【離婚養育費の不安や疑問】こどもの為に知っておきたい5つのこと

リリ子
ねぇねぇゴン太さん。
離婚する前に養育費について知っておきたいと思って調べてみたんだけど、サッパリ分からなかった!

娘が一人いるんだけど、具体的にどのくらい貰えるの?

ゴン太
養育費がいくらになるのか、目安なら知ることができるよ。

ただ、その目安を知るには、リリ子さんの収入と旦那さんの収入、娘さんの年齢も関係してくるんだよ。

リリ子
そうなんだ!
じゃあさ、もしもの話だけど、ちゃんと養育費のこと決めても、旦那が支払ってくれない場合にはどうなるの?
ゴン太
そういうことになる可能性も、ゼロではないよね。
そうなった時に困らないようにするために、やっておくべきことがあるんだ
リリ子
そのやっておくべきことってなに??

・・・あれ?そういえば、旦那の収入っていくらだっけ・・・?


離婚をすると夫婦どちらかに子どもを養育する権利である「養育権」が定められますが、多くのケースで子どもの母親である女性にこの養育権が認められます。

ですが、男性に比べて女性の方が収入面の不安も多く、離婚後に子育てのための費用がかけられないかもしれない。という不安を持つ方も多くいますよね。

そのためにどうしても離婚に踏み切れないという女性も少なくはありません。

離婚は夫婦の問題ですが、子どもがいる方にとっては夫婦だけの問題ということにはできません。
20歳未満の子供がいる場合には、子どもを育てていくためにかかる費用についても、しっかりと話し合いをする必要が出てきます。

つまり、離婚養育費の問題です。

夫婦の都合により子どもは両親が揃わない環境に置かれるだけではなく、離婚により家計が悪化し、生活が困難になってしまったり、受けたい教育を受けられなくなってしまったりすることが起きないよう、しっかりと離婚養育費について話し合う必要があります。

「養育費なんていらない!とにかく別れたい!」と感情的に離婚をしてしまった場合、後から離婚養育費を請求することが困難になってしまうケースもあります。
また、実際に離婚養育費の取り決めをしても、いつの間にか養育費の支払いが途切れてしまった。というケースも決して少なくはありません。

厚生労働省が行った調査「平成23年度全国母子世帯調査結果報告」において、調査対象となった1,332件の母子世帯についてどのくらいの人が離婚養育費を貰い続けられているのか。という調査をしたところ、継続して養育費が支払われているのは263件にとどまっています。

割合でいうと19.7%と非常に低い率ということが分かってきます。

離婚養育費についての正しい知識を持ち、子どもが受けたい教育を受け、健康に生活をしていくためにも、しっかりとした知識を持つことが大切になってきます。

この記事では・・・
・離婚養育費とはもともとどのようなのものなのか
・どうすれば受け取ることができるのか
・一体いくらくらいが相場なのか
・もし離婚養育費の支払いが滞ってしまったらどうしたらいいのか
・養育費の増額、減額は可能なのか

 

などについて、詳しくご紹介していきます。
少し難しいと感じられるお金の話しですが、できるだけ分かりやすく解説をしていきます。

離婚養育費を受け取ることは、子どもがもつ権利です。その権利をしっかりと守ってあげられるように、離婚養育費について正しい知識を持つことはとても大切なことです。

また、養育費と同じくらい重要な離婚準備もありますので、以下の記事もチェックしてみてくださいね。
離婚準備であなたが今スグやっておくべき「たった1つのコト」とは?

 

目次

1.離婚養育費は誰のためのお金?貰える期間ともらうためにやるべき4つの事

リリ子
養育費って、なんとなくのイメージでしか分かってないんだけど、具体的にどういうお金なの?
ゴン太
確かに、なんとなくこどもを育てるためのお金とは思っていても、詳しくは知らないかもしれないね。
実は僕も、離婚準備をする前までは知らなかったんだ。
リリ子
やっぱり!?
どんなものが含まれていて、いつまで貰えるのかとかも気になる!
ゴン太
じゃあ、そのあたりについて下の説明を見てみよう。

 

離婚養育費は子どもを育てるために必要な費用ということは大まかに分かっていても、実際に子どもを育てるための費用には一体どのようなものが含まれるのか。逆に含まれないのか。ということは、なかなか分かり難いですよね。

またどうしたら離婚養育費を滞りなく貰えるのか、いつまで離婚養育費は貰えるのかという点も分かり難い部分です。

まずは離婚養育費に含まれるものは何か、そしていつまで離婚養育費を貰らえるのかを確認していきましょう。また、離婚養育費の決め方や、万が一支払いが滞ってしまった場合はどうしたらいいのか。という点も確認していきましょう。

 

【疑問1】離婚教育費って何を根拠にしてもらえるの?どのような費用を貰えるの?


子どもを育てるために必要な費用として離婚養育費がもらえます。
そもそもこの離婚養育費とは何を根拠にして貰えるものなのか、またどのような費用を貰えるのでしょうか。

 

1)離婚養育費の法的根拠

離婚養育費は、民法766条を根拠としています。まずこの民法766条にはどのようなことが書かれているのかを見てみましょう。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

第766条
1.父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3.家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4.前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。


これが民法766条ですが、「子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」この部分が離婚養育費の部分になります。

離婚をしても、子どもにとっては父親と母親ということには変わりがなく、父母は子の監護に要する費用、つまり子どもの養育にかかる費用を分担する必要がある。ということが明記されています。

 

2)離婚養育費に含まれる「子どもの養育費」の具体的な例

では具体的にどのような費用が子どもの養育にかかる費用になるのでしょうか?

まず衣食住に関わる費用が挙げられます。医療費や食事、そして子どもが暮らすために必要な住居にかかる費用です。体調を崩したり病気になってしまったり、怪我をしてしまった場合にかかる医療費も、やはり子どもの養育にかかる費用です。

万が一に備えて保険に加入する場合も、子どもの養育費として考えられます。

おもちゃや文房具、大きくなってくれば携帯ゲームなどを購入することもでてきますが、このような子どもの私的な所有物というものも、子どもの成長に欠かせないものといえますよね。

親が離婚していなければ買い与えてもらえていただろう物を購入する費用も、離婚養育費に含まれます。

学費なども養育費!

学費ももちろん、離婚養育費に含まれるものになります。保育園~大学まで保育施設や教育機関で学ぶ学費だけではなく、塾に通う費用や習い事にかける費用なども離婚養育費に含まれてきます。

3)離婚養育費には含まれない費用も

離婚養育費は日常的に支出する子どもの生活にかかわる費用ですが、突発的に必要となる費用というものも出てきます。これらの費用については、離婚養育費とは別に請求することもできます。

具体的にどのような費用が離婚養育費には含まれていない、とされるのでしょうか。

 

1.学校に入学するときに支払う入学金

学費は離婚養育費に含まれると考えられていますが、入学金については離婚養育費ではなく、その都度父母で協議をして支払い負担を決めていくことになります。

学費に比べて入学金は多額の費用が必要になるためというのがその理由になってきます。離婚養育費とは別に、その時に話し合いをすることになります。


2.大きな病気や怪我に入院した場合の治療費など

普段の医療費とは異なり、突発的に発生するこのような大きな金額の治療費、入院費などは、やはりその都度話し合いによって費用負担を決めていくことになります。

 

【疑問2】二十歳になったら離婚養育費の支払いはストップする?いつまで貰える?


子どもの生活のために必要になる離婚養育費ですが、いつまで貰えるのかという点も気になってきます。次にこのいつまで貰えるのかという点も確認していきましょう。

現在民法では二十歳になると成人として扱われるため、多くの人は、子供が成人するまでは離婚養育費を貰えると解釈している人が多いようです。
ですが、必ずしも二十歳までとは限りません。

離婚養育費は子どもが未成年の間貰えるのではなく、子どもが扶養を擁する間です。

子どもの扶養期間は、未成熟の子の間とされています。
この未成熟というのは、自分の力だけでは生活を維持できない状態のことを表しています。つまり、成人かどうかよりは、自活できる状態かどうかという点が一つの判断材料になってきます。

未成年でも、高校を卒業後働き始めれば、その子どもは自活できる状態となるために、離婚養育費の支払いは不要ということになります。

20歳を超えていても、大学や大学院に進学し、自分で収入を得ていない状態なら、自活できる状態ではありませんので、離婚養育費の支払いを続けてもらえる可能性がでてきます。

ただ、離婚をする際に子供が高卒で働くのか、大学や大学院まで進学をするのかということは分かりません。そのため、一般的には子どもが二十歳になる月までとされることが多く、家庭裁判所でも二十歳までと考えることが多くなっています。


この離婚養育費をいつまで貰えるのかという明確な法律的根拠はありません。

つまり、話し合いによっていつまでも貰えるのかということを決められ、両親が子どもがどの程度まで学校に通うことを想定しているのかを考えることが必要になってきます。

ちなみに、離婚養育費を貰えるのは、離婚した時からになります。
もし、離婚養育費の支払いが離婚後に決定した場合には、離婚時まで遡って請求をすることも可能です。ただ、裁判例などを見てみると、養育費の支払いを請求する意思が明確になった時点から。となる事が多くなります。

養育費の請求は遡れない

養育費の支払いはいいから離婚したい!と言ってしまったような場合、後でやはり養育費が必要ということで相手に請求をした時は、家庭裁判所に調停の申し立てをした時までしか遡れないことがあります。

 

【疑問3】離婚は自分が原因だった場合には離婚養育費はもらえないのか

夫婦が離婚をする理由は様々です。

少し古い統計にはなりますが、平成10年の司法統計の離婚申し立ての動機別割合というものを見てみると、その理由としては・・・

1位 性格の不一致
2位 DV
3位 異性関係
4位 金銭的な問題
5位 精神的虐待

というのがそのトップ5となっています。

1位の性格の不一致については、双方の問題ということができますが、2位以下は夫婦のどちらかに原因がある。という可能性もありますよね。

もし自分がその原因を作ったとしたら、いくら親権をとっても離婚養育費を貰えないのではないか。と考えてしまう方もいるようです。
中には離婚養育費を貰えるのは、相手が不倫などの異性関係の問題を起こした場合のみ。と考えてしまっている方もいるようですね。


ですが、離婚養育費というのがどのような性格のお金なのかということをもう一度振り返ってみましょう。
離婚養育費な子どもの養育に必要な費用です。
離婚の原因がどのようなものでも、まったく関係なく子供は離婚養育費を貰う権利を持っています。

例え、子どもを養育することになる人が原因を作り離婚をした場合でも、離婚養育費を貰うことは可能です。
離婚養育費は、子供のためのお金ということを忘れないようにしましょう。

 

◆離婚養育費を確実にもらうための4つの方法

リリ子
なるほどね~!養育費の概要が分かったら、なんだかスッキリしちゃった!
もうこれで養育費のことは大丈夫かな?
ゴン太
リリ子さん。肝心なことを忘れてるよ。
その養育費、どうやって支払ってもらうんだ?
リリ子
あ・・・。

 

離婚養育費を貰うためには、約束が必要になります。
離婚養育費をいくら支払うのか、いつまで支払うのか、どのようにして支払うのかなどを決めていくことになります。

決める方法は大きく分けると4つの方法があります。

  1. 夫婦間の話し合い
  2. 家庭裁判所で調停や審判によって決める
  3. 家庭裁判所の裁判で決める
  4. 離婚後に養育費を請求する

それぞれ具体的にはどのような事なのか、メリットやデメリットはないかということをまとめてみました。

 

1.夫婦間の話し合い

離婚の話し合いの中では子どもの親権者や監護者を決定していくことになりますが、この時に同時に離婚養育費について話し合いをして決定していくというものです。

メリットとしてはやはりお互いの納得が得られやすいというものがあります。逆にデメリットとしては、離婚養育費の相場が分かり難く、さらに将来的に離婚養育費の支払いが滞ってしまう危険性がある。というものがあります。

お金の話しをすることは、日本人はとても苦手としている人も多く、ついつい口約束で済ませてしまいがちです。ですが、この口約束が将来離婚養育費の支払いが滞る原因となってしまう危険性があります。

口約束では司法にも守ってもらえません。

公正証書にすること

そのため、話し合いで決めるときには、必ず離婚養育費についての細かな点までをしっかりと話し合い、最終的に公証役場に行って公正証書というものにすることがおすすめです。

お金はかかってしまいますが、将来もし離婚養育費の支払いが滞ってしまった場合に、強制執行を行ってもらうことが可能となってきます。

 

話し合いで離婚養育費を決めるときには

  • 金額
  • 支払い時期
  • 支払期間(二十歳までか、社会人として自立するまでかなど)
  • 支払方法

といったものがあります。

より細かく進学時の入学金や病気やけがなどの場合にはその都度話し合いを持つといった事も記載すると安心です。

 

2.家庭裁判所で調停や審判によって決める

夫婦間の話し合いではなかなか決着しない場合などは、家庭裁判所に間に入ってもらい、調停や審判によって離婚養育費について決められます。
もし離婚自体も調停や審判によって行う場合には、同時に離婚養育費についても調停や審判で決定ができます。

家庭裁判所が介在しますので、相場にあった離婚養育費を請求しやすい点や、万が一支払いが滞った時に強制執行を行ってもらえるといったメリットがあります。

調停や審判は基本的には話し合いを行いながら進めていくことになりますので、比較的双方で納得できる決着になる事が多い点もメリットとなります。

離婚調停について知識を深め、損をしないようにしておきましょう。
これを知らないと損をする?!離婚調停10のポイント

 

3.家庭裁判所の裁判で決める

調停や審判とは異なり、裁判で決める方法は離婚当事者の話し合いではなく、裁判官が決定する物なので強制力が非常に高いものになります。

メリットとしては強制力が強いため、離婚養育費を確実に受け取れる可能性が高まります。支払いが滞れば強制執行を行ってもらうことも可能です。
デメリットとしては、一度確定すると増額や減額などがしにくい。という一面があります。

4.離婚後に養育費を請求する

勢いで離婚をしてしまったり、離婚養育費について何の話し合いもないまま離婚をしてしまったりした後で、離婚養育費の支払いを求めるということも可能です。

ただ、話し合いでまとめることが難しいケースも多くあります。
このような場合には別途離婚養育費を求める養育費請求調停の手続きをとることが多くなります。調停でまとまらないと、審判や裁判といった段階を踏むことになります。

離婚後に離婚養育費を請求する場合、離婚した時点からではなく調停を申し立てた段階からの支払いになる事が多いため、離婚後に離婚養育費を請求したい場合には、早めに家庭裁判所に養育費請求調停の手続きをとることがおすすめです。

 

ここまでのポイント!

離婚養育費は離婚後の子どもの養育にかかる費用で、どのよう事が離婚原因だとしても、子どもを養育する場合には受け取れます。

離婚養育費を貰うのは子どもの権利であり、親の義務でもあります。

離婚養育費を貰える期間は、多くのケースでは二十歳までとなりますが、大学や大学院などに進学した場合などは、まだ養育が必要となるため延長されるケースや、逆に高卒で働き始めた時には期間が短縮されるケースもあります。

話し合いや家庭裁判所に介在してもらい離婚養育費を決定できます。家庭裁判所の介在があれば離婚養育費の支払いが滞った場合には最終的に強制執行などをして貰うことが可能です。

話し合いの場合も、公正証書にすることで、強制執行が可能となるため、口約束ではなく書面にし、公正証書にするようにしましょう。

離婚後も必要があれば離婚養育費の請求は可能ですが、支払いを求められるのは請求の時点からとなるケースが多いため、離婚時に養育費を決める事、養育費が必要になったら直ちに請求することを忘れないようにしましょう。

 

2.上限はあるの?離婚養育費の『相場』があるって本当?

リリ子
へ~!公正証書にすることが大切なのね。
ゴン太
そうだね。万が一の時に強制執行の効力があるというのは、とても心強いもんだよ。
リリ子
うんうん。
ちなみに、養育費の相場ってどのくらいなの??

私の家庭の場合にはどうなるのかも気になる・・・

ゴン太
相場はやっぱり気になるよね。
リリ子さんの家庭ではどのくらいの養育費になるのか、目安程度だけど分かるよ。

下の説明を見てみよう。

 

子どもの養育は想像以上にお金がかかります。

AIU保険という保険会社がまとめている「AIUの現代子育て経済2005では、一人の子どもが生まれてから大学を卒業するまでにかかる教育費を除く養育費は約1,640万円ということです。

文部科学省が行った「子どもの学習費調査(平成24年度)では、幼稚園から高校までをすべて公立に通ったとした場合で約504万円、日本政策金融公庫が行った「教育費負担の実態調査結果(平成26年度)」の調査では、国立大学に4年間通った場合で約511万円かかるということなので、全て公立の場合でも教育費として約1,015万円かかるということになります。

養育費と教育費をトータルすると2,655万円ということですが、これが私立の学校に通った場合や医療系の大学に通った場合などでは、4,000万円~6,000万円以上を一人の子どもにかける可能性も出てきます。

離婚したからといっても、やはり子どもには十分な教育を受けさせてあげたいと思えば、お金がどんどん必要になってきます。
ならば、離婚した元パートナーからできるだけ多くの離婚養育費を支払ってもらわないといけない。と考えるかもしれません。


もちろん、別れた元パートナーが大金持ちで、いくらでも離婚養育費を支払ってくれるという人であれば問題はないかもしれませんが、なかなかそのような人はいませんよね。

元パートナー側からすれば、子どものためとはいえ、支払える離婚養育費には限度というものもあります。請求された分をすべて支払うということは難しくなります。

貰う方はできるだけ多く、払う方はできるだけ少なく。というのが本音の部分で、なかなか離婚養育費の費用が決まらない理由になってきます。

このような事を避けるために、離婚養育費の金額には大よその相場というものが存在しています。「養育費算定表」と呼ばれるものが存在しています。

 

養育費の算定表っていったいどのようなもの?

養育費算定表は、平成15年(2003年)に作成されたもので、家庭裁判所が離婚裁判などの際に養育費を算定するための資料として使われているものです。

現養育費算定表とも呼ばれています。製作をしたのは東京・大阪の裁判官です。

ただ、平成15年から比べると消費税率が引き上げされていたり、生活費そのものが高くなってきています。当時には妥当と考えられたこの資料も、現在で考えると非常に低い離婚養育費が算出されてしまうというデメリットがあります。

そこで、今度は日本弁護士連合会という弁護士の団体が、新養育費算定表というものを作成しました。
この新養育費算定表を使うと、従来の裁判官が作成した現養育費算定表に比べると、約1.5倍多く離婚養育費を貰えるようになります。

ただ、この二つの養育費算定表も確定値ではなく、あくまでも『相場』であり、目安になる金額となります。必ずこの金額に従わなければならないというわけではありません。

お互いの年収と子どもの数、年齢でチェック!養育費算定表で金額を知る方法

まず養育費算定表というのはどのようになっているのかという点を見ていきましょう。養育費算定表は子どもの人数や子どもの年齢によって見るべき表が変わってきます。

現養育費算定表の場合9つの表に分かれています。

・子どもが一人で年齢が0~14歳→表1
・子どもが一人で年齢が15歳~19歳→表2
・子どもが二人で年齢が二人とも0~14歳→表3
・子どもが二人で年齢が一人は0~14歳・一人は15歳~19歳→表4
・子どもが二人で年齢が二人とも15~19歳→表5
・子どもが三人で年齢が三人とも0~14歳→表6
・子どもが三人で年齢が二人は0~14歳・一人は15歳~19歳→表7
・子どもが三人で年齢が一人は0~14歳・二人は15歳~19歳→表8
・子どもが三人で年齢が三人とも15~19歳→表9


新養育費算定表の場合には、さらに細分化され19の表に分かれています。

これは低年齢の子どもの年齢が0~5歳、6歳~14歳と分かれているためです。

・子どもが一人で年齢が0~5歳→表1
・子どもが一人で年齢が6歳~14歳→表2
・子どもが一人で年齢が15歳~19歳→表3
・子どもが二人で二人とも年齢が0~5歳→表4
・子どもが二人で年齢が一人は0~5歳・一人は6歳~14歳→表5
・子どもが二人で二人とも年齢が6歳~14歳→表6
・子どもが二人で年齢が一人は0~5歳・一人は15歳~19歳→表7
・子どもが二人で年齢が一人は6歳~14歳・一人は15歳~19歳→表8
・子どもが二人で二人とも年齢が15歳~19歳→表9
・子どもが三人で年齢が三人とも0~5歳→表10
・子どもが三人で年齢が二人は0~5歳・一人は6歳~14歳→表11
・子どもが三人で年齢が一人は0~5歳・二人は6歳~14歳→表12
・子どもが三人で年齢が三人とも6歳~14歳→表13
・子どもが三人で年齢が二人は0~5歳・一人は15歳~19歳→表14
・子どもが三人で年齢がそれぞれ0~5歳・6歳~14歳・15歳~19歳→表15
・子どもが三人で年齢が二人は6歳~14歳・一人は15歳~19歳→表16
・子どもが三人で年齢が一人は0~5歳・二人は15~19歳→表17
・子どもが三人で年齢が一人は6歳~14歳・二人は15歳~19歳→表18
・子どもが三人で年齢が三人とも15~19歳→表19

見るべき表が決まったら、今度はその表の縦軸と横軸を見ていきます。

表の横軸は、離婚養育費を貰う方の年収が書かれています。表の縦軸には離婚養育費を支払う方の年収が書かれています。
内側には自営業の方の場合で、外側には給与所得者の方の場合の金額が記載されています。

それぞれ自分たちの年収に合ったところをチェックして、横軸と縦軸が交わった部分が養育費算定表で導き出される離婚養育費の目安になります。

具体的にみてみよう!養育費算定表に基づく5つのパターンの養育費

具体的にどのような金額が養育費算定表で導き出されるのかを見ていきましょう。今回は子どもの養育を妻が行うというケースでチェックしていきます。

1.年収500万円の夫と年収100万円の妻、2人の子供がそれぞれ3歳と6歳の場合
2.年収250万円の夫と年収200万円の妻、1人の子供が10歳の場合
3.年収650万円の自営業の夫と、専業主婦の妻、3人の子供がそれぞれ5歳、10歳、15歳の場合
4.無職の夫と年収500万円の妻で、1人の子供が17歳の場合
5.年収300万円の夫と年収200万円の自営業の妻、2人の子供が14歳と18歳の場合

こちらの5つのケースを見ていきましょう。

 

年収500万円の夫と年収100万円の妻、2人の子供がそれぞれ3歳と6歳の場合

このケースでは2人の子どもがそれぞれ3歳と6歳なので、現養育費算定表では見るべき表は「表3」で、新養育費算定表では「表5」になります。

横軸は妻の年収で、給与所得者の100万円の部分をチェックします。縦軸は夫の年収で、給与所得者の500万円の部分をチェックします。

→現養育費算定表では6~8万円
→新養育費算定表では13万円

 

年収250万円の夫と年収200万円の妻、1人の子供が10歳の場合

このケースでは10歳の子供が一人ですので、現養育費算定表では見るべき表は「表1」で、新養育費算定表では「表2」になります。

横軸は妻の年収で、給与所得者の200万円の部分をチェックし、縦軸は夫の年収で、給与所得者の250万円の部分をチェックします。

→現養育費算定表では1~2万円
→新養育費算定表では3万円

 

年収650万円の自営業の夫と、専業主婦の妻、3人の子供がそれぞれ5歳、10歳、15歳の場合

このケースでは10歳の子供が三人でそれぞれ5歳、10歳、15歳ですので、現養育費算定表では見るべき表は「表7」で、新養育費算定表では「表15」になります。

横軸は妻の年収になりますが専業主婦なので年収は0円の部分をチェックし、縦軸は夫の年収で、自営業者の641万円(新養育費算定表では640万円)の部分をチェックします。

→現養育費算定表では16~18万円
→新養育費算定表では25万円

 

無職の夫と年収500万円の妻で、1人の子供が17歳の場合

このケースでは17歳の子供が一人ですので、現養育費算定表では見るべき表は「表2」で、新養育費算定表では「表3」になります。

横軸は妻の年収で、給与所得者の500万円の部分をチェックし、縦軸は夫の年収になりますが無職なので0円の部分をチェックします。

→現養育費算定表では0円
→新養育費算定表では0円

 

年収300万円の夫と年収200万円の自営業の妻、2人の子供が14歳と18歳の場合

このケースでは2人の子どもがそれぞれ14歳と18歳なので、現養育費算定表では見るべき表は「表4」で、新養育費算定表では「表8」になります。

横軸は妻の年収で、自営業者の199万円(新養育費算定表では191万円)の部分をチェックし、縦軸は夫の年収で、給与所得者の300万円の部分をチェックします。

→現養育費算定表では2~4万円
→新養育費算定表では5万円

実際裁判で離婚養育費が決定された時の金額とは?

裁判では養育費算定表から算出される離婚養育費が目安となるとご説明しましたが、実際に確定判決として離婚養育費の支払い額がどのようになっているのかという点も気になります。

平成16年のデーターですが、簡単にご紹介します。

この年に離婚養育費についての確定判決は、11,647件ありました。

月額1万円以下 2,252件(男の子1,177件、女の子1,075件)全体の19%
月額2万円以下 3,542件(男の子1,831件、女の子1,711件)全体の30%
月額4万円以下 4,175件(男の子2,083件、女の子2,092件)全体の36%
月額6万円以下 796件(男の子405件、女の子391件)全体の7%
月額8万円以下 172件(男の子90件、女の子82件)全体の1%
月額10万円以下 77件(男の子43件、女の子34件)全体の1%
月額10万円超 68件(男の子32件、女の子36件)全体の1%


全体として月額4万円以下のケースが多く、特に低年齢の場合には39%~47%くらいがこの価格帯に入ってきます。

一方で、10歳を超えてくると月額6万円以下や月額8万円以下といった価格帯も増え始め、10万円超という離婚養育費の支払いが裁判で確定した例も増える傾向にあります。

 

10万円超の離婚養育費の支払いが確定した子どもの年齢としては

・21%が6~9歳
・31%が10~14歳
・32%が15~19歳

となっています。

養育費算定表を使った離婚養育費は高い?低い?

この養育費算定表を使って離婚養育費を算出すると思ったより高いと感じますか?それとも低いと感じますか?

例えばDのケースで夫は無職でも、実は資産家の家に生まれた人で、収入は無くても資産が沢山あるため、今まで生活に困ることが無かったが、夫のこのような生活態度が離婚の原因になった。

このような場合でも、養育費算定表を使って養育費を計算すると0円ということになってしまいます。

養育費算定表は個別の事情を考慮していないため、目安とすることはできても、これが確定値であるということにはなりません。

養育費を決定していく時に、夫婦で話し合いをして決定した場合や、調停の場での話し合いなどの場合には、この養育費算定表とは異なる離婚養育費を貰えるケースもありますが、審判や裁判となった場合には、この養育費算定表が目安となります。

特別な事情があったり、考慮すべきことがある場合には、できるだけ話し合いや調停で離婚養育費を決定するようにすることがおすすめということになります。

 

ここまでのポイント!

離婚養育費を決める目安となる表が存在し、この表は養育費算定表といいます。

新算定表だと1.5倍・・・?!

養育費算定表には裁判所が主に目安としている裁判官が作成した「現養育費算定表」と、弁護士が作成した「新養育費算定表」があり、現養育費算定表よりも、新養育費算定表の方が1.5倍ほど高い数字がでてきます。

養育費算定表は、夫婦それぞれの年収、子どもの数、子どもの年齢に応じて対応する表があり、離婚養育費の目安となる金額が分かる仕組みになっていますが、個別の事情を考慮していないというデメリットもあります。

過去の裁判においては、全体の約36%が月額4万円以下という離婚養育費が確定しており、中には月額10万円超という離婚養育費が決定した判例もありますが、全体の1%程度で、その中でも6歳以上19歳までがほとんどを占めています。

個別の事情をしっかりと考慮するためには、夫婦の話し合いや家庭裁判所での調停で離婚養育費を決めることがおすすめです。

 

3.こんな場合は離婚養育費を増額・減額することもOK!手続きは調停がおすすめ

リリ子
なるほど・・・。メモメモ
ゴン太
随分と熱心だね。
いくらくらいの養育費が請求できるのか分かったかい?
リリ子
思ったより貰えるみたいで安心したけど、金額は秘密。
ゴン太
それはよかったね。
ずっとその額が支払われればいいけど、そうはいかないこともあるから、注意してね。
リリ子
え?なにそれ?!
どういうことーーー?!!

 

子どもを養育していく中ではさまざまなことが起こります。ひとり親として子育てをしているときに、子どもが大きなけがをしてしまったり、病気を患ってしまったりした場合、仕事もできなくなってしまう可能性もでてきます。

また、子どもが成長するにつれて、子どもにかかる費用もどんどんと高くなってきます。

日弁連の新養育費算定表をみてみても、夫の年収が500万円、妻の年収が100万円の場合で子供の年齢によっても離婚養育費の金額は異なります。

0~5歳の場合には9万円、6~14歳の場合には10万円、15~19歳の場合には11万円、というように違いが出てきます。

子どもが5歳の時に離婚をして毎月9万円の離婚養育費をもらっていたけど、中学3年生で受験のための塾の費用、そして高校進学後は毎月授業料もかかるとなれば、とてもではないけど9万円の離婚養育費では足りない。と感じることもあります。


逆に、離婚をして数年後、今度は離婚養育費を貰っていた人が再婚をし、子どもも養子縁組をすることで新しいパートナーの子どもとなった時、いつまでも養育費を支払い続ける必要があるのか?

自分も再婚によって新しい家庭を持ち、今までのように養育費を支払えなくなるといったことが起こる可能性出てきます。

一度決定した離婚養育費を増額してもらうことや、減額をして貰うこと、さらに養育費の支払いをやめることなどはできるのでしょうか?

5つのケースからみる離婚養育費の増額・減額の希望

いくつかのケースに合わせて増額や減額が可能かどうか、可能ならどうしたらいいのかをみていきましょう。

 

【ケース1】子どもの成長に伴い離婚養育費の増額を希望

子どもにかかる費用は年齢によっても大きく変わってきます。学費、習い事、遊ぶおもちゃやゲームにかかる費用も高くなっていきますし、中学生になってくれば部活や高校受験に向けた取り組みで出費も嵩んできます。

離婚をした時に比べて教育費も増加し、生活費も増加しているという傾向があるため、子どもの成長に伴って離婚養育費の増額を希望する人は多くなっています。

子どもの成長に伴っての離婚養育費の増額が認められるケースは比較的多くみられます。

 

【ケース2】子どもが大病を患い高額の医療費が必要になったために離婚養育費の増額を希望

怪我や病気は突然見舞われ、怪我の治療、病気の治療のために多額の医療費がかかるケースは多くみられます。その地域において医療費がどの程度助成されるのかなどにもよりますが、家計に大きく響くこともでてきます。

また、シングル世帯の場合には、子どもの怪我や病気によって、働けない事態が起こるケースもあります。収入が途絶えてしまうというケースもあります。

さまざまな社会保護制度がありますが、それでも家計を支えることが難しくなるケースも多いため、元パートナーに離婚養育費の増額を求めて認められることは多くなっています。

 

【ケース3】勤務していた会社が倒産し失業。収入が途絶えたので離婚養育費の増額を希望

勤務先が突然倒産をして収入がなくなってしまうと、子どもの養育に大きな影響がでてきます。このような状態になってしまった場合には、速やかに再就職先を探すことも大切です。ですが、当面の養育費に困ってしまうということも出てきます。

離婚をしたときと大きく経済状況が変わってしまうということが、離婚養育費の増額を希望し認められることが多いケースになります。

 

【ケース4】元夫が再婚をして赤ちゃんが生まれたために減額を希望された

経済状態が変わるのは自分だけではありません。元夫が再婚をして、新しい家族が増えるときにはどうしても新しい家族にかかる費用も嵩んできます。

自分と元夫との子供に扶養義務があるように、元夫と新しいパートナーとの間の子供にも元夫は扶養義務があります。

離婚養育費が減らされてしまうことは非常に大変なことにはなりますが、離婚養育費を支払う人の経済状況が圧迫してしまうことは避ける必要も出てきます。

減額を希望されて応じない場合には、調停に持ち込まれる可能性が出てきます。調停に持ち込まれれば減額希望が通ることも多くなってきます。

 

【ケース5】自分が再婚をしたために元夫から減額を希望された

再婚をすることで新しいパートナーができれば、元夫から見れば子どもの養育が十分にできると思われて減額を希望されるケースもでてきます。
ですが、再婚をしたからといっても、子どもはあくまでも元夫の子どもであり、新しいパートナーには扶養義務がありません。

元夫は子どもの父親として離婚養育費を支払う義務があり、再婚が減額をする理由となる事はありません。

ですが、再婚の際に子どもと新しいパートナーの子どもとして養子縁組をした場合には少し事情が変わってきます。新しいパートナーは養父となり、子どもを扶養する義務を負うことになります。

この際には、子どもは母、父、養父という3人から養育を受ける立場となるため、養育費の減額の希望があった場合には、その希望が通る可能性も出てきます。

ただ、再婚をして養子縁組をしたから養育費の支払い義務が元夫は消滅することはありません。

一度決めた離婚養育費を変えることはとても大変

5つのケースを見ていきましたが、実際に一度決めた離婚養育費を増額したり減額したりすることは決して簡単な事ではありません。

経済状態には注意

増額が認められるような理由があった場合でも、元夫の経済状態に余裕がない場合には、いくら増額をしたいといってもできないこともあります。

そのため、ある程度予測されていることについては、あらかじめ離婚養育費を決定する段階で決めておくことも大切になります。

  • 子どもが成長ていく中で段階的に離婚養育費を増額する
  • もし私立の学校に通学する希望がある場合には離婚養育費を増額する
  • 再婚する時などはお互いに連絡を取り合い増額や減額の話し合いを持つ

このようなことを取り決めておくことで、スムーズは増額・減額を行えるようになります。

増額や減額をするための4ステップ

実際に相手に離婚養育費の増額を希望する場合や、相手から離婚養育費の減額の希望があった場合には、どのような手続きをしていくことになるのでしょうか。

4つのステップをご紹介していきます。

 

ステップ1.相手と直接の話し合いを持つ

まずは穏便に相手と直接話し合いを持つか、遠方の場合には通常の郵便を利用して近況の報告や子どもの様子、生活の様子などを伝え、必要があるために離婚養育費の増額を希望しているということを伝えます。

話し合いがまとまれば、その内容を公正証書に残すことが理想的になります。費用や手間などがかかりますが、公正証書に残すことで、その後のトラブルを防ぐこともできます。

もし公正証書に残さない場合でも、必ず書面として話し合った内容を残し、お互いの署名・捺印を行っておくようにします。口約束ではのちのちトラブルが起きた時に「言った・言わない」といったことが起こってしまう危険性があります。

 

ステップ2.内容証明郵便で希望を伝える

離婚をした相手と話し合いをしたくない。希望を伝えても全く音沙汰がないというときには、一度内容証明郵便を使い、相手に増額の希望があることをもう一度伝えます。

内容証明郵便は、どのような内容の手紙を相手に送ったのかということを、郵便局が証明してくれるものです。送ったからと言って増額や減額をすることになるわけではありませんが、いつの時点で希望を相手に伝えたのかが分かりやすくなります。

内容証明郵便を送る事自体が目的ではなく、次のステップへの布石という意味合いを持っています。

 

ステップ3.家庭裁判所に調停を申し立てる

離婚養育費を増額したいという時には、「養育費増額調停」を申し立てます。
反対に、離婚養育費を減額したいという時には、「養育費減額調停」が申し立てられます。

この時申し立てを行う家庭裁判所は、相手の居住地がある住所を管轄する家庭裁判所になりますが、もし相手の同意があれば、自分が住んでいる住所を管轄する家庭裁判所に申し立てを行うことも可能です。

家庭裁判所への申し立ては直接家庭裁判所に出向く方法以外にも、郵送で申し立てを行うことも可能になっています。

調停というのは、家庭裁判所内で行われる両者の話し合いですが、家庭裁判所の調停委員という有識者が介在することによって、感情的にならずに話し合いが可能になったり、意見を聞きながら話し合いができるというメリットを持っています。

調停で解決したことは「調停調書」という公的な文書として残されます。法的な効力も持っているため、万が一調停で解決した内容が守られないときには、履行勧告や履行命令、強制執行などを行ってもらえます。

 

ステップ4.家庭裁判所で審判が下る

調停が不調に終わると、家庭裁判所で審判に移っていきます。

審判では家庭裁判所の裁判官が養育費の増額や減額が妥当なのか、妥当だとするといくらにすればよいのかということを、裁判所が事実調査を行い判断をすることになります。

もし、審判の内容に不服がある場合には、2週間以内に不服申し立てを行うことが可能で、再審理を行ってもらえます。場合によっては家庭裁判所ではなく、高等裁判所での再審理が行われることもあります。

審判で定まった内容は「決定」といわれて、この内容を守らなければならないことになります。法的な効力を持っています。

 

ここまでのポイント!

一度決めた離婚養育費を増額したり減額したりすることは、決して簡単な事ではありませんが、不可能ではありません。

子どもの成長に伴い子どもの養育にかかる費用が増えることや、突然のけがや病気、また親の経済的な状況の変化、社会の変化などで、離婚養育費を決定したときに比べて大きな変化があった場合などは、事情に応じて増額や減額が可能です。

どのような理由でも、親子関係がなくなるわけではないので、養育費の支払いは義務として残ります。元パートナーが再婚をした場合でも、親は子を扶養する義務を持ちます。

話し合いによる解決が最も良いことですが、家庭裁判所に介在してもらい、調停や審判といった形で決着をつける方法もあります。変更内容は必ず書面に残し、話し合いなら公正証書に残すのがベストです。

4.離婚養育費の支払いが止まった時は?泣き寝入りしないために

リリ子
減額だけかと思ったら、増額の請求もできるみたいで安心したわ。
ゴン太さんが脅かすから、なんか疲れちゃった・・・。
ゴン太
ははは。
これも脅かしでもなんでもないけど、もし支払われなくなった場合のことも考えておかないとね。
リリ子
そうだった・・・
支払われなくなった場合にはどうすればいいんだろう・・・

 

離婚養育費は子どもが自立して社会人となるまで、長い年月にわたって支払いを受けることになります。この長い期間、しっかりと支払をしてくれる相手であれば、問題はありません。

ですが、いつの間にか支払いが滞ってしまったり、勝手に減額された金額しか支払ってくれないといった場合、どうしたらいいのでしょうか。

相手に直接支払ってくださいと言って素直に支払ってくれればよいのですが、お金がないと言われたり、再婚したから払いたくない。と言われてしまったりしたら、泣き寝入りをするしかないのでしょうか。

 

離婚養育費の支払い義務は無くなることはない

一度決めた離婚養育費の支払い義務は、どのような事情があっても無くなることはありません。極端な例ですが、もし支払い義務を持つ人が自己破産をした場合でも、離婚養育費は支払う必要があります。

これは「生活保持義務」というものです。

非常に重たい義務の一つで、食べ物がパン一つしかない場合でも、親は子供にそのパンを分け与えなければならないとされています。

これを念頭に置いて、離婚養育費の支払いが止まった時にどうしたらいいのかということを、いくつかのケースで見ていきましょう。

口約束で離婚養育費を決めた場合

感情的に離婚をした場合などに多いのが、口約束で離婚養育費について決定し、書面にしていないというケースや、とりあえず一筆だけ書いてもらったというケースです。

口約束でもちゃんと離婚養育費を支払ってくれていた間は良いのですが、支払いが止まってしまったときには、約束を証明するものがない状態といえます。

泣き寝入りしないためには、ここで一度法的に効力を持つ書面をつくるという方法があります。

 

お互いに連絡を取り合って協議をすることは、このケースでは難しいことが多いので、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことがおすすめです。この場合には「養育費請求調停」という調停を申し立てます。

養育費請求調停は相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てを行うのが基本ですが、お互いに合意があれば自分の住所地の家庭裁判所でもかまいません。

調停は当事者間の話し合いが基本になり、もしここで合意できない場合には、裁判官が判断を下す審判に自動的に移っていきます。

法的手段に出るために

ここでしっかりと離婚養育費を調停調書や家庭裁判所の決定として残すことで、支払いが滞った時に法的手段に出ることが可能となります。

 

公正証書に離婚養育費についての取り決めを残した場合

公正証書というのは、公証役場で公証人が作成する文書で、義務や権利が明確になります。公証人が勝手に書くのではなく、あくまでも父親と母親の双方が合意した内容を、公証人が記載を行います。

この公証人が記載した公正証書は公的な証拠能力を持つ文書になり、義務や権利の関係がはっきりとしていますので、万が一義務を持つ人が義務を果たさない場合には、裁判所に強制執行を申し立てられます

公正証書自体には強制執行を申し立てられるタイプのものと、強制執行を申し立てられないものがありますが、離婚に伴い作成する離婚給付契約公正証書と呼ばれる公正証書は、通常強制執行力をもちます。

 

「債務者が債務を履行しない時は、直ちに強制執行を受けても異義のない事を承諾する」

という文言が入っているかどうかを確認し、入っていれば強制執行が可能です。もしこの文言が入っていない場合には、強制執行を申し立てられないため、改めて調停や審判など法的な効力を持つ書面を作る必要が出てきます。

 

家庭裁判所の調停や審判で離婚養育費が決まった場合

家庭裁判所で調停を行い調停調書を作った場合や、審判で決定された審判書で決まった離婚養育費の場合には、まず履行勧告というものを申し出ることが可能です。

履行勧告は費用が掛かりませんが、強制力はありません。単純に家庭裁判所が支払うように説得をするというもにになります。

ですが、この履行勧告をしても支払いをして貰えない場合いは、強制執行を申し立てられます。

強制執行を申し立てるとどうなるのか。異なる二つの強制執行とは?

強制執行といえば給料を差し押さえたり、財産を差し押さえたりするイメージがあります。ですが、実際には強制執行には異なる二つの種類、直接強制と間接強制というものがあります。

1)直接強制とは?

直接強制というのは、権利者が申し立てることにより、地方裁判所が義務者の財産を差し押さえるという手続きになります。

直接強制を行うためには、まず義務者に対して離婚養育費の支払いを取り決めた強制執行力がある公正証書や調停調書、審判書などの書面を送る必要があります。その際には裁判所で送達証明申請書を作成し、送達証明を貰う必要があります。

 

直接強制を行うときには

1.調停調書,審判書などの書面(正本)
2.送達証明書
3.審判の場合,これが確定したことの証明書

が必要で、さらに手数料4,000円と郵便切手3,000円程度が必要になります。

 

2)間接強制とは?

間接強制は義務者に対して一定期間内に義務を履行、つまり離婚養育費を支払わなければ間接強制金を課す。ということを義務者に警告し、債務者に心理的な圧迫を加えるというものです。

間接強制金は本来支払う義務がある離婚養育費とは別に支払う必要があるものなので、追加でお金を支払う必要が出てくるなら、離婚養育費を支払う。と自発的に支払うことを促すための方法です。

直接強制とは異なり、財産を差し押さえるということはありません。

 

間接強制を行うときには

1.申立書1通
2.執行力のある債務名義の正本,債務名義の正本送達証明書

が必要で、さらに収入印紙2,000円、連絡用の郵便切手を添えて、家庭裁判所に申し立てることになります。

 

強制執行でいったいどの程度まで離婚養育費をもらえるの?

通常強制執行で差押えられるのは、支払日が過ぎたのに支払われなかった分のみですが、離婚養育費の場合には、将来支払われる予定の養育費の分も差押えられます。

支払日が過ぎたのに支払われなかった離婚養育費の場合は、不動産や動産といった財産を差押えることも可能ですが、将来支払われる予定の養育費については、家賃収入や給料など、定期的に支払われる金銭に限ります。

通常の差押えの場合には、給料などの金銭の収入の四分の一までの金額ですが、離婚養育費に限っては、給料などの収入の二分の一までの金額を差押えることが可能です。

 

離婚養育費を支払うお金がないと言われたらどうする?

支払いたくても離婚養育費を支払うお金がない。というケースもあります。このようなケースではどうなるのでしょうか。

手元に現金がなくでも財産がある場合には、法的措置、つまり先ほど紹介した強制執行を行うことで財産を差押え、その財産を競売にかけて現金化して支払ってもらう。という方法があります。

給与所得者であれば、強制執行によって給料を差押え、給料の二分の一まで範囲内で支払いをして貰うことが可能です。離婚養育費の場合には、過去に滞納した離婚養育費だけではなく、将来に支払ってもらう予定の離婚養育費の支払いも求めることが可能です。

このような事に備え、強制執行が可能になる公正証書を残すことや、調停や審判で離婚養育費を決定することがおすすめです。


最悪の場合ですが、子どもの祖父母、つまり元の義理の父母に相談をしてみるということもできます。

祖父母には直接的に離婚養育費を支払う義務はありませんが、扶養義務というものがあります。

実の父のように、生活に困窮している交代でも、自分がご飯を食べられるのであれば、子どもにもご飯をたべさせるお金を支払う必要がある。というほどに重い義務ではありませんが、生活を犠牲にしなくても済む程度なら、孫の生活扶助を行う義務があります。

つまり、元夫にはお金が無くても、その親である祖父母がある程度余裕のある生活をしているのであれば、孫の生活扶助義務を履行してもらうように相談ができます。

もちろん、すんなりと生活扶助を申し出てくれれば問題がありませんが、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に「扶養請求調停」を申し立てて調停を行います。


調停が不調に終わった場合でも、審判の手続きに移り、裁判官の判断で不要請求審判の決定が下りる可能性もありますので、離婚養育費の支払いが滞ることで生活が困窮する事態が起こっている場合の一つの手段となります。

もともと元夫が経済的にだらしない性格だった場合などは、公正証書や調停調書、審判書などを作成するときに、実父が離婚養育費の支払いが滞った時には、両親が連帯保証人として支払う。といった契約をしておくとよいと言えます。

連帯保証人としてであれば、元夫が滞納した離婚養育費を祖父母た支払う義務が出てきます。

 

ここまでのポイント

もし離婚養育費の支払いが止まった時には、大きく二つの方法があります。

口約束や簡単な覚書程度で離婚養育費を決めた場合には、改めて養育費請求調停を申し立て、法律的な効力を持つ離婚養育費についての取り決めを行うこと。

強制執行が可能な法律的な効力を持つ離婚養育費の取り決めがある場合には、強制執行などの手段が取れます。このような事に備えて離婚養育費を決めるときには、法律的な効力を持つ公正証書を残すことや、調停調書を残すようにしましょう。

どうしてもお金がない場合には、最悪の場合元夫の両親、つまり祖父母に対して扶養請求調停を申し立てるという方法もあります。

ただ、元夫は自分が食事をとれるなら、子どもにも同じ食事を与え化ければならないほど重い義務を負っていますが、祖父母はそこまでの義務はありません。ある程度生活に余裕がある状態の場合のみ、この手段が取れます。

 

6.少しでも多く離婚養育費を貰うためにできること

リリ子
う~ん。最悪の場合には、おじいちゃんやおばあちゃんに請求かあ・・・。
なんだか気が引けるけど、子どものためのお金なんだもんね・・・。
ゴン太
そうだね。そんなことにならないようにしたいよね。
リリ子
うんうん!
こうなったら、旦那から少しでも多く養育費を貰ってやる!!
ゴン太
・・・さっき気が引けるって・・・

 

厚生労働省では様々な統計を行っていますが、その中の一つに「全国ひとり親世帯等調査結果報告」というものがあります。
平成28年度の全国ひとり親世帯等調査結果報告のなかで、ひとり親世帯の平成27年の年間収入というものがあります。

母子世帯の平均年収

母子世帯の場合、母自身の平均年間就労収入は約200万円で、児童手当や親からの仕送り、離婚養育費などを含めた場合でも、約243万円が年間収入となっています。

この調査では父子世帯の場合の結果報告がありますが、父自身の平均年間就労収入は約398万円で、児童手当や親からの仕送り、離婚養育費などを含めた場合には約420万円です。

母子世帯と父子世帯では大きな差があることが分かってきます。

少しでも多く離婚養育費を貰いたいと考えるシングルマザーがシングルファザーよりも多いのはこのようなことが理由となってきているようです。

では、いったいどうしたら少しでも多く離婚養育費を貰えるのでしょうか。

 

【その1】しっかりと離婚養育費の取り決めを行う

離婚養育費の金額というのは、目安になるものはありますが、明確な定めはありません。

それぞれの家庭の生活水準が異なりますし、子どもの数、年齢、親の収入などによってもその額には差が出てきます。
目安とする養育費算定表も、このような理由から現養育費算定表(裁判官が作ったもの)では9つの表が用意され、新養育費算定表(弁護士が作ったもの)では19もの表が用意されています。

実際にはこの表で判断できないさまざまな個別の事情があり、一概に離婚養育費はいくらという決まりがありません。

そのため、しっかりと話し合いや調停、審判といった手段で、離婚養育費についての取り決めを行っておくことが必要です。

  • 離婚したときには自分の経済状態がどのような見通しになるのか
  • 子どもの進路をある程度いくつか想定をしておき、将来どの程度の教育費がかかるのか、生活費はどの程度必要になるのかを想定し書面にしておく
  • 定期的に見直しができるような取り決めも行っておく

離婚という直面で細かい部分をしっかりと詰めていくことは難しいことですが、その時には家庭裁判所に介在してもらい、冷静な話し合いが可能な調停という方法を取ることがおすすめです。

夫婦の話し合いだけで離婚を決定した場合には、なるべく詳細な内容を公正証書に残しておくようにします。話し合いの中で少しでも多くの離婚養育費を支払ってもらえるように説明をしていきましょう。

 

【その2】審判になったら養育費算定表の高い金額を目指す

離婚養育費の取り決めが協議や調停で決まらず、話し合いが決裂すると、裁判官が判断を下す審判に移っていきます。

この審判の場合には、多くのケースで養育費算定表をもとにすることになります。審判で参考にされる養育費算定表は、現養育費算定表と呼ばれる裁判官が作った資料になる事が多くなります。

この現養育費算定表では、目安となる金額には幅があります。

例えば、

・子どもが一人で15歳の場合で、夫の年収が600万円、妻の収入が200万円の場合だと、6~8万円
・子どもが二人で、一人は13歳、一人は15歳だった場合で夫の年収と妻の年収が先ほどと同じ場合には、8~10万円

このように1万円~2万円程度の幅を持った書き方がされています。

1万円違えば、年間で12万円、10年間なら120万円も変わってきますので、できるだけ養育費算定表の上の方の金額に近い金額を目指すことが重要になってきます。

 

【その3】離婚養育費などの問題に強い弁護士に依頼をする

一時的に費用が掛かりますが、弁護士に依頼をすることで、できるだけ高い離婚養育費を取り決めることが成功できる確率は上がってきます。

弁護士に依頼する時には養育費1年分の10%程度が弁護士報酬の相場となるため、弁護士も報酬をもらうために高い養育費を獲得するために頑張ってくれます。

この報酬以外にも弁護士の場合には着手金や相談料、日当、実費、交通費などがかかってきます。

まずは自治体などで行われている無料相談を利用するという方法もありますが、無料相談では離婚の案件の弁護に強い弁護士に当たる可能性はあまり高いものとは言えません。

最初から離婚問題に強い弁護士を探し、一度相談をしてみて、全体としてどのくらいの費用がかかるのかということを確認してみることがおすすめです。

長い目で見ると

仮に100万円の弁護士費用が掛かったとしても、長い目で見れば高い離婚養育費を獲得できた方が得になる可能性も出てきます。

その場だけの金額で考えるのではなく、将来を見据えた金額を考えるようにしてください。

 

【その4】あきらめずに養育費請求調停を申し立てる

離婚養育費を少しでも多く貰う以前に、離婚時に離婚養育費の取り決めをしなかったり、離婚養育費はいらない。といって離婚をしたという方も多いのではないでしょうか。

平成28年度の全国ひとり親世帯等調査結果報告という先ほども紹介した統計調査によると、離婚時に離婚養育費の取り決めをしていると回答している母子世帯は、全体の42.9%で、離婚養育費の取り決めをしていない人の方が多いことが分かります。

離婚養育費の取り決めをしていなければ、この後何があっても離婚養育費を貰えないと思っている人も多いですよね。ですが、諦める必要はありません。

子どもの親には生活保持義務があり、この義務は消滅することがありません。つまり、離婚後何年たっても、子どもが二十歳になっていない、もしくは社会人として自立していないという状態なら、離婚養育費を請求することは可能です。

離婚後に離婚養育費を請求するための話し合いを行いたいと思っても、なかなか取り合ってもらえない可能性もあります。さらに、中には元夫の行方が分からないというケースもあるかもしれませんよね。

このような場合はどうしたらいいのでしょうか?

 

1)元夫の住所などが分かっている場合

元夫の現住所を管轄する家庭裁判所に、養育費請求調停を申し立ててみましょう。調停の場で話し合いを持つことで、元夫が自分にある生活保持義務を知り、子どもに対して離婚養育費を支払う義務を負っている。という自覚を持ってもらえる可能性があります。

調停が不調に終わっても、審判に手続きが移行し、裁判官の判断を仰ぐことになります。離婚養育費の支払いが決定されれば、今までゼロだった離婚養育費を貰えることになります。

 

2)元夫の住所が分からない場合

離婚した後に元夫と連絡を取り合うことが無く、今どこに住んでいるかもわからないというケースもあります。このような時に元夫の住所を知る手段として「戸籍の附票」を利用する方法があります。

戸籍の附票というのはその戸籍に入っている人の住所履歴が記載されている公文書です。本籍と戸籍の筆頭者さえ分かれば、その戸籍に入っている人の現住所を調べることが可能です。

元夫が本籍を移動させてさえいなければ、この戸籍の附票を入手することで住民票の最後の住所地が分かります。

戸籍の附票は元妻であっても、現在「他人」である人は請求できませんが、子どもはたとえ戸籍が違ったとしても、「子」であることには変わりがないために、父の戸籍の附票を請求することが可能です。

子どもの監護人である人も、子どもの法定代理人として元夫の戸籍の附票を入手することが可能なので、この方法で現在の住所を確認できます。

一つだけ問題があるとすると、住民票を移さないで転居を繰り返しているといった場合です。養育費請求調停はどうしても申し立てる相手の現住所が確定しなければ申し立てられません。

【その5】できるだけ早く離婚養育費の請求を行う

離婚時に離婚養育費についての取り決めを行っておけば、離婚と同時に元夫には離婚養育費を支払う義務が発生しますが、離婚時に取り決めを行っていなかった場合、いくら離婚養育費の請求をしたとしても、過去にさかのぼって支払いを求めることはできないことがほとんどです。

これには理由があります。

過去の離婚養育費の請求を認めてしまうと、場合によっては多額の離婚養育費の支払いを求められることになり、離婚養育費を支払う義務を持つ人が困窮してしまう危険性があるためです。

もちろん、資産が十分にあり多額の支払いをしても問題がないのであればよいのですが、問題がないという人はそう多くはありませんよね。


そこで、家庭裁判所における調停や審判では、離婚養育費の請求を行った時から認められることが一般的になっています。つまり、離婚養育費が欲しい時には、できるだけ早く離婚養育費の請求を行うことが必要です。

証拠に残せる手段は有効

離婚養育費の請求を始めた時を確定させるためには、証拠に残せる手段で連絡を取ることが必要となってきます。そこで、郵便局の内容証明郵便を利用するということが多くなってきます。

まずは元夫宛てに離婚養育費が欲しい。という旨の手紙を、内容証明郵便で送付します。内容証明郵便は、一般書留郵便物の内容文書を郵便局が証明してくれますので、いつの時点で離婚養育費の請求をしたのかということを証明できます。

 

ここまでのポイント!

少しでも多くの離婚養育費を貰うためには、一番は子どもの今後の生活、進学先などをしっかりと見据えて、どのくらいの金額が必要なのかという見通しをしっかりと立てたうえで、夫婦でよく話し合いをすることが一番です。

調停や審判になった場合には、養育費算定表に示されている金額の少しでも上の金額を目指すようにしていくということも大切です。

もし離婚時に離婚養育費についての取り決めをしていない時には、元夫と話し合いを持つこと、それができない場合や決裂してしまった場合には、調停や審判といった手段で離婚養育費を請求が可能です。

ただ、離婚養育費は離婚養育費の請求をした時点からしか貰えないことがほとんどです。できるだけ早く離婚養育費の請求を行いましょう。


できるだけ早く離婚養育費の請求を行うことと同じで、できるだけ早くやっておくべき離婚準備があります。
離婚準備であなたが今スグやっておくべき「たった1つのコト」とは?

 

7.離婚養育費にまつわる体験談。あなたならどうしますか?

リリ子
なるほど~!勉強になりました。
ちなみに、みんなはどういう取り決めの仕方をしてるのかな?
ゴン太
じゃあ、みんなの体験談も見てみようか。

 

ここまで離婚養育費についていろいろなことをご説明してきました。では、実際離婚養育費の問題に直面した方たちは、この問題にどう向かい合い、どう解決していったのでしょうか。

離婚養育費にまつわる体験談をご紹介していきます。

 

体験談1:協議離婚でも公正証書を残すことで泣き寝入りせずに済みました

小学6年生の男の子と小学3年生の女の子の兄妹を連れて離婚をしたのは、ちょうど3年位前でした。離婚理由は旦那の浮気だったので、離婚自体はスムーズに進めていけました。

旦那の浮気が理由ということもあり、養育費についても言い出しやすく、子ども1人について月に3万円、子どもが成人するまでは払い続けてもらうということを約束し、さらに公証役場で公正証書に残す事にしました。

離婚後2年目までは順調に支払をして貰えましたが、気が付いたら養育費の支払いがストップしていました。こちら側には何の相談もありません。普段はあまり連絡を取り合うことは避けていたのですが、思い切って元旦那に連絡を取って見ると、再婚をして子供が生まれたために、養育費を支払う余裕がなくなったと言われました。

聞いてみると再婚相手は浮気相手だった人で、離婚後すぐに再婚をしていたそうです。

私と子ども二人の生活は決して余裕はありませんし、養育費の支払いが止まれば子どもの進学などの面で不安がありましたので、一度市役所で行っている弁護士相談を利用して相談をしてみることにしました。

弁護士の方からは、まず公正証書が残っているため、最悪の時には差押えなどで離婚養育費を支払ってもらうことが可能ということを教えてもらいました。そのためには地方裁判所に行って手続きが必要ということだったのですが、まずは弁護士に依頼をして、このような手段を取ろうと思う、ということを伝えてみることもおすすめ。と言われました。

弁護士費用を支払うのはとてもキツイと感じましたが、息子の場合にはあと6年、娘はあと9年養育費を貰う約束になっています。580万円近いお金を得るためにと思い、弁護士に依頼をすることにしました。

結果として元旦那は弁護士が交渉をすることで支払いに応じてくれました。その後は一度も離婚養育費の支払いがストップすることがなくなりましたので、弁護士の方の力というのはすごいなと思ったのと、公正証書に残したことは本当に正解だったと思いました。

息子は給付型の奨学金を貰い無事に大学生に、娘は美容師になりたいということで高校卒業後は美容の専門学校に通うといいます。二人とも高校生になってからはアルバイトなども頑張ってくれて、決して余裕はありませんが、母子3人で仲良く過ごせています。

体験談2:看護職で夫よりも収入が高かったため養育費はいらない!と言ったのが失敗だった

私は4大卒の看護師で、一般的な女性に比べると収入は多めでした。夫はごく普通のサラリーマンで、土日休みの勤務でした。結婚当初からなかなか生活のリズムが合わずに小さないざこざはありましたが、子ども2人に恵まれ、はたから見ればごく普通の家庭に見えたと思います。

自分が夜勤に入るときには、子どもは夫が面倒を見ることになっていましたが、残業や出張などが増えてなかなか面倒を見てくれず、病院内にある託児所に預けることが増えてきて、何かおかしいと感じた時には、夫は浮気をしていて、とうとう家に帰ってこなくなってしまいました。

しばらくしてから、生活のすれ違いを原因として夫から離婚をしたいと言われ呆然としました。浮気をしてたのは夫なのに、まるでこちらが原因のような言い方にとても腹が立ちました。収入面では夫に比べて私の方が高いということもあり、子どもたちは私が育てるから。ということで養育費はいらないと口約束をして離婚することになりました。

子どもが保育園に通う年齢の間は良かったのですが、小学校に通うようになると、夜勤も行う病棟勤務が難しくなり、日勤のみの職場に転職をすることにしたのですが、当然そうなると収入はかなり落ち込みました。

貯蓄もそれなりにありましたが、だんだんそれを切り崩していく生活となり、このままでは子どもの進学資金がなくなってしまうと思うようになりました。

思い切って元夫に連絡をして、養育費を払ってほしいと言いましたが、元夫は養育費はいらないと言ったじゃないか。と逆切れ。まだ再婚はしていないけど、再婚を考えているからそのような余裕はないと言われてしまいました。

看護師の仲間の中にはシングルマザーとして働く人も多く、相談をしてみたところ、口約束でも言っちゃったんだからダメなんじゃないかな?とか、どうして最初からちゃんと約束しておかなかったのかと逆に言われてしまいました。

ただ、一人だけ調停で後から養育費を請求できるよ。と言われました。その人もやはりシングルで、離婚後に養育費請求調停を行って養育費を貰えるようになったそうです。

手続きはちょっとめんどくさそうですが、私もこの調停というのにチャレンジしてみようかなと思っています。

 

体験談3:離婚原因は私。でも子どものために養育費をもらえるよう頑張りました。

離婚の原因を作ったのは自分でした。10歳年上の旦那さんは、結婚当初から職場でも忙しいポジションにいたということもあり、比較的一緒にいる時間も少なく、子どもが生まれてからは特に私も育児に忙しくなりお互いにすれ違う日々が続きました。

家計は同年代の夫妻に比べると夫の収入が高かったので潤っていましたが、やはり自分が自由に使えるお金も欲しかったので、子どもが幼稚園に通い始めたころにパートをはじめました。

浮気相手となったのは、子どもの通う幼稚園にやはり子供を通わせていたシングルファーザーでした。仕事で幼稚園の行事などもなかなか来てくれなかった夫とは違い、子煩悩で私の子どもにもとても良くしてくれる人でした。

子どもを通してママ友として最初はお付き合いをしていましたが、次第に個人的なお付き合いもするようになり、子どもと一緒に出掛けるといったことも増えてきた頃から、自分にあまり見向きをしてくれない夫よりも頼れる存在となり、不倫関係になってしまいました。

夫には離婚を申し出て、彼と新たな家庭を作りたいと言ったときにはかなりもめました。子供は夫が引き取るとまで言いましたが、子どもがどうしてもママと暮らしたいというため、当初は養育費なしでとも考えましたが、将来を考えるとやはり養育費を貰い、進学に備えたいと考えました。

夫との協議は難航をしたので、思い切って弁護士さんに依頼をして、離婚調停を申し立て、その中で養育費についての話し合いも持つことにしました。

当初はなかなか話し合いもスムーズに進みませんでしたが、夫が家庭を顧みなかったことも私の浮気の原因になりえたことや、やはり子どもが母親と暮らしたいと希望している点などを考慮して、私と不倫相手とで夫には慰謝料を支払い、夫からは子どもが20歳になるまで養育費を月3万円払ってもらうということで決着をしました。

体験談4:養育費の減額を求められて養育費減額調停を申し立てられた

子ども3人に恵まれたものの、夫と離婚をし、私は実家に戻って3人の育児を両親と共にすることになりました。養育費は一人3万円で、中学生になったら1万円増額してもらうということを話し合いで決めていました。

ところが、一番上の子が中学生になったころに、元夫から養育費の減額をして貰いたいと言われました。どうも結婚を考える相手ができて、養育費を支払う余裕がなくなってきたというのです。もちろん、子どもの養育費を減らすことは考えていなかったので断りました。

ところが、突然裁判所から養育費減額調停の呼び出し状が送付されてきました。まさか元夫が裁判所に申し立てを行うとは思いませんでした。

元夫に抗議の電話をしましたが、どうしても減額をして貰いたいことや、法律家に相談をしたところ調停という手段をとることが望ましいとアドバイスをもらった。ということを告げられました。公の場でちゃんとした話し合いをしたい。と言われたため、結局家庭裁判所で養育費減額調停での話し合いをすることになりました。

夫の収入が減っていたことや、結婚を考える相手がいて生活費がかかるようになる事など、子どもの教育費が年々高くなっていることなどを話し合い、結果的に養育費は5年間は10万円、長男が20歳になったら8万円、次男が20歳になったら5万円、長女が20歳になった時点で支払いが終わるということになりました。

トータルすると減額ということにはなりましたが、元夫なりに一所懸命に考えて支払いを続けてくれることになりました。

長女が15歳~20歳の間は1万円多く支払うから、成人式ではぜひ振袖を着せてやってくれと言われ、そこまで考えてくれていたのかと少し驚きました。

 

まとめ

リリ子
へ~。離婚の原因を作った奥さんも、養育費なんていらない!って言っちゃった奥さんも・・・
みんな養育費を貰えるように頑張ってるんだね。
ゴン太
そうだね。養育費は子どものためのお金。
そのことを忘れないように、子どものために請求するようにしたいね。
リリ子
そうよね。子どもに不自由なく生活させてあげたいもんね。

 

いかがでしたでしょうか。

子どもがいる状態で離婚をした場合、離婚養育費の支払いを受けることは、あくまでも子どもの権利であり、離婚の理由がどのようなものでも、離婚養育費を貰うことは可能です。

子どもにとっては離婚をしたとしても実の母であり実の父であることには変わりがなく、離婚によって生活環境が変わったとしても、親と同等の生活を送る権利を持っています。同時に親は子供を自分と同じ生活レベルの生活環境を整える義務があります。

養育費はこどものもの

子どもの将来のためにも、子どもを養育する立場になった場合には、離婚養育費の支払いを求めることを忘れないようにしましょう。

万が一離婚養育費の支払いを断られてしまった場合には、家庭裁判所で調停や審判で養育費の支払いを求められます。ただ、離婚養育費の支払いは遡って求められないケースが多いため、できるだけ早く離婚養育費の支払いを求めることが大切です。

調停や審判は個人で申し立てることが可能ですが、心配なときには弁護士に相談をしてみることがおすすめです。ただ、どのような弁護士でも良いのではなく、離婚訴訟や養育費問題に強い弁護士に相談をするということが必要です。

離婚養育費の支払いは長期にわたることも多いため、取り決めた内容はしっかりと公的な文書に残すようにしましょう。

・公正証書に残す
・調停や審判を申し立てる

どちらかを選択することで、将来支払いが滞ってしまった場合に対策を立てることが可能になってきます。

離婚養育費は定まった金額はありませんが、支払い能力によってある程度決まった目安額などもあります。離婚をした相手とはいっても、やはり相手も生活をしていく必要がありますので、この辺りもちゃんと考慮して請求をする必要があります。

無理を押して離婚養育費の金額を決定しても、将来養育費減額調停を起こされてしまう可能性も出てきます。

無理がない金額で離婚養育費の支払いを続けてもらえるようにしっかりと話し合いをすることが必要です。

 

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