性格の不一致じゃ、離婚できない場合があるんだよ。
今日はより深く、離婚できる場合とできない場合についてや、具体的にどの程度不一致だと離婚できるのかも勉強していこう!
離婚を考える理由はいろいろありますが、最近増えているのが「性格の不一致」。
何かのきっかけで「この人とは合わない!」と思ったり、長年一緒に暮らしているうちに少しずつ価値観のずれを感じてくることはけして珍しくありません。
とはいえ不倫や借金、DVといった明確な理由とは違うため、性格の不一致が離婚できる理由になるのか分からないという不安を持つ人は多いでしょう。
「私の我慢が足りないのではないか」「性格の不一致で辛い思いをしたけれど慰謝料は取れないのではないか」など気になる点もたくさんありますね。
また、性格の不一致は感じるものの離婚までは考えていないのでひとまず別居したい、でもどうしたらいいんだろうといった悩みもあるでしょう。
また離婚まではしたくないけれど同居は避けたい場合の解決策についても触れていきます。
性格の不一致での離婚は間違っているのではないか…そんな悩みを一人で抱え続けずに、ここで一緒に考えてみましょう。
そして、そのあとに待っている大きな問題も、先に解決しておくようにしましょう!
目次
1.性格の不一致ってそもそも何なの?
「性格の不一致」という言葉、いろんなシーンで目や耳にすることが多いですね。何となくイメージはあるけれど実はよく分からない、そう考えている人のためにここで簡単にまとめてみます。
さまざまな項目において考え方が違う、ずれている、そんな状態や感覚をさします。
さまざまな項目とは、夫婦で日々を過ごしている上で関わるすべてといってもいいでしょう。
金銭感覚や性生活、食べ物の好みや仕事、子どもがいれば育児や将来的な生活設計などが該当します。
つまり価値観の違いと言い換えることができます。
では実際に性格の不一致が原因で離婚している夫婦はどれくらいいるのでしょうか。
全国の家庭裁判所の離婚調停申立てに関するデータでは、調停を申し立てたのが夫側であっても妻側であっても、離婚を求める理由の1位は「性格が合わない」でした。
夫側
1位 | 性格が合わない | 11,138件 |
2位 | 精神的に虐待する | 3,590件 |
3位 | 家族親族と折り合いが悪い | 2,682件 |
妻側
1位 | 性格が合わない | 18,994件 |
2位 | 生活費を渡さない | 14,090件 |
3位 | 精神的に虐待する | 12,361件 |
※「その他」と「不詳」を除いた1位~3位。
上記の項目以外の理由として以下のような動機があります。
・異性関係
・暴力をふるう
・お酒を飲みすぎる
・性的不調和
・浪費する
・病気
異性関係や暴力が離婚の原因としてよく聞かれますが、実際には性格の不一致が離婚理由になっているケースが増えてきているのです。
参考・参照:平成28年 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所
ただし一口に性格の不一致といっても、その意味は夫婦によって異なります。許せることと許せないことには個人差がありますから、自分がどう思ったかが重要です。
「こんなことで離婚を考えてはいけないのではないか」と気にして我慢したとしても、根本的な解決にはならないと考えましょう。
2.性格の不一致で離婚できる?どうすればいいの?
性格の不一致を理由に挙げる人って多いのね。
じゃあ早速だけど、性格の不一致で離婚できるかどうかの核心に迫ろうか!
性格の不一致で旦那と離婚できますように~。
性格の不一致=価値観の違いとすれば、「うちもだ!」とうなずく人も多いのではないでしょうか。
夫婦として一緒に暮らしていても、夫と妻がそれぞれ別の人間である以上、価値観が異なるのはむしろ自然なこと。そして価値観の違いが大きくなってくると、夫婦関係を続けていくのは難しいと考えるのもまた自然なことです。
夫や妻との価値観のずれを感じている人にとって気になるのは、「性格の不一致で離婚できるのか?」ということでしょう。
結論から言えばできます。
ただし離婚に至るまでの進め方はいくつかあります。
離婚できるかどうかは離婚方法によって異なる
まず夫婦で離婚するかどうかを話し合って離婚を決める協議離婚の場合は、離婚理由が何であっても双方が合意すればいいので、性格の不一致が理由でももちろん離婚できます。
夫婦のうちどちらかが離婚したくて、もう一方はしたくないため結論が出ない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いをすることになります。
調停委員とよばれる男女1名ずつが夫婦の間に立って進められますが、申し立てた側が性格の不一致について具体的に調停委員に説明できなければ、なかなか相手を説得してもらうことはできません。
調停でも結論が出ない場合は離婚裁判となります。離婚したい側が原告となって、離婚を求めて相手を提訴します。
裁判離婚では、協議離婚や調停離婚とは違い、法律で定められている5つの離婚事由のどれかに当てはまらないと離婚できません。性格の不一致はその5つの中に含まれないため、単に性格の不一致という理由だけでは離婚できないのです。
法律で定められている離婚事由とは、民法770条で定められている次の5つです。
1号 不貞行為
2号 悪意の遺棄
3号 生死が3年以上不明
4号 強度の精神病で回復の見込みがない
5号 その他婚姻関係を継続しがたい重大な理由
裁判離婚において、性格の不一致を理由に離婚したい場合は、5号の「その他婚姻関係を継続しがたい重大な理由」に該当するかどうかがポイントになります。
ただし5号を採用する場合、1号から4号に匹敵するような事情でなければ離婚原因となりません。
となると、単に価値観が違うというだけでは理由として不足しているということになります。夫婦で一緒に生活していきなさいと法的に強制することが難しいほどひどい状態だという場合だけに認められます。
ちなみに、別居をしていることで夫婦生活が破綻していると主張し証明したいなら、婚姻期間にもよりますが、少なくとも別居期間が2~3年以上あることが必要だということもあわせて覚えておきましょう。
性格の不一致で離婚したくても、裁判の場合は訴えることすら難しいというのが現実ではありますが、裁判離婚が認められるケースもあります。
たとえば「夫婦関係が悪化するもともとの原因は性格の不一致で、それが大きな問題の引き金となって夫婦関係を継続することすら難しくなり、完全に破綻してしまった」というようなケースです。
さらに離婚の仕方について気になる方は、こちらの記事もチェックしてみてくださいね!
>【納得できる離婚のために】6つの離婚の仕方と円満離婚の7つの約束
3.具体的にどの程度の不一致が必要?判例から見る性格の不一致での離婚
相手が応じてくれない場合には協議ではなく調停になるけど、性格の不一致の理由ひとつで離婚できるのはそこまでだ。
離婚調停に失敗は許されないわね・・・。
リリ子さんも協議は無理そうだから、準備はしっかりね!
性格の不一致が原因だけど協議や調停でもうまくいかなかった…そして裁判でも訴えることすら難しいとしたら離婚はできないの?と不安な人もいるでしょう。
具体的にどの程度の性格の不一致があれば、裁判所は離婚を認めるのでしょうか。
実際の判例を見てみましょう。
実際の判例から見る性格の不一致の程度
ここに挙げるのは、平成15年5月30日に神戸地方裁判所で判決が出た離婚裁判の例です。裁判の前に離婚調停を起こしましたが不成立となり、夫が原告となって妻に対し裁判を起こしました。
妻は言いたいことをはっきりという性格で、家庭でも主導権を握り、夫に対して日常生活のこまかい部分まで直接的な表現で指摘していた。
対して夫は気弱でおとなしい性格だったので、妻に対して思ったことをうまく主張できず、言いたいことがあっても内に秘めて妻の言うことに従っていた。
妻は夫に対して次のような態度で接していた。
・タオルを湯船につけるという夫の入浴スタイルや、部屋にこもってパソコンゲームをする日常生活の態度によく文句をつけていた。
・夫の休日に家族3人で外出することはほとんどなく、夫が平日に仕事が休みでも妻は夫と行動を共にせず、友人と会う予定を入れては外出していた。
・妻が夫に教えなかったため、長女の小学校入学式や父親参観の日時が分からず夫は出席できなかった。
・夫は妻との結婚後に費用の大半を出して自動車を購入したものの、普段は妻が自動車を管理しており、夫が使用したい時に使用できなかった。
こうした日常生活の中で夫は次第に精神的に委縮し、過大なストレスを感じるようになった。
精神科を受診したところ、夫婦間のいざこざによる動悸や不安、焦燥感、劣等感、睡眠障害の症状が認められ、心因反応と診断された。
このように夫が次第に精神的に委縮して精神科への通院が必要になっても、妻は夫への態度を変えなかった。
裁判では、「妻は自らのやり方や考え方を必要以上に強制するのではなく、夫の立場にも配慮して夫婦関係を維持するよう努力するべきだった」として離婚が認められました。
この裁判では、夫と妻の双方の言い分や態度などを見たものの、夫婦どちらも今後円満な夫婦関係を築いていこうという意欲や展望がうかがわれませんでした。
また、夫婦双方の性格や考え方、見方の違いをあわせて考慮すると、今後この夫と妻が正常な夫婦関係を築き上げていくことは困難であるという見解となりました。
そうなると、離婚請求を認め、財産など金銭的に精算すべきものを精算し、双方に新たな出発の機会を与える方が互いの将来にとって利益だというのが裁判所の判断です。
この判例からも分かる通り、「夫婦関係の修復が非常に困難であり、今後も正常な夫婦関係を築いていくことは難しい」と思えるほどの性格の不一致であることが必要です。
4.性格の不一致で慰謝料は取れる?
判例があると、イメージしやすいわね!
リリ子さんがもう一つ気になりそうな「慰謝料」についても見ていこう。
さすがゴン太さん!!すごく気になるわ~。
性格の不一致での離婚について裁判所の見解をつかんだところで、他にも気になる点を見ていきましょう。
性格の不一致を理由に慰謝料を請求することができるのか、これも分かりづらいですね。
原則として、性格の不一致による慰謝料請求は認められません。
離婚というと慰謝料を請求できるというイメージを持っている人は少なくありませんが、慰謝料を請求できるケースは実は限られています。
慰謝料は、暴力や不貞行為などによって精神的に受けた損害に対して支払われます。
しかし性格の不一致というのは、もともと他人同士だった夫婦が一緒に生活しているのですから起きても不思議ではないこと。
暴力や不貞行為のように一方が悪いというわけではなく双方に問題があったとも言えるだけに、性格の不一致だけでは慰謝料請求は認められないのです。
とはいえ例外もあります。
慰謝料が請求できる場合とは?
たとえば性格の不一致だと思っていた背景に実は不貞行為があったという場合は、性格の不一致ではなく不貞行為を理由に離婚することができます。加えて慰謝料請求も可能となります。
ただし、すでに別居している、同居はしているが会話や家事分担や性交渉がすでにないなど、夫婦関係が破綻している状態であれば慰謝料請求が通らないこともあります。
なお、慰謝料請求には時効があります。
不貞行為の事実およびその相手を知った時点から3年を過ぎると、慰謝料請求ができなくなりますから注意しましょう。
性格の不一致では慰謝料請求は原則できませんが、夫婦のどちらかがお金の支払を要求し、もう一方が了承したのであれば、金銭のやり取りは発生します。
この場合は慰謝料とはいわず「解決金」という呼び方になります。
5.性格の不一致があっても離婚は避けたい場合の5つの対処法
原則として、性格の不一致では慰謝料はとれないから、そっちを覚えておくといいよ。
ほら、子どものこととか、会社の問題とか・・・
じゃあ、そういう場合にどう対処したらいいのかも、見ていこうか!
夫婦の間で性格の不一致がある、けれど離婚はしたくない、そんなケースも珍しくありません。離婚を避けたい理由は、わずかにでも残る愛情や世間体、子どもの養育環境、社会的立場などさまざまです。
そこで性格の不一致があっても離婚したくない場合には、次のような方法で対処することを考えてみましょう。
- お互いの性格の不一致を認めてどうすれば円滑な関係になれるかを話し合う
- 結婚したばかりの頃の気持ちをお互いに確認しあう
- 新しい趣味や二人での外出など一緒にできることを何か始めてみる
- もともとは赤の他人でまったくちがう環境で育ってきた者どうしとして、性格や考え方や価値観の違いを認識する
- 夫婦間でルールを決める
- お互いに不満をため込まず思ったことは伝えるように努力する
夫婦双方、もしくは夫か妻のどちらかが性格の不一致で夫婦関係がうまくいっていないと感じる原因のほとんどは、「自分の価値観で相手の言動を判断している」からです。
夫婦とはこうあるべきだ、夫とは妻とはこういうことをして当たり前だ、こういう考えはだれしも持っていますね。
これらは悪いことというよりも、単なる違いであると考えて、①~⑥の方法でできそうなものを実践してみましょう。
6.離婚も同居も嫌な場合…別居と悪意の遺棄について
性格の不一致がある場合、離婚したいというケースと離婚は回避したいというケースの他にもうひとつ、「離婚も同居も嫌だ」というケースがあります。
このケースでは別居という形をとるのが一般的です。
別居という形は離婚も同居も確かにしなくていいのですが、法律で定められている離婚事由のひとつである悪意の遺棄に該当する可能性がありますから、注意が必要です。
悪意の遺棄ってなに?
悪意の遺棄とは、次のような行動をさします。
・配偶者が正当な理由なく他方の配偶者との同居を拒む
・夫婦間で協力しない
・夫(妻)と同一程度の生活を保障してくれない
・何の理由もなく突然出て行ってしまい、そのまま帰ってこなくなった
・同居はしているが生活費を渡さない
・仕事をしない
・姑との折り合いが悪く実家に帰ったまま戻ってこない
・専業主婦だが家事を放棄している
・夫婦共働きで拘束時間が対等なのに夫が家事に協力しない
これらの行動が夫もしくは妻にある場合は、別居前にまず話し合いを持つことが大切です。
また、話し合いながらきちんと考えておきたいのが婚姻費用の問題です。婚姻費用とは、離婚するまでの別居期間に収入が多い方が少ない方に支払う生活費のことです。
夫婦双方の年収額で計算することになっており、婚姻費用の算定表によって目安が分かります。
裁判所 養育費・婚姻費用算定表/日弁連 新算定表 2016年11月発表
婚姻費用の算定表には上記の2種類がありますが、裁判所の算定表を使うケースが多いです。
婚姻費用は別居中の夫と妻が、子どもがいれば子どもも含めて同居時と同等の生活を送るためのものです。
特に妻が専業主婦であれば別居すると生活に困窮する可能性が高いですから、きちんと婚姻費用を請求しましょう。
7.性格の不一致で離婚するメリット・デメリット
あとね、性格の不一致で離婚するメリットとデメリットも知りたいわ。
性格の不一致を感じて離婚を考えている、けれど本当にこの理由で離婚していいのだろうか…という悩みはつらいものです。
一人で考えていると何が正解か分からなくなってきますし、周囲に相談して止められると自分の考えに自信がなくなることもありますね。
先ほどもお伝えしたように、何をもって性格の不一致ととらえるかはそれぞれの夫婦、そしてそれぞれの夫と妻で意味が異なります。
あなたが「こんなに考えがずれてしまってはやっていけない」と思えば、すでに性格の不一致が起きている状態なのです。
そんなつらい状態をずっと維持するか、離婚を前向きに検討するかを考える際の参考として、性格の不一致を理由に離婚するメリットとデメリットを紹介しましょう。
まず離婚するメリットには次のようなものが考えられます。
性格の不一致の相手と離婚するメリット
・イライラしなくてすむ
・今後価値観の合う人と出会える可能性がある
・自分の考えを曲げることなく楽に過ごせる
対して、離婚するデメリットには次のようなものが考えられます。
性格の不一致の相手と離婚するデメリット
・性格の不一致は誰とでも起こりうるため離婚を後悔するかもしれない
・離婚にあたってさまざまな取り決めが必要になり、費用もかかるので途中で挫折するかもしれない
・子どもがいる場合は夫婦間のトラブルのせいで傷つけてしまうかもしれない
こうしたメリットとデメリットの双方をよく認識した上で、離婚するかどうかを最終的に決めていくと考えをまとめやすいでしょう。
8.まとめ
これはちょっと、じっくり考えてみる必要がありそうだわ。
離婚をするかしないかは夫婦次第だけど、そうなる前に一度冷静になりたいよね。
歩み寄りが難しいほどの性格の不一致を感じて離婚したい、どうしたらいいだろう、こんな気持ちになるとなかなか元のような円満な夫婦関係に戻るのは難しいものです。
なぜなら、こういった気持ちの裏には、
・性格の不一致で離婚するなんてわがままではないか? 間違っているのではないか?
・性格の不一致で離婚する場合でも慰謝料は取れるのか?
・性格の不一致を感じるけれど離婚も同居もしたくない
といった本音が隠れているからです。前にも後ろにも進めないような閉塞感がありますよね。
先にも述べたように、性格の不一致は、もともと別の環境で育ってきている夫婦間では起こって当然のことです。
あとは不一致を感じた部分を認識して話し合いなどをしてみるのか、話し合いの余地はすでにないのか、夫婦間の状況によってじっくりと検討したいですね。
特に子どもがいる場合は、子どもへ与える影響を考えて慎重に進めることが重要です。
離婚を検討するのは、考えたり決めたりしなければいけないことが多いだけに精神的にとてもきついもの。一日でも早くよりよい結論が出せるよう、この記事を参考に小さくてもいいのでひとつアクションを起こしてみてください。
早くやっておくべき離婚の準備として、マイホームの問題も押さえておきましょう!
あなたが幸せな離婚ができるよう、心から応援しています。
こうなったら性格の不一致で離婚よ!!