが、表番号の横には
「婚姻費用・夫婦のみの表」
「婚姻費用・子1人表(子0~14歳)」
といった表記がされています。
まず自分の世帯に当てはまる表を探すことから始まります。
表番号 | 夫婦 | 1人目の子ども | 2人目の子ども | 3人目の子ども |
10 | 〇 | × | × | × |
11 | 〇 | 0~14歳 | × | × |
12 | 〇 | 15~19歳 | × | × |
13 | 〇 | 0~14歳 | 0~14歳 | × |
14 | 〇 | 15~19歳 | 0~14歳 | × |
15 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | × |
16 | 〇 | 0~14歳 | 0~14歳 | 0~14歳 |
17 | 〇 | 15~19歳 | 0~14歳 | 0~14歳 |
18 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | 0~14歳 |
19 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | 15~19歳 |
夫婦のみであれば表10を、子どもが二人いて、二人とも0歳~14歳の場合には表13を、子どもが三人いて、三人とも15歳~19歳の場合には表19をみることになります。
次に表には縦軸と横軸がありますが、縦軸は義務者の年収、横軸には権利者の年収となっています。年収が高い方が義務者となり、年収が低い方が権利者となります。
縦軸にも横軸にも「給与」と「自営」という二つの欄がありますが、サラリーマンなど給与所得を得ているという人は「給与」の金額を、フリーランスや自営業など個人で事業を営んでいる人は「自営」の金額をチェックします。
義務者の年収と、権利者の年収の欄が交わる部分が婚姻費用算定表から算出される婚姻費用となります。具体的なケースでみてみましょう。
Aさんのケース
家族構成:夫(サラリーマン・年収500万円)妻(パート・年収100万円)子ども(5歳と7歳)
*見るべき表:表13
義務者:「給与」500万円
権利者:「給与」100万円
婚姻算定表による婚姻費用:8~10万円
Bさんのケース
家族構成:夫(自営業・年収800万円)妻(専業主婦・年収0円)子ども(10歳と15歳と18歳)
*見るべき表:表18
義務者:「自営」799万円(より800万円に近い方)
権利者:0円
婚姻算定表による婚姻費用:24~26万円
Cさんのケース
家族構成:夫(サラリーマン・年収800万円)妻(自営・年収200円)子ども(10歳と15歳と18歳)
*見るべき表:表18
義務者:「給与」800万円
権利者:「自営」199万円(より200万円に近い方)
婚姻算定表による婚姻費用:16~18万円
Dさんのケース
家族構成:夫(個人事業主・年収1,200万円)妻(個人事業主・年収500万円)子どもなし
*見るべき表:表10
義務者:「自営」1,197万円(より1,200万円に近い方)
権利者:「自営」493万円(より500万円に近い方)
婚姻算定表による婚姻費用:12~14万円
似たような家族構成でも、夫の年収や妻の年収、給与所得者か自営業者かなどによっても婚姻費用は異なってきます。
もう一つの婚姻費用算定表「新算定表」で少しでも高く婚姻費用を貰おう
この婚姻費用算定表から算出された婚姻費用を見て、金額が思ったよりも低いと感じる方もいるのではないでしょうか。
2003年に作られたこの表では、今の経済状況からみると、婚姻費用が低くなってしまっているのではないかと考えられるようになりました。
また、子どもがいる家庭の場合、小学校入学前と入学後に必要となる教育費の負担額なども違いがあるということで、より細かな分類や、経済状況にあったものが必要であると日本弁護士連合会が考え、「新算定表」というものが作られました。
東京と大阪の裁判官6人によって作られた婚姻費用算定表(「現算定表」と呼びます)の場合、子どもは0~14歳または15~19歳と二区分に区切られていましたが、日本弁護士連合会が考えた新算定表では0~5歳、6~14歳、15~19歳と三区分に区切られます。
そのため表の数も増え、新算定表では算定表20~38と18の表に分かれています。
新算定表で実際に自分の世帯が当てはまる表がどれになるのかを確認していきましょう。
表番号 | 夫婦 | 1人目の子ども | 2人目の子ども | 3人目の子ども |
20 | 〇 | × | × | × |
21 | 〇 | 0~5歳 | × | × |
22 | 〇 | 6~14歳 | × | × |
23 | 〇 | 15~19歳 | × | × |
24 | 〇 | 0~5歳 | 0~5歳 | × |
25 | 〇 | 6~14歳 | 0~5歳 | × |
26 | 〇 | 6~14歳 | 6~14歳 | × |
27 | 〇 | 15~19歳 | 0~5歳 | × |
28 | 〇 | 15~19歳 | 6~14歳 | × |
29 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | × |
30 | 〇 | 0~5歳 | 0~5歳 | 0~5歳 |
31 | 〇 | 6~14歳 | 0~5歳 | 0~5歳 |
32 | 〇 | 6~14歳 | 6~14歳 | 0~5歳 |
33 | 〇 | 6~14歳 | 6~14歳 | 6~14歳 |
34 | 〇 | 15~19歳 | 0~5歳 | 0~5歳 |
35 | 〇 | 15~19歳 | 6~14歳 | 0~5歳 |
36 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | 0~5歳 |
37 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | 6~14歳 |
38 | 〇 | 15~19歳 | 15~19歳 | 15~19歳 |
自分の世帯に当てはまる表が分かれば、見方は裁判官が作成した「現算定表」と同じです。
先ほど現算定表でご紹介したAさん、Bさん、Cさん、Dさんのそれぞれの世帯を新算定表で見た場合、どのくらい婚姻費用に変化があるのかを見てみましょう。
Aさんのケース
家族構成:夫(サラリーマン・年収500万円)妻(パート・年収100万円)子ども(5歳と7歳)
*見るべき表:表25
義務者:「給与」500万円
権利者:「給与」100万円
現算定表による婚姻費用:8~10万円
新算定表による婚姻費用:16万円
Bさんのケース
家族構成:夫(自営業・年収800万円)妻(専業主婦・年収0円)子ども(10歳と15歳と18歳)
*見るべき表:表37
義務者:「自営」811万円(より800万円に近い方)
権利者:0円
現算定表による婚姻費用:24~26万円
新算定表による婚姻費用:34万円
Cさんのケース
家族構成:夫(サラリーマン・年収800万円)妻(自営・年収200円)子ども(10歳と15歳と18歳)
*見るべき表:表37
義務者:「給与」800万円
権利者:「自営」191万円(より200万円に近い方)
現算定表による婚姻費用:16~18万円
新算定表による婚姻費用:25万円
Dさんのケース
家族構成:夫(個人事業主・年収1,200万円)妻(個人事業主・年収500万円)子どもなし
*見るべき表:表20
義務者:「自営」1,209万円(より1,200万円に近い方)
権利者:「自営」495万円(より500万円に近い方)
現算定表による婚姻費用:12~14万円
新算定表による婚姻費用:19万円
このように、現算定表に比べると新算定表で算出した方がどのケースでも高い婚姻費用が計算されることになります。
◆新算定表で婚姻費用を算出するためには?
現算定表と新算定表の二つの算定表があり、新算定表の方が婚姻費用は高くなることが分かりましたが、調停や審判で新算定表を使ってもらえなければ、いくら高くなる可能性があるといっても、意味がなくなってしまいます。
新算定表を使い少しでも高く婚姻費用を貰うためにはどうしたらいいのでしょうか。
- 新算定表での調整を求める
- 協議離婚にする
一つ目の方法は、調停や審判の席で新算定表を基準にしたいということを求める方法です。
婚姻費用を支払う相手方から見れば、現算定表の方が費用負担が少なくなりますが、相手方が調停や審判の場で新算定表を基準にしてもよいとすれば、調停委員や裁判官もその意図を汲んでくれます。
調停や審判では現算定表が基準となることが多いため、先手を打ち、新算定表を使ってもらいたいということを前もって伝えることが必要です。
二つ目の方法は、調停や審判ではなく、夫婦の協議によって婚姻費用を決めるという方法です。
協議の場合には、もともと算定表によって婚姻費用を決める必要はありませんが、お互いに目安となる金額があった方が話し合いも行いやすいため、新算定表を使い協議を進める。ということがおすすめです。
ただ、後日現算定表の存在を相手が知りもめてしまうこともありますので、できれば、現算定表、新算定表の両方を使い、話し合いを進めるようにしていくことがおすすめです。
もっと高く婚姻費用を貰うためには?
新算定表を用いた婚姻費用の金額でも納得できないという場合は、やはり夫婦でしっかりと話し合う必要が出てきます。夫婦が合意さえすれば、婚姻費用は高くすることもできますし、逆に低くすることもできます。
また、裁判所では基本として現算定表を利用した婚姻費用の算出を行いますが、調停が不調に終わり審判になると、個別の事情を考えた決定を下すこともあります。
審判においては算定表よりも多い婚姻費用が算出さてて認定されることもあります。
- 本来であれば相手方に稼働能力があるのに今現在働いていないから、算定表では年収が低くなっているものの、働けばもっと年収を上げられるはず。
- もともとは年収があるが、別居するために子どもの世話をする必要が出るために仕事量が減り、年収が下がることが見込まれるため婚姻費用を高くして欲しい。
このような個別の事情をしっかりと主張することで、審判では婚姻費用を高く算出してもらえる可能性もあります。
◆夫婦の協議によって決めた内容は公正証書に残そう
婚姻費用について調停や審判ではなく、夫婦の話し合い、つまり協議によって定めた場合には、必ずその内容を婚姻費用分担契約公正証書(執行文付与)に残すようにしましょう。
話し合いで合意した内容は、口約束や便箋などに記載してお互いに署名捺印をしただけでは、万が一合意した内容を守ってもらえない時には法的な措置がとれません。
- 10万円の婚姻費用を払ってもらえたはずなのに、勝手に減額されてしまった。
- 約束したはずの婚姻費用を払ってもらえなかった。
このような場合に、婚姻費用分担契約公正証書を作成しておけば、万が一約束が破られて場合に強制執行を行ってもらうこともできます。
公正証書は公証役場というところに出向いて作成することになります。事前にどのような内容で公正証書が作られるのかを確認し、必要事項を整理しておくとスムーズに公正証書の作成ができます。
松戸公証役場で作成している婚姻費用分担契約公正証書の例が非常に役立ちます。
4.どんなケースでも婚姻費用は貰えるの?貰えない場合もあるって本当?
現算定表と新算定表じゃ、ずいぶん金額が変わっちゃうのね。
だから、新算定表を目安にしたいって言える時にはいったほうがいいんだ。
ちなみに、婚姻費用って、どんな場合でも貰えるの?
私の生活費があぁあ・・・
とりあえず、婚姻費用が貰える場合と貰えない場合を見ていこう。
婚姻費用は民法でも定められているように、婚姻中であれば別居をしていても、収入が高い方が収入が低い方に支払う必要があります。
ですが、どのような場合でも貰えるのかというと、そうではありません。
婚姻費用を貰える場合と、貰えない場合に分かれてきます。
婚姻費用を貰えるケースと貰えないケースの具体例
別居をすることになる原因はさまざまです。ここでは6つの具体的な例を挙げながら線引きをしてみましょう。
1)相手が働かないために年収がゼロ
第一子を妊娠したために仕事をやめ、出産・育児に備えようとしていたところ、夫が日ごろの勤務態度の悪さからクビになってしまいました。
妻は親の援助を受け第一子を出産、産後は実家で過ごしていましたが、その間夫からの生活費の支払いなどはなく、夫は再就職先を探すこともありません。
この先の生活に不安を覚え、妻は離婚を前提に別居をすることにしました。このような場合、婚姻費用は払ってもらえるのでしょうか?
答え
一般的には相手に収入がない状態では婚姻費用の支払いを受けることはできないと考えられますが、夫は働こうを思えば働ける状態、逆に妻は働きたくても養育が必要な子供の育児をしている状態ですので、働けない状態と言えます。
現在働いていないために収入がない場合、潜在的な稼働能力の有無を問うことになります。
妻は働きたくても小さな子供を育てている状態ですので、現実的には働くことは難しく、潜在的な稼働能力がないとみなされますので、年収も0円になります。
夫は働こうと思えば働けます。そのため、潜在的な稼働能力があるとみなされます。
この場合、厚生労働省が毎年実施している調査である賃金構造基本統計調査というものをまとめた「賃金センサス」というもので、性別や年齢、就労歴、健康状態などから年収を推計するということが行われます。
推計された年収をもとに婚姻費用の支払いを受けることも可能になります。
ただ、夫が収入がないために生活が困難であるということで、生活保護を受給し始めた場合には事情が変わってきます。
夫が生活保護を受給している状態の場合には、残念ながら婚姻費用を貰えません。
生活保護は受給者が最低限度の生活ができない場合のセーフティーネットという意味合いがあるため、そこから婚姻費用を貰うことはできません。
2)浮気をしていた夫が家を出た。アパートの家賃は夫が払っている
浮気を繰り返してきた夫が、とうとう家を出て行ってしまいました。
アパートに暮らしているため、家賃は夫の口座から毎月ちゃんと引き落とされているために家賃滞納は避けられていますが、生活費を貰うことはできないのでしょうか?アパート代は月に8万円ほどです。
夫は年収500万円ほどで、家には私と3歳と6歳の子供が残りました。春からは下の子を幼稚園に入れて働こうと思いますが、それまでに私の預貯金が底をつきそうです。
答え
まず夫の年収が500万円で、妻は現況では収入がない状態ですよね。そして子どもが2人いるということで、裁判官が作成した現婚姻費用算定表に基づくと、婚姻費用は10~12万円となってきます。
夫はアパートの家賃8万円は支払ってくれているということですので、差額となる2~4万円の生活費を支払ってもらうことも可能になってきます。
もし妻が今後下の子どもを預けて働きに出た場合、年収100万円を超えてくると婚姻費用は8~10万円という計算になってくるため、アパート代=婚姻費用となる可能性も出てきます。
3)DVが耐えられず子どもを連れて家を出た
普段は穏やかな人ですが、一度怒り出すと暴力が止まらず、子どもにも手を上げるので、このままでは子どもの命の危険性もあると感じ、子どもを連れて着の身着のまま家を出ました。
ひとまず自治体のシェルターに逃げ込みましたが、今後の生活が不安です。夫から婚姻費用を貰い、まずは生活を立て直して自立し、仕事を探したいと思っています。
調停で夫は勝手に出ていったのに婚姻費用を請求するのはおかしいと言いますが、どうなのでしょうか?
答え
この場合は婚姻費用を貰うことは可能です。勝手に出ていったと言っても、原因は夫にありますので、夫は婚姻費用を支払う必要があります。
調停が不調に終わったとしても、審判で婚姻費用支払い決定の判断になる可能性が高くなります。話し合いをすることは事実上不可能かと思いますので、まずは調停を申し立てることがおすすめです。
調停では直接夫と顔を合わせることはありませんので安心して主張をしていきましょう。
4)共働きでも夫から婚姻費用は貰えるか
夫の年収は300万円ほど、妻の年収も250万円ほどの共働きです。
夫の浮気が原因で離婚を前提にして私が小学生の二人の子どもを連れて家を出ることにしました。
子どものために今後は仕事量も増やし年収も増やしたいと思いますが、当面の生活費が不足しそうです。夫からは婚姻費用は貰えるのでしょうか?
答え
裁判官が作成した現婚姻費用算定表をチェックすると、このケースでの婚姻費用は2~3万円となります。
まずこの金額の婚姻費用を貰うことはできると考えられます。妻の年収が425万円をこえるくらいまではこの婚姻費用を貰えるということになります。
ただ、2~3万円の婚姻費用では足りないと感じるかもしれません。子どもを養育することなどを加味して上乗せをして貰える可能性もありますので、しっかりと話し合いを行うことが大切です。
調停を申立てた場合も、そもそも別居することになったのは夫の浮気が原因であることや、子供の教育費の問題などをしっかりと説明し、少しでも婚姻費用を上乗せしてもらえるようにすることも必要です。
5)家庭内別居状態の妻は婚姻費用を貰えるか
同じ家には暮らしていますが、夫は昼間の仕事、妻は夜勤で働いているため顔を合わせることもほぼありません。生活のすれ違いから家庭内別居状態になっています。
もともと夫の収入でやりくりをすることにしていましたが、夫は収入がいくらあるのかも知らせず、家賃も払わなくなりました。
もちろん、生活費として費用を負担することもありません。
家賃は妻がすべて払い、生活に必要なものはほぼ妻が支払いを行っている状況です。2歳の子どももいますが、妻は仕事に行くときには職場の保育室に子どもを預けている状態です。
夫に出て行ってもらうか、せめて婚姻費用を貰いたいと思っていますがどうなのでしょうか。
答え
家庭内別居の状態でも基本として婚姻費用を貰えます。ただ、夫の収入が分からない点や、妻の収入がある点などを考えると、微妙なラインになる可能性も出てきます。
仮に、夫の収入が妻の収入よりも高ければ、問題なく婚姻費用はもらえますが、逆に妻の年収が夫の年収よりも低い場合には、婚姻費用を貰えない可能性は出てきます。
まずは夫の年収を把握することが必要です。源泉徴収票を貰えない場合には、納税証明書などを取得して年収を把握してみましょう。賃金センサスをもとに算定することも可能です。
このケースでもし夫が妻より年収が低い場合でも、夫から婚姻費用を請求されたとしても、妻に婚姻費用を支払う義務が課せられることはほとんどのケースでないと言えます。
これは、夫が家賃も生活に必要なものも払っていないという意味合いで、生活費を意図的に支払っていない状態であると考えられます。
この意図的に生活費を支払わない状態は、法律的に離婚が認められる悪意の遺棄に該当することになります。
このような場合は年収が低くても、年収が高い方に婚姻費用を請求できません。
6)別居の原因は自分の浮気でも婚姻費用は貰えるのか
夫よりも好きな人ができました。
子どももその人になついており、事実上破たん状態の夫婦関係を解消し、新たなスタートを切りたいと思います。
婚姻費用というものを知ったので、できれば今後の生活のためにも少しでもお金は欲しいと思います。離婚までの生活費を貰うことはできるのでしょうか?
答え
婚姻費用は婚姻中の生活費として支払われるもので、たとえ別居中でも婚姻期間中は貰えますが、別居の原因を自分が作った場合には、調停や審判でも婚姻費用が貰えないケースは多くなります。
そもそも自分の浮気が原因ということであれば、やはり婚姻費用を貰うことは難しいと言えます。
ただ、子どもを連れてという事であれば、子どもの養育費にあたる監護費用については貰える可能性があります。
子どもにとってはたとえ別居したとしても父親です。父親には子どもの養育に必要な費用を母親と分担して支払う必要があります。子どもの監護費用を請求をすることは可能ということになります。
◆貰えるケースと貰えないケースのラインはこの辺り
6つの具体的な例を挙げていきましたが、ここで一度簡単にまとめてみましょう。
1)婚姻費用を貰える場合
・相手の収入の方が自分の収入よりも高い場合
・別居の原因が相手方にある場合
・相手に収入が無くても、働こうと思えば働ける状態にある場合
・相手の行動・行為が法的な離婚の要件に当てはまる場合
2)婚姻費用を貰えない場合
・相手の収入が自分の収入よりも低い場合
・別居の原因が自分にある場合
・身体的精神的理由で相手が働けない場合
・自分の行動・行為が法的な離婚の要件に当てはまる場合
・相手が生活保護を受給している場合
別居の原因が自分にあるという場合はやはり婚姻費用はもらえないということになってきます。
また収入の差がある場合には、もし自分の方が収入が高い場合には、逆に婚姻費用を請求されることもあるという点も気を付けたいですね。
子どもがいる場合には、子どもを監護する方が監護費用を請求することも可能です。自分に非があるけど子どもの監護費用だけでも欲しいという場合には、よく相談をすることが必要になります。
5.婚姻費用がもらえない!一般的な対策と3つの法的対策
自分から請求できる場合には、しっかり主張していくことが大切だよ。
ちなみにだけど、いざ別居を始めた途端、婚姻費用を支払ってもらえない・・・なんてことになったら、どうすればいいわけ?
婚姻費用について合意をしたものの、別居を開始したら婚姻費用を支払ってもらえない。いつの間にか支払いが滞ってしまった。このような事が起こってしまったらどうしたらいいのでしょうか。
【対策1】まずは連絡をして支払いをお願いする
まずは相手に連絡をして支払ってもらうように伝えるということが穏やかです。
相手ももしかしたらただ単に忘れていただけというケースもありますので、いつまでに支払ってください。と期限を決めて支払いを求めるようにします。
支払いをお願いしてもなかなか支払ってくれない、支払いを拒否されてしまうときには、もう一段階強いお願いをしてみることがおすすめです。内容証明郵便を使うという方法です。
内容証明郵便は、これから法的な処置を取っていくためにも前段階として送っておくこともおすすめになってきます。
内容証明郵便を使い支払いをお願いすることは、実際には普通に支払をお願いするのと変わりはありませんが、本気度を伝えられる方法になってきます。
内容証明郵便は「いつ」「誰が」「誰に」「どういう内容の手紙」を送ったのかを郵便局が証明をしてくれる手紙になります。
普段内容証明を受け取ることがほとんどない人にとっては、相手の本気度が伝わってきますし、心理的なプレッシャーを感じることになるため、内容証明郵便を送ることで支払いをしてくれる。という人は意外に多くいます。
内容証明郵便を作成するためには、530字以内(縦書きなら1行20字、26行。横書きなら1行26字、20行)の用紙を使います。
内容証明郵便を送るために必要になる費用をまとめました。
通常郵便料金 | 82円(50gまで) |
内容証明料金1枚目 | 460円 |
2枚目以降1枚ごとに | 250円 |
書留料金 | 430円(損害要償額10万円まで) |
(出典URL:http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/)
内容証明郵便、郵便局の窓口に同じ3通の文書を受取人の住所、氏名を記載した封筒と共に持参し、郵便料金と共に内容証明料金と書留料金を合わせて支払いをします。
3通の内訳は
- 1通は封筒に入れて受取人へ
- 1通は差出人が謄本として
- 1通は郵便局が謄本として保管
となります。
郵便局に謄本として保管される文書は、差し出した日から5年以内に限って謄本の閲覧を請求できます。(閲覧料金430円が必要)また5年以内に限り、自分が持っている謄本を提出して再度証明を受けることもできます。
また、インターネットを利用したe内容証明も活用可能です。
もし内容証明の文書が2枚以上の場合には、e内容証明の方が費用負担が少なく、待ち時間などもありませんし、24時間受付をして貰らえるため利便性もあります。
Wordで文章を作成できる方にはおすすめです。
【対策2】法的対策で支払いを求めていく
内容証明郵便を送っても支払いをして貰えないときには、裁判所で支払いを求める手続きを利用することがおすすめになってきます。
裁判所で行える法的な対策には3つの方法があります。
1)履行勧告
2)間接強制
3)直接強制
この3つの法的対策にはどのような違いがあるのかをご説明していきます。
1)履行勧告:強制力はなく費用負担もない
履行勧告の特徴としては、費用負担がかからない点があります。履行勧告を申立てる方法も、家庭裁判所に出向かなくても、電話でお願いすることも可能になってきます。
家庭裁判所で調停調書を整えたり、審判によって婚姻費用の支払いが決定している場合には、履行勧告を裁判所に求められます。
裁判所は調停調書の内容や審判の決定を守るように勧告をしてくれる制度になっています。ただ、この勧告には強制力はなく、あくまでも約束を守るように促す。という制度になります。
裁判所が直接支払いをするようにと伝えてくれるため、内容証明郵便に比べると強いプレッシャーを与えられます。
2)間接強制:強制力はないが履行しなければ過料が処せられる
履行勧告よりも一つ強い方法となるのが間接強制です。
ただ、間接強制にも強制力はなく、あくまでも裁判所から支払いなさい。と命令を出してもらう方法になります。
履行勧告との違いは、婚姻費用の支払いが、正当な理由がないのに行われない場合には10万円以下の過料が処せられるという点です。
相手方にとっては、婚姻費用の支払いとは別に、10万円以下の過料が発生してしまうかもしれないという心理的なプレッシャーを感じる方法です。
過料を支払うくらいなら、婚姻費用を支払おうと考える義務者もいると言われていますが、強制力がないために大きな効果を持たないという弁護士もいます。
いたずらに時間がかかるだけと考える方もいるということを覚えておくことも必要です。
間接強制も履行勧告と同じように、家庭裁判所で調停調書を整えたり、審判によって婚姻費用の支払いが決定した場合に利用できる制度となります。
また申し立てには2000円の手数料が必要になります。
3)直接強制:給料の差押えなどで確実に婚姻費用を貰う方法
法的な対策でもっとも効果的で強制力がある方法が、直接強制です。預金や給料などを差押え、強制的に決められた婚姻費用を取り立てられます。
婚姻費用の場合には、給料の差し押さえをして貰い、未払いの分だけではなく、将来分についても一括して直接強制を行ってもらえます。
自営業者の場合には、会社の売上などを差押えることが一般的になってきます。
直接強制を行うために必要になるものは次のものです。
・債務名義
・債務名義の送達証明
・収入印紙 4,000円分
・切手、その他の添付文書
債務名義とは?
直接強制を行うためには、婚姻費用の支払いを約束した公的な証明(が必要になってきます。これを債務名義と呼びます。
・口約束
・便箋に記載した
・メールでやり取りをした記録
などは公的な証明とはなりません。
・確定判決
・仮執行宣言付き判決
・和解調書
・調停調書
・公正証書
これらが公的な証明となるため、婚姻費用の場合には、調停で整えた調停調書、審判で決定した審判確定証明書、公正証書が必要となってきます。
この債務名義には、執行文が付与されている必要もあります。
執行文というのは、約束を守らないときには財産の差押えをしますよ。というものです。
調停調書や審判確定証明書の正本については執行文が付与されています。(謄本には執行文は付与されていないため、正本を交付してもらう必要があります)公正証書の場合でも、執行文が付与されていないと差押えを行えません。
債務名義の送達証明とは?
直接強制では、債務名義を相手方に送達することがから始めてきます。こういう義務があるということを相手に改めて知らせて、義務を怠ったから差し押さえをしますということを伝えることが必要です。
この手続きを「送達」といい、送達をしたことを証明する「送達証明書」も直接強制をするためには必要になります。
調停調書・審判確定証明書:家庭裁判所
公正証書(執行文付き):公証役場
に対して相手方に送達を申請し、送達証明書を申請します。
そして送達証明書の申請を行うというのが流れです。
収入印紙 4,000円分
手続きに必要になる手数料になります。
切手、その他の添付文書
切手は家庭裁判所によっても異なりますが、おおむね2,500円分くらいが必要になってきます。
その他の添付文書については、何を差押えるかによっても異なってきますが、相手方が会社員の場合を想定してご紹介します。
・申立書の目録部分の写しと宛名付き封筒
・相手が勤務している会社の登記簿謄本(資格証明書)、住民票など
・請求債権目録(請求する債権の内容を細かく記載した書面)
・差押債権目録(給与を支払う会社や給与の金額などを記載した書面)
・当事者目録(申立人、相手方、相手方の勤める会社について記載した書面)
目録の書式については、東京地方裁判所のサイトで紹介されていますのでこちらを参考にすると分かりやすくなります。
必要書類を揃え、相手方が住んでいる場所を管轄している家庭裁判所に対して申し立てを行うことで、直接執行を行ってもらえます。
【対策3】債務名義になるものがない場合
離婚費用について口約束で取決めをしたり、メールたSNSなどでやり取りをして決めた、とりあえず文書にはしたものの、便箋などに記載し公的な証明は何もないという場合にはどうしたらよいのでしょうか。
公的な証明がない場合には、法的な対策は取れないことになります。
そうなると、再度婚姻費用を請求する調停を申し立てるということを行う必要が出てきます。
支払いさえちゃんと滞りなく行ってくれるのであれば、口約束やメール、公的な証明のない文書でも良いのですが、万が一支払いが滞ってしまった場合に備えて、調停を申し立てる、または執行文付きの公正証書を作成しておく。ということが必要です。
公的に証明できるものを作成することは、相手に支払う必要があることをしっかりと認識してもらえ、さらに支払いを受ける側も万が一の場合には直接執行の手続きが取れるというメリットが出てきます。
大きな手間をあとあと掛けずに済ませるためには、やはり協議によって決定をする場合いは、執行文付きの公正証書を作成することが必要になります。
6.これだけは押さえておきたい婚姻費用請求の5つの注意点
だからこそ、すぐ強制執行ができるように、公正証書にしておく必要があるんだよ。
公正証書にしておけば、再度調停したりする必要もないわけだから。
じゃあここからは、覚えておきたい注意点について説明していくね。
婚姻費用についてここまでご説明してきましたが、必ず押さえておきたい5つの注意点についてまとめます。
この5つ注意点をしっかりと守ることで、別居中の生活費である婚姻費用をしっかりと受け取り、安定した生活が送れます。
別居したい、配偶者ともう一緒に暮らしたくない。と感情的になる前に、必ずこの5つの注意点を頭に入れておきましょう。
- 婚姻費用の請求はできるだけ早くすること
- 支払い期間は別居解消または離婚まで
- 婚姻費用請求調停は離婚調停と一緒に行える
- 協議の場合には必ず執行文付きの公正証書を作成する
- 一刻を争うような場合の手段も覚えておく必要が
この5つの注意点についてご説明していきます。
あわせて離婚準備の一番最初にやるべきともいえる問題がありますので、しっかりチェックしておきましょう。
【注意点1】婚姻費用の請求はできるだけ早くすること
婚姻費用分担請求の調停を家庭裁判所に申し立てを行う場合、請求できるのは申し当てを行った時点からとなります。
別居した時点にまで遡って婚姻費用を貰うことはできませんので、調停を申し立てる場合には、できるだけ早く行うことが必要です。
夫婦間の協議によって合意する場合には、話し合いによって別居時点から婚姻費用を貰うことも可能ですが、すでに別居している状態ではなかなか話し合いが持てない可能性もあります。
別居後の生活が困窮しないためにも、できるだけ早く婚姻費用の請求を行うようにしましょう。
【注意点2】支払い期間は別居解消または離婚まで
婚姻費用は婚姻中の生活費です。
別居中も婚姻中であれば収入が高い方は収入が低い方に対して婚姻費用を支払う必要があるということで、支払いを求められるものです。
このような性格を持つ婚姻費用ですので、離婚した場合には、婚姻中ではなくなるため、婚姻費用の支払いを受ける権利も失いますし、相手方は婚姻費用を支払う義務もなくなります。
子どもがいる場合いは、別途養育費を支払ってもらうことは可能ですが、婚姻費用として生活費を貰うことは出来なくなります。
また、別居が解消した場合にはわざわざ婚姻費用を支払ってもらわなくても、同居して生活をすることになるため、支払いを受ける必要がなくなります。
ただ、万が一、別居を解消しても相手方が家庭に生活費を入れてくれないという時には、婚姻費用を請求することは可能です。
【注意点3】婚姻費用請求調停は離婚調停と一緒に行える
離婚を前提にして別居をした場合には、婚姻費用分担請求調停と、離婚調停を同時に申立てることができます。婚姻費用分担調停に比べると、離婚調停の方が長引きやすく、さらに不調に終わって裁判になることも考えられます。
この間の生活費をしっかりと確保するためにも、離婚を前提とする場合には、婚姻費用分担請求調停と離婚調停は同時に申立てることがおすすめです。
自分が離婚したいと思っている場合には、婚姻費用請求調停と離婚調停を同時に申立てることで離婚調停が長引けばそれだけ婚姻費用を支払い続けなければならないというプレッシャーを相手に与えられ、離婚調停が長引くことを避けられる。という意味合いもあります。
離婚を前提としていない場合にはこの限りではありませんが、離婚を前提としているときには、同時に申立てを行いましょう。
【注意点4】協議の場合には必ず執行文付きの公正証書を作成する
調停や審判ではなく、夫婦間の協議によって婚姻費用の取決めを行った場合には、必ず執行文付きの公正証書を作成することが必要です。
これは相手方に対してしっかりと婚姻費用の支払いをして貰うとう義務を明確にできる点と、万が一支払いが滞ってしまった場合に、直接強制という法的対策をとれるようにしておくという意味合いがあります。
口約束、メールでのやり取り、合意文書のみでの婚姻費用の取決めでは、法的対策をとり、相手の給与を差押えるといった強制的な措置はとれません。
手間はかかりますが、その手間をかけるだけの価値が必ずありますので、執行文付きの公正証書を作成することを忘れないようにしましょう。
【注意点5】一刻を争うような場合の手段も覚えておく
別居中の生活費がなくなってしまい、生命の危機を感じるほどの困窮状態になってしまうと、婚姻費用分担請求の調停が成立するまでの時間を待つことはできません。
このようなときには、二つの方法で婚姻費用を貰えます。
1)裁判所に「婚姻費用調停前の仮処分の申請」を申し立てる
婚姻費用分担請求を行う時には、申立てを行ってからだ一回目の調停が開催されるまで約1か月かかります。調停案が示され調停調書が整うまでにはさらに1か月くらいの時間がかかります。
一回の調停で合意がなされればよいですが、調停が長引いたり、審判に進んでしまったりすると、さらに時間がかかってしまうことになります。
この間、別居中という理由で生活費がもらえなければ、生活が立ち行かなくなってしまう危険性がある場合には、調停が整う前に婚姻費用を仮に支払ってもらうための方法が、婚姻費用調停前の仮処分(家事事件手続法266条)になります。
この婚姻費用調停前の仮処分は、二つの方法で決定されます。
- 調停委員会が職権を発動して仮処分を決定する
- 調停を申し立てた人が調停委員会に対して職権を発動するように上申する
実際に婚姻医費用分担請求の調停の際に、調停委員会が申立人の生活が困窮しているとみなした場合には、職権で婚姻費用調停前の仮処分を決定することがあります。
この場合は特に申立てをしなくても相手方に婚姻費用を支払うよう命じます。
ですが、調停委員会が相手方に婚姻費用調停前の仮処分を命じないときには、申立人が仮処分を申立てることが可能になっています。
申立てを行う時は、婚姻費用分担請求の申立書とほぼ同じように行います。ただし、事件名の部分は「婚姻費用調停前の仮処分」とします。
この婚姻費用調停前の仮処分には注意すべき点があります。
まずは婚姻費用調停前の仮処分には強制力がないという点です。
もし相手方がどうしても支払いたくないということで支払い拒否をした場合には、強制執行などは行えず、結果的に婚姻費用を支払ってもらうことはできません。
ただ、相手方が正当な理由がなく支払を拒否した場合には、10万円以下の過料を支払うことになります。
過料というのは行政処分の一つで、行政罰となります。納められた過料は国や自治体に入るため申立人が貰うことはできません。
過料を支払うメリットはあまりないため、過料を支払うくらいなら、婚姻費用を支払った方がいい。という心理的に婚姻費用を支払おうという動機付けとなります。
婚姻費分担請求の調停の申立てを行えば、婚姻費用調停前の仮処分の申し立てもおこなえます。
2) 裁判所に「婚姻費用審判前の保全処分」を申し立てる
婚姻費用調停前の仮処分で、調停員会が相手方に婚姻費用の支払いを命じたとしても、支払いを拒否したり、今後婚姻費用の支払いが始まる前に財産を処分するなどして支払いを逃れようとする可能性がある場合には、「婚姻費用審判前の保全処分」(家事事件手続法105条)を申し立てられます。
審判前という名前がついていますが、調停が始まり、審理が継続している場合には審判前の保全処分を申立てることが可能です。
婚姻費用審判前の保全処分は、婚姻費用調停前の仮処分を申立てずに、調停が始まった段階ですぐに申立てることも可能です。婚姻費用分担請求の申立てと同時に婚姻費用審判前の保全処分を申立てることが可能ということです。
この審判前の保全処分は、調停前の仮処分と異なり、強制力を持つものになります。調停委員会や裁判官から審判前の仮処分で婚姻費用の支払いを命じられると、相手方は婚姻費用を支払う必要がでてきます。
もし支払いを拒否した場合には、強制執行が行われ、相手方の財産や給料などが差押えられ、財産であれば競売にかけられますし、給料の場合には相手方の給料の2分の1相当を差押えられます。
ただし、相手方の給料が33万円を超える場合には、33万円を超える部分の全額を差押えることが可能です。
ただ、これだけ強い強制力をもつ命令となるため、申立てを行っても簡単に命令が発動されるわけではありません。緊急性がない場合には、申立てを行ったとしても婚姻費用審判前の保全処分の命令が出ることはありません。
申立ての手続きは、婚姻費用分担請求調停の申立てとほぼ同じです。事件名の部分は「婚姻費用審判前の保全処分」とします。
自分や一緒に連れてきた子どもの命を守るための方法ですので、このような方法もあるということを忘れないようにしておきましょう。
まとめ
最後に説明した、5つの注意点さえしっかり覚えていれば大丈夫だよ!
婚姻期間中であれば、たとえ別居の状態でも婚姻費用といって生活費を貰えます。なので、必要以上に別居すると生活が困窮するのでは?と不安に思う必要はありません。
ただ、はやり婚姻費用を貰うためには、自分からしっかりと婚姻費用を請求することは必要になってきます。
婚姻費用は話し合いでも決められますし、相手と直接話をするのは怖い、難しいと感じる場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、調停委員を通じて間接的な話し合いをすることも可能です。
調停が不調になった場合でも、審判といって家庭裁判所が婚姻費用を婚姻費用算定表などを用いて考え、個別の事情なども汲んだうえで決定してくれます。
調停で整った内容や、審判の決定には強制力もありますので、確実に婚姻費用の支払いを受けられます。
協議によって婚姻費用の取決めを行った場合も、執行文付きの公正証書を作成することで、支払いが滞ってしまった場合には給与の差押えなどをして貰うこともできますので、生活費に困るということを避けられます。
相手にも生活があるということを考えると、婚姻費用の請求を始めた時点よりも前に遡って請求をすることは難しくなりますが、婚姻費用分担請求調停を起こせば、その時点から婚姻費用の支払いを受けることも可能になってきます。
なるべく早い段階で婚姻費用の請求を行うことで、少しでも多くのお金を手に入れられます。
手間がかかる、費用が掛かる、難しそうで分からない。などいろいろな思いもあると思いますが、一つずつ丁寧に見ていけば、調停は一般の人でも申し立てを行えます。ぜひ自分自身の生活に困らないような対策を立てていきましょう。
別居期間中にいろいろな不安が押し寄せてきますよね。
お子さんを連れての別居となれば、さらに今後のことなども多くの不安があるかと思います。ですが、その不安の中で生活費という要素をクリアできれば、少しでも前向きなことを考えられるのではないでしょうか。
別居後、離婚をしたいという方にとっても、別居を解消しまた家族で暮らしたいと願っている方にとっても、別居中の生活費は必要です。
大きくもめることなく、できるだけスマートに婚姻費用を貰うための参考になればと思います。そして、自分自身が幸せな方向に前向きに進んでいっていただきたいと思います。