相手に原因があって離婚をする場合、相手のせいで嫌な思いをすることになった方は多いですよね。
このような場合は、慰謝料を請求すれば相手から慰謝料を貰えると思う方も多いようです。
離婚するなら、相手からはできるだけ沢山の慰謝料を貰いたいと思う方もいますよね。
ですが、実は慰謝料は相手に原因がある離婚でも必ずしも貰えるわけではないということはご存知でしょうか。
そんな馬鹿な!と思うかもしれませんが、慰謝料は貰えるケースと貰えないケースがあります。
どのようなケースなら貰えるのか、貰えないのかを詳しくご紹介します。
さらに、貰える場合、どうすれば慰謝料が貰えるのか、できるだけ高く貰うためにはどうしたらいいのかについてもご説明します。
慰謝料を貰うことは決して簡単ではありませんが、この記事を参考にしてぜひ納得できる結果を出していただきたいと思います。
また、慰謝料問題と同じく気にしておきたい問題が、マイホームの問題です。
早めに解決させておくことで、離婚がスムーズになりますよ!
目次
1.慰謝料って貰えないこともあるの?貰えるケースと貰えないケース
ほら、私シングルマザーになるわけだし・・・。
じゃあどういう時に貰えるの?
まずは、慰謝料を請求できるケースとできないケースを見ていこうか!
離婚につきものと思われているのが慰謝料です。
妻は離婚するときには夫から慰謝料を貰えると思っている方が多く、逆に夫は慰謝料を支払わなければならないと思っている方が多いようです。
ですが、夫婦が離婚した場合慰謝料の支払いが行われることは決して多くはありません。
これは離婚原因の多くが、慰謝料の支払いが必要になるものではないためです。
厚生労働省が発表している「司法統計からみた離婚」のデーターを見ると、離婚申し立ての動機で最も多いのは「性格が合わない」というものです。
統計は調停や審判による離婚についてのものなので、調停を行わない協議離婚の場合には、さらに「性格が合わない」ことを理由とした離婚は多くなると想定できます。
「性格が合わない」という離婚理由では、慰謝料を請求することはできません。
慰謝料を請求するためには、離婚理由が、あなたが相手から精神的苦痛を受けた、相手に責任があるからといった理由が必要になります。
1.慰謝料請求ができる5つのケース
具体的に慰謝料請求ができるケースを5つご紹介します。
- 相手に不貞行為があった場合
- 相手がDVを行った場合
- 相手がモラハラを行った場合
- 相手があなたにたいし悪意の遺棄を行った場合
- 相手により一方的にセックスレスとなった場合
ではこの5つについて、さらに細かくどうして慰謝料請求ができるのかをご説明していきます。
1)相手に不貞行為があった場合
あなたと結婚しているのに、あなた以外の異性と配偶者が肉体関係を持った場合を「不貞行為」といいます。
これは民法770条にも定められている離婚理由の一つで、仮に離婚裁判となった場合でも、明確な証拠さえそろえれば離婚を成立します。
法律上、配偶者があなた以外の異性との肉体関係があった場合のみを「不貞」としており、配偶者が性的マイノリティで、同性と肉体関係があった場合については、「不貞」となりませんが、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が成立したケースもあります。
どちらにせよ、あなたが今まで信じてきた配偶者が自分以外の人物と性的関係を持ったことは、あなたの精神に大きなダメージを与えたことが十分に想像できます。
この場合は明らかにあなたの配偶者に責任が有ることが分かるため、慰謝料を請求できます。
もし配偶者の不貞相手が、あなたと配偶者が結婚をしていることを知っているのに関係を持った場合には、相手にも慰謝料請求ができます。
ですが、不貞相手が結婚している事実を知らなかった場合には、不貞相手に対して慰謝料請求は認められないケースもあります。
2)相手がDVを行った場合
DVとうのは身体的暴力の事です。
例えば、隣同士に座っていて手を持ち上げた時に手が当たってしまったというようなものは、DVではありません。
あなたに日常的に配偶者が暴力を振るったり、医師の治療が必要になるほどの激しい暴力を振るわれたりするなど、うっかり手や足が当たってしまったとは明らかに異なる暴力を与え続けられると、あなたは肉体的にも被害を受けますし、精神的にも大きなダメージを感じます。
このようなDVを原因として離婚をする場合は、あきらかに配偶者に責任が有ることが明白ですので、慰謝料を請求できます。
3)相手がモラハラを行った場合
ちょっとした喧嘩や言い合いで、相手に対して心無い言葉を投げつけてしまうことは誰にだってありますが、それが毎日のように一方的に言い続けられると、精神的に大きなダメージを追ってしまうことがあります。
モラハラというのはこのような言葉による暴力や精神的な暴力のことで、モラハラを受け続けると精神的に弱り、心の病を発症して精神科や心療内科などに通う必要が出てくる人もいます。
あなたが毎日のように言葉の暴力、精神的暴力をつけ続けることが耐え難く、離婚したいと思ったときには、明らかに相手に責任が有ることは明白です。
慰謝料の請求が可能になります。
4)相手があなたに対し悪意の遺棄を行った場合
・勝手に仕事を辞めて毎日パチンコに通い、生活費を入れなくなった
・ある日急に帰ってこなくなり別居状態になった
・共働きなのに育児も家事もまったく担わない
・働ける状態なのに仕事をせず無収入で遊び歩いている
このように、法律で定められている夫婦の同居義務や協力義務、扶助義務などを正当な理由もなく果たさないことを、悪意の遺棄といいます。
このような状態では結婚している意味もなく、離婚したいとあなたが考えることはとても正当な考えです。
あなたが離婚をしたいと考えるに至った責任は配偶者にあることは明白ですから、離婚と共に慰謝料を請求できます。
5)相手により一方的にセックスレスとなった場合
あなたが配偶者に対して性交渉を求めた場合でも、相手がまったく相手にしてくれないことが続くと、セックスレスとなっていきます。
もちろん、あなたも特に性交渉を求めず、相手も求めないというセックスレスであれは何ら問題もありません。
ですが、あなたは配偶者との性交渉を望んでいるのに、相手によって一方的に拒否されセックスレスとなった場合には、女性としての尊厳、男性としての尊厳が傷つけられ、精神的に大きなダメージを感じることになります。
配偶者が浮気や不倫をしていて、その相手とは性交渉を持っているとなれば、尊厳はさらに大きく傷つけられます。
セックスレスは婚姻しがたい重大な事由を理由として離婚できますし、その原因が一方的に相手にある場合には、相手の責任によって離婚に至るわけですから、慰謝料も請求できます。
ただ、身体的に性交渉がどうしても難しい場合などは、相手に責任があると責めることは難しく、離婚は可能だとしても慰謝料の請求までは難しくなります。
2.慰謝料請求ができない7つのケース
慰謝料が請求できるケースとは逆に、このような場合には慰謝料が請求できないというケースもご紹介します。
- 性格の不一致(性格が合わない)
- 有責者が自分である
- 双方に離婚原因となる責任がある
- 信仰上の対立
- 相手の親族との不和
- 相手に有責行為がない場合
- すでに夫婦関係が破たんしていた場合
これら7つのケースを具体的にご説明します。
1)性格の不一致(性格が合わない)
離婚原因で最も多い性格が合わないからという理由は、明らかに相手に責任が有るとはいいがたいものです。
夫婦といってももともとは他人です。
生活パターンも異なれば、生まれ育った環境も異なるため、完全に同じ思考を持ち、同じ性格になることは考えられません。
結婚したということはお互いにどこか好ましい部分があったはずですし、歩み寄りができれば、多少性格が合わないと感じても、少しずつ馴染み、合わせられるようになっていくこともあります。
性格の不一致によって離婚を考える場合、一方的に相手のここが悪いという部分があるわけではなく、自分の思いに合わせて貰えない、相手の思いに合わせられない。という事の積み重ねが、いつの間にか大きな壁となってしまっている状態ですよね。
どちらかが夫婦関係を壊すようなことをしたわけではなく、さらに精神的苦痛を与えたわけでもありません。
どちらに明確に責任が有るとは言えないため、慰謝料を請求することは難しくなります。
2)有責者が自分である
離婚の原因を作ったのが、配偶者ではなくあなただった場合、責任が有るのはやはりあなたですよね?
慰謝料を請求するどころか、あなたが慰謝料を請求される立場になってしまうことになります。
あなたが夫である、妻であるということは関係がありません。離婚原因をあなたが作ったのであれば、責任を問われるのはあなたであり、精神的苦痛を与えてしまったあなたは慰謝料を支払う義務が生じることもあります。
3)双方に離婚原因となる責任がある
離婚の原因が夫婦双方にある。という場合もあります。
・夫が家を出て行き、寂しさから妻が不貞を行い、それが発覚して離婚となった
・夫が不貞を行い妻が腹いせに別の男性と不貞を行い妊娠して離婚となった
・夫からのDVに耐え兼ね相談をしていた異性と肉体関係を妻が持ち結果家を出て行き、離婚となった
どちらがより悪いかということではなく、どちらにも離婚原因となる責任があるこのような場合には、一方的に慰謝料を請求できないケースが多々あります。
ただ、互いに慰謝料を請求しあい、支払い合うということはあります。
例えば、夫からのDVに対して妻が慰謝料を請求し、妻の不貞に対して夫が慰謝料を請求するというケースです。
精神的・肉体的苦痛を受けた度合が多い方がより多くの慰謝料を請求できます。より大きな苦痛を受けた方が結果的に慰謝料の差額を貰うという結果になることがあります。
4)信仰上の対立
宗教の対立は時に戦争に発展してしまうこともあるほど、大きな問題になるケースがあります。
夫婦が互いに違う宗教を信じ、信仰しているものがある場合、時として信仰上の対立が生じることもあります。
相手が自分の信仰を理解してくれない。
信仰上の対立は、どちらも同じように相手が自分の信仰を理解してくれないと思うため、明確に相手が悪いとは言い切れません。
また、信仰上の対立により、双方が精神的苦痛を受けたと主張することにもなりかねません。
このようなケースでは、慰謝料の請求が難しくなります。
5)相手の親族との不仲
信仰上の対立と同じように、相手の親族との不和も慰謝料を請求できないケースになります。
理由としては、配偶者の責任で相手の親族と不和が起きているわけではないためです。
もちろん、配偶者がわざとあなたの悪口を親族に吹き込み、親族との不和を生み出したというのであれば話は別ですが、相手の親族との不和は明らかに配偶者に責任が有る。という訳ではありませんよね。
相手の親族との不和が起こる原因は、一方的に相手にあるわけではなく、あなたにも何かしらかの原因があることも多く、慰謝料を請求することはできません。
6)相手に有責行為がない場合
裁判での離婚は、民法770条に定義されている明確な離婚原因がなければ訴訟を起こせんが、協議離婚や調停離婚の場合には、法律上の離婚原因がなくても離婚ができます。
性格の不一致やちょっとしたことが原因で合っても、お互いに話し合い、納得できれば離婚ができます。
ですが、明らかに相手に責任が有る場合を除けば、離婚に際して慰謝料の請求はできません。
7)すでに夫婦関係が破たんしていた場合
相手の不貞行為を理由にして離婚をする場合、慰謝料の請求はできますが、相手が不貞行為をしたとき、すでにその前から夫婦関係が破たんしており、離婚を視野に入れていた場合などは、慰謝料請求ができない場合があります。
すでに愛情も冷め、夫婦関係が破たんしている状態で、配偶者が他の人と性交渉を持ったとしても、あなたが精神的に大きなダメージを受けるとは考えられないためです。
3.慰謝料が貰えるのは有責性がある場合のみ
そもそも慰謝料とは一体どのような性質を持つものなのでしょうか。
慰謝料というのは「精神的損害・肉体的損害の賠償」です。
つまり、相手から精神的に傷つけられたり、肉体的に傷つけられたりした場合に、そのお詫びを金銭で支払ってもらうものが慰謝料です。
あなたには非がないのに、相手が一方的にあなたを傷つけるなど相手が離婚の原因を作り、相手に責任がある場合に、慰謝料が請求できます。
離婚理由で最も多い「性格が合わない」というのは、相手に責任が有る。という訳ではありませんよね?だから、離婚をしても多くの人は慰謝料を請求できないという事になります。
また勘違いしやすいのは、慰謝料を請求できるのは妻のみではないという点です。
離婚原因を作ったのが、夫ではなく妻だった場合で、夫が精神的苦痛、肉体的苦痛を感じていたとしたら、夫が妻に対して慰謝料の請求ができます。
慰謝料は離婚原因を作った人が相手に対して与えた精神的苦痛・肉体的苦痛に対するお詫びの気持ちを金銭にて支払う賠償金です。
あなたが女性で、夫から必ず慰謝料がもらえると思っていたとしたら、当てが外れてしまう可能性がありますので、注意しましょう。
家事育児をしない旦那の場合、離婚するとしたら慰謝料はとれるのでしょうか?
→【家事育児をしない旦那】離婚はできる?慰謝料は?どの家庭も同じ?
2.慰謝料はいったいいくら貰えるのか
ってことは、慰謝料請求できないじゃないの!
でも不貞行為は怪しいわね。
じゃあ、もし慰謝料を請求できるケースで請求した場合、どのくらい貰えるのかを見ていこうか。
明らかに離婚するに至った原因が相手にある。慰謝料を貰えると思う。このような場合には、いったいいくら慰謝料を貰えるのかという点が気になりますよね。
1.慰謝料の金額は決まっていない
まず慰謝料というのは、先ほどもご紹介しましたが、精神的・肉体的苦痛に対する賠償という性質を持つ金銭です。
その人が感じる苦痛というのが、どのくらいなのかというのは、かなり個人差があります。
そのため、一概にこの場合はいくら。といった決まりはありません。
非常に極端な話をすれば、自分が受けた精神的苦痛が耐えがたいものであり、その賠償金として1億円を請求することも可能になります。
配偶者が資産家であり、1億円くらいなら問題ないとして支払ってくれれば、他人からみて些細な理由だとしても慰謝料として1億円の支払いを受けられます。
芸能人や資産家が離婚した時の慰謝料は、一般の人から見ると驚くような金額を支払っている例があります。
1988年に離婚した千昌夫さんと元夫人のジェーン・シェパードさんの場合には、50億円が慰謝料として支払われたといいますし、1987年に離婚した歌手の沢田研二さんと伊藤エミさんの場合には、18億円が慰謝料として支払われたといいます。
慰謝料と言われてはいますが、実際には財産分与の金額も含まれている可能性も高く、実際に精神的苦痛に対して支払われた慰謝料がどの程度なのかは公表されていないため分からない部分もあります。
ただ、本人たちの合意さえあれば、慰謝料の金額は自由に決められます。
お互いに納得できる金額の提示が協議によって行われていれば問題がありませんが、協議によって慰謝料の金額が決まらない場合は、やはり目安となる金額が必要となります。
慰謝料はどのような原因で離婚に至ったのか、婚姻期間はどのくらいあったのか、慰謝料を支払う有責者の支払い能力(資力)などによっても変わってきますが、おおよそ50万円~400万円の範囲内といわれ、中心となるのは100万円~300万円くらいとなります。
司法統計など公的な資料が存在するともっと分かりやすくなりますが、現在裁判所では慰謝料についての統計資料は公表していません。
判例や弁護士事務所などが資料として公表しているもので、判断をしていくことになります。
先ほどご紹介した慰謝料が貰える5つのケースごとに、判例や弁護士事務所の資料などを紹介しながら、慰謝料の目安金額をご紹介していきます。
また、慰謝料が裁判で決まる時に参考とされる事などについても併せてご説明していきます。
2.相手に不貞行為があった場合の慰謝料は100万円~300万円程度
相手が不貞行為を行ったということで慰謝料を請求することがあります。
このケースでは相場として100万円~300万円程度の金額が慰謝料として支払われるようです。
不貞行為の場合、婚姻中の配偶者に対して慰謝料を請求する場合と、不貞行為の相手となる人物に対して慰謝料を請求する場合があります。
実際にいくつかの判例を見ながら、不貞行為での慰謝料が実際にいくら支払われたのかを見ていきましょう。
1)東京地裁 平成14年7月19日判決 慰謝料トータル1,300万円
結婚10年目ごろから夫が不倫をはじめ、5年後には不倫相手と海外へ駆け落ちをした夫は、翌年帰国したものの、不倫相手と同居しながら、妻が住む家に通い、家業を再開したとのことです。
妻にとっては家業を手伝うことが、夫と不倫相手の生活を支える事となり、大きな屈辱を覚えたそうです。
この裁判自体は不倫相手に対して行われた訴訟で、不倫相手に対しては300万円の慰謝料の支払いが命ぜられ、別の裁判では夫に対して1,000万円の慰謝料の支払いが命ぜられたため、妻は計1,300万円の慰謝料の支払いを受けたということです。
このケースでは夫に対して非常に高い慰謝料の支払いが命ぜられています。
原因としては、海外への駆け落ちや、帰国後も妻とは同居をせず、不貞相手と同居をしているなど、妻が受けた精神的苦痛が大きいことが判断材料となっているようです。
また、妻がいることが分かっているのに、夫と同居し続ける不貞相手に対しても、妻が受けた精神的苦痛に対して慰謝料の支払いを命じていることになります。
精神的苦痛の大きさが、一般的な相場よりも高い慰謝料の支払い命令につながっているといえます。
2)横浜地裁 平成14年10月21日判決 慰謝料トータル 1500万円
夫と不倫相手が14年間もの長期間関係を継続し、不倫相手は夫の子を出産、夫はこの子供について認知も行い、さらには妻に無断で夫は離婚届を出したそうです。
離婚届は当然無効であり、妻と夫の婚姻生活は継続中であるものの、夫は妻に対して1,000万円の慰謝料の支払いを行い、さらに不倫相手に対して500万円の慰謝料の支払いが命ぜられたそうです。
この裁判では、不貞期間が非常に長い点や、態様自体が極めて悪質であることが認定され、このような高額な慰謝料の支払いが命ぜられたようです。
3)東京地裁 平成10年5月29日判決 慰謝料 150万円
婚姻中の夫婦であったが、夫は長時間勤務だったため、一緒に過ごす時間がほとんどないことに妻は不満を募らせていた状態だったそうです。
妻はスナックでのアルバイトをはじめ、2年後に不貞相手と不倫関係に陥り、間もなく夫と暮らしていた家を二人の子どもを連れて出て行き、不貞相手の自宅で一緒に暮らすようになったということです。
この裁判では不貞相手に対しての慰謝料請求ですが、すでに婚姻関係が破綻していた状態に近かったとくこともあり、150万円の慰謝料の支払いが命ぜられています。
4)東京地裁 平成21年10月30日判決 慰謝料 400万円
妻と職場で知り合ったという男性が不貞行為に及び、2度の堕胎を行うなどしたそうです。
この間、不貞相手は夫や子供の自動車保険や家財保険の代行などを行っていたため、夫は不貞相手とは顔見知りだったそうです。
夫は妻の不倫を知り、その相手が顔見知りだったことで精神的ショックを受け、その後医療機関に通院をしたり、カウンセリングを受けたりしているということです。
このケースでは妻の不貞相手に対して400万円の慰謝料の支払いが命ぜられています。
4つの判例から見て分かる慰謝料の金額の決まり方
不貞行為によって裁判所で支払いが命ぜられる場合、原告がどのくらい強い精神的苦痛を受けているのか。ということが慰謝料の金額の判断を行う上では大きなポイントになっていることが分かります。
長い期間不倫を続けてきた夫に対して、1,000万円の慰謝料の支払いが命ぜられている例が、妻が受けた精神的ダメージの大きさに対する損害賠償額となっているのを見れば、長い期間の不倫の代償の高さが分かります。
不貞行為に至った段階で、夫婦の間の婚姻関係がすでに破たんしている状態だったかについても、慰謝料の金額を決定するための材料となっていることもわかってきます。
3番目の事例では、スナックで知り合った男性と不倫をした妻は、すでに2年間も夫婦関係が破たんしていたために、慰謝料の金額も150万円と低めになっているようです。
4番目の事例は不倫を知ったことで精神的ダメージを夫が受け、医療機関に通うなど深刻な状態になっていることが分かります。
それゆえに、一般的な相場といわれている300万円よりも高い400万円という慰謝料の支払いが命ぜられています。
- 不倫の関係がどのくらい続いているのか
- 不倫が直接的な原因で婚姻関係が破たんしたかどうか
- 不倫相手と同棲をしている状態かどうか
- 不倫行為を知ったことで精神的なダメージをどのくらい受けたのか
このような事が判断材料となってきます。
3.DVやモラハラなどを受けた場合の慰謝料の相場は50万円~300万円程度
配偶者から受けた身体的暴力や精神的暴力など、DVやモラハラを原因として離婚する場合にも、肉体的損害や精神的損害に対して慰謝料を請求できます。
DVやモラハラはどのような状態なのかによっても大きく慰謝料の金額に開きが出てきています。
実際の判例で慰謝料がいくら支払われているのかを見ていきましょう。
1)東京地裁 平成17年6月22日判決 慰謝料 400万円
夫は自分の意向に沿わないとして、妻に対し極端なまでに侮辱をしたり、暴行をうるうといったことが続いたいうことです。
婚姻期間は20年~30年というこの夫婦の場合には、夫に対して400万円の慰謝料の支払いが命ぜられました。
2)東京地裁 平成22年3月11日判決 慰謝料 500万円
すでに婚姻期間が20年~30年の夫婦です。
結婚当初から夫が妻に対して身体的、精神的暴力がひどく、妻は判決当初も心身のバランスを崩している状態になっているため、夫に対し、500万円の慰謝料の支払いが命ぜられました。
3)東京地裁 平成23年9月29日判決 慰謝料20万円
婚姻期間5年未満の夫婦ですが、夫が身体的暴力を振るうことが原因で婚姻の継続が困難になり、妻が慰謝料500万円を請求したものの、判決では20万円の支払いが命ぜられた。
4)東京地裁 平成18年11月19日判決 慰謝料300万円
婚姻期間10年~20年となる夫婦です。
夫の暴力により妻が後遺障害併合8級に認定されるケガを負ったことで婚姻の継続が困難となったケースで、妻は1,000万円の慰謝料を請求したが、判決では300万円の支払いを命じ、さらに入院・通院に関わる費用も夫が支払うことを命じた。
4つの判例からみて分かってくる事実
DVやモラハラでの慰謝料請求は、どのくらいのDVやモラハラが、どのくらいの期間続いたのか。DVやモラハラを受けたことにより、具体的に精神的損害、肉体的損害がどのくらい生じたのかという点が重要になってきます。
1つ目の判例と2つ目の判例はともに20年~30年間婚姻生活を続けてきた夫婦ですが、2つ目の判例の妻は心身のバランスが崩れてしまうほどの損害を受けているため、慰謝料の金額が高くなっていることが分かります。
暴力が原因となる場合でも、婚姻歴によって大きく慰謝料の金額が変わることが、1つ目のケースと3つ目のケースで変わってきます。
2つ目のケースと4つ目のケースでは、婚姻歴によってはやり慰謝料の金額は大きく違いますが、4つ目のケースは今後も入院や通院にかかる費用を夫が支払う必要があることから、この先夫が支払うべき金額は膨れていく可能性もあります。
- どのくらいの期間DVやモラハラを受け続けたか
- DVやモラハラの回数
- 自分には落ち度がないのにDVやモラハラを受けたかどうか
- DVやモラハラが原因起こったケガ、障害、後遺症の有無
- 精神的障害の有無
- 肉体的、精神的障害の重さ
このような事が判断材料になってきます。
4.悪意の遺棄場合の慰謝料の相場は50万円~300万円程度
悪意の遺棄を原因として離婚する場合に、同時に慰謝料の請求ができます。
悪意の遺棄に該当する実際の裁判の判例で、実際に悪意の遺棄によって支払われた慰謝料の金額をみていきましょう。
1)東京地裁 平成16年10月20日判決 慰謝料200万円
夫は妻に対する思いやりの心がなく身勝手なところがあったそうです。仕事をする事もなく、性格も怠惰であり、金銭的な部分でもかなりルーズであることを理由として、妻が離婚を決意、夫に対して300万円の慰謝料を請求しています。
健康でありながらも仕事をすることがない点が悪意の遺棄に相当すると考えられます。
この裁判では夫に対して200万円の慰謝料の支払いが命ぜられています。
2)東京地裁 平成21年4月21日判決 慰謝料300万円
妻は夫に対して多額の金銭的援助を続け、さらに子どもが生まれたのに、夫は生まれたばかりの子どもを置いて家を出て行ったそうです。
その後、夫は関係修復を図ることもなく、有責者でありながら離婚調停を申立てたり、養育費の支払いを怠るなどあきらかに悪意の遺棄と言える行動をとったそうです。
妻は夫に対して1,000万円の慰謝料を請求したものの、裁判所は300万円の慰謝料の支払いを命じたそうです。
2つの判例からみて分かってくる事実
悪意の遺棄を原因とした離婚訴訟は離婚訴訟全体を見た場合は、少数になります。
さらに、慰謝料が認められる場合も、決して多くはありません。
そのため判例自体も比較的少なくなっています。
この理由は、悪意の遺棄の立証が難しいためです。
悪意の遺棄が原因で離婚となり、慰謝料の支払いが認められる場合には、100万円が基準額となります。
その上で同居の義務や協力の義務、扶助義務などをどの程度放棄しているのかなどにより、慰謝料の金額が決定します。
- 別居期間はどのくらいなのか
- 別居にあたり原告側に落ち度はなかったのか
- 原告の就業状況
- 被告の健康状態
このような事が判断材料になってきます。
もしかして浮気?怪しいと思ったらやってみたい確認方法と、不貞行為の証拠の集め方
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5.セックスレス場合の慰謝料の相場は100万円~200万円程度
セックスレスは婚姻を継続しがたい重大な事由の一つとして離婚理由に該当し、慰謝料の請求ができます。
実際にセックスレスを原因として離婚、慰謝料の請求を行った判例から、どのくらいの慰謝料がもらえるのかをみていきましょう。
1)浦和地裁 昭和60年9月10日判決 慰謝料 500万円
夫はポルノ雑誌やポルノビデオなどについて異常な関心を示し、自慰行為だけを行い、妻の性交渉の求めに応じることがなかったそうです。
この裁判では夫が妻に対して慰謝料として500万円の支払いが命ぜられています。
2)京都地裁 平成2年6月14日判決 慰謝料 500万円
夫はもともと性交渉に対して無関心であり、性交渉がないまま婚姻したものの、1ヵ月足らずで別居し離婚となった。婚姻費用として妻は450万円を消費していたそうです。
裁判では元夫は元妻にたいして婚姻費用450万円分を含め、500万円の慰謝料の支払いが命ぜられています。
3)岡山地裁津山支部 平成3年3月29日判決 慰謝料150万円
妻は婚姻当初から性交渉を拒否していたそうです。
男性に触られると気持ちが悪いという精神的な面から性交渉に耐えられないことが医師によって診断をされたそうです。
この事実を妻は婚姻前から知っていたのにもかかわらず、夫に告げておらず信義則違反でもあるといえます。この裁判では妻は夫に対して150万円の慰謝料の支払いが命ぜられています。
3つの判例からみて分かってくる事実
今現在、多くの夫婦がセックスレスの状態になっていると言われています。ですが、すべての夫婦がセックスレスが原因で離婚する、慰謝料の請求が行えるわけではありません。
夫婦の片方が相手に対して性交渉を求めても、特別な理由がないのに拒否を続けたり、もともと性交渉ができない状態にあったのに、それを告げていないなど、有責があると認められる場合に限るようです。
2つ目の判例では、慰謝料は500万円と高額となっていますが、その中身をみると、450万円は婚姻費用であり、実際の慰謝料は50万円ということになりますよね。
仮に性交渉が不能という場合でも、それを相手が分かっていれば問題がありません。
ですが、3つ目の判例では、結婚前から精神的な原因によって性交渉が難しいことが妻は分かっていたのにもかかわらず、夫にはそれを告げず婚姻をしています。
これが、慰謝料請求ができる理由となっています。
- セックスレスとなった期間が長いかどうか
- 婚姻をしてから性交渉があったかどうか
- 夫婦間ではセックスレスでも、他に性交渉や性行動があるかどうか
このような事が判断材料になってきます。
慰謝料の金額が決めるための要素
離婚の直接的な原因以外にも、慰謝料の金額を決めるためにはいろいろな要素があります。
ここでは離婚の直接的な原因以外の部分で、慰謝料の金額を決めるための要素についてご説明していきます。
慰謝料の金額を決める場合に注目されることとして、以下のようなものがあります。
- 婚姻期間
- 年収
- 年齢
- 子どもの有無
- 有責がどの程度あるのか
1)婚姻期間は長いほど慰謝料が高くなる
婚姻期間の長さは、それだけ夫婦の歴史になります。長い間連れ添ってきた夫婦の間には、男女の情愛以外にも、さまざまな思いが重なってきます。
長く一緒に暮らしていけば、信頼感なども増しますが、不倫やDV、モラハラといったことでこの信頼感が崩された場合、信頼感が高ければ高いほど、精神的なダメージは強くなります。
慰謝料は精神的なダメージに対する損害賠償ということを考えれば、婚姻期間が長いほど慰謝料が高くなるのは納得できます。
2)年収が低いと慰謝料は低くなる
いくら高い慰謝料の支払いを命じたとしても、慰謝料を支払う人の年収が低ければ、支払い能力はありませんし、何より支払う人の生活が立ち行かなくなる危険性もあります。
年収が高い場合には、相応の慰謝料の支払いを命じられても、年収が低すぎる場合には支払い能力自体がないため慰謝料の金額が低くなるケースが多くなります。
3)年齢が高いほど慰謝料は高くなる
日本では年功序列の給与体系などがまだまだ根付き、年齢が高い人ほど給与水準が高く、さらに婚姻期間も長いことも多いため、どうしても年齢が高いほど慰謝料の金額は高くなりがちです。
さらに、年齢ではありませんが、女性に比べると男性の方が収入が高いことも多いため、女性よりも男性の方が慰謝料の支払い金額は高くなる傾向があります。
ただ、年齢が若くても収入がある場合、女性でも収入が高い場合には、この限りではありません。
4)子どもがいればその分慰謝料も高くなる
子どもがいる夫婦の場合で、有責者ではない人が子どもを引き取る場合には、やはり慰謝料はその分高くなる傾向があります。
これは、有責者が離婚原因を作らなければ、子どもは夫婦が揃った家庭で育つことができたはずで、有責者は子どもの利益も奪ったことになるためです。
養育費とは別に、子どもがうけた精神的ダメージに対する損害を支払う必要がありますので、子どもがいればその分慰謝料は高くなります。
5)有責が重なればそれだけ慰謝料は高くなる
直接的な離婚原因が一つしかないというわけではなく、例えば有責者が不貞行為を行った上、配偶者とはセックスレスになり、DVもあったということであれば、配偶者が受けた肉体的精神的ダメージは非常に高くなりますので、慰謝料の金額も高くなります。
有責がどのくらいの物なのか、有責がいくつも重なっていないかという事は、慰謝料の金額を決める大きな要素になってきます。
6)その他
その他にも、本来婚姻が継続していれば得られたはずの利益が損失されてしまった、離婚によって受ける精神的なダメージなどが、慰謝料の金額の算出に考慮されることもあります。
有責者が想像しているよりも高い慰謝料の支払いが命ぜられた場合には、それだけ相手は大きな精神的苦痛を味わっていることが分かります。
慰謝料を請求する際も、どれだけ自分が精神的苦痛を受けたかということをしっかりと立証する材料をそろえることで、裁判官に大きな精神的苦痛を受けたことがアピールでき、高い慰謝料の支払い命令につなげられます。
3.どうしたら慰謝料は貰えるの?慰謝料請求の4つの方法
細かく見ていくと、なんだか慰謝料って複雑な決まり方をするのね。
慰謝料がたくさんもらえると予想して離婚しても、失敗することが多いから、リリ子さんも気を付けるんだよ。
ちなみに、慰謝料ってどうやって請求するの?なんか決まり事があるの?
有責配偶者が自分の責任を痛感していて、自分から払うよと言ってくれれば、黙っていても貰える可能性もありますが、基本的には慰謝料は相手に請求をしなければ貰えないものです。
有責者に対して慰謝料を請求することはあくまでも権利です。
権利を行使しなければ支払いを受けることはできません。
- 口頭で請求をする
- 電話などで請求をする
- 文書で請求をする
- 法的手段、手続きで請求する
この4つが考えられます。
最も確実な方法は法的手段、手続きで請求することになりますが、やはり手間や負担を考えると、この方法は最終的な方法となります。
まずは口頭や電話で話し合いを行い、慰謝料の金額をなどを取決め、請求をするということになりますが、この二つについてはいくつかの点で問題があります。
1)口頭や電話で請求することの問題点
あなたを含め、一般の方に慰謝料を請求する場合も請求される場合も、どのような根拠でその慰謝料の金額を決めたらいいのか分からない部分があります。
むやみに相手が悪いんだから自分の言い値の金額を慰謝料として支払ってほしいと言われても、それが正当なのか、あまりにも法外な金額なのかが分からないため、合意ができない可能性が出てきます。
裁判の判例を見てみても、原告は慰謝料1,000万円を請求している裁判で、裁判官は300万円の慰謝料の支払いを命じているというものがあります。
慰謝料の適正な金額がなかなか分からない点が一つ大きな問題です。
次に、当事者同士の話し合いは、どうしても感情的になりやすいという点があります。
「不倫相手と結婚したいなら慰謝料を払いなさいよ」
「請求した慰謝料の支払いをしてくれないなら家も何もかも売ってそのお金をもらうわよ」
つい感情的になり脅迫まがいの言い方や、恐喝と取られてしまう言い方になってしまう危険性も出てきます。
離婚問題でナーバスになっている状態でこのような事が起これば、脅迫や恐喝で訴えられる可能性も出てきます。
さらに、口頭や電話で合意できた場合でも、のちのち「言った、言わない」といった争いが起こってしまう危険性も出てきます。
口頭や電話で合意できた場合には、その内容を公正証書に残すようにすれば、この問題については解決できます。
公正証書に残せば、万が一支払いが滞った場合に強制執行を行うことも可能です。
ただし、公正証書を作成するためには、当事者双方が公証役場に出向く必要があります。公証役場に出向くことを拒否されたり、自分が相手とは会いたくないといった事が起こる可能性もあります。
公正証書の作成には費用も掛かりますが、後々の事を考えると口約束や自分たちが勝手に作成した文書だけを残すよりも公正証書にしておくことがおすすめです。
相手には会いたくない場合には、行政書士に委任することもできます。
行政書士に支払う手数料なども必要になりますが、しっかりとした証書の作成が可能になるためおすすめです。
2)あらかじめ内容証明郵便で根拠を示し慰謝料請求をする
慰謝料の請求のうち、文書で請求する場合、相手にどのような文書を示したかが分かるように、内容証明郵便で送付することがおすすめです。
文書には、どうしてこのような慰謝料を請求するのかという根拠をしっかりと示すことが必要です。
内容証明自体は法的効力を持つものではありませんが、のちのちに「言った、言われていない」といった問題を回避できるものになります。
理由としては、相手に送付した手紙の全文が、郵便局に保存されているためです。
配達証明をつけておけば、相手が受け取ったことも証明できます。
口頭や電話などでの話し合いがどうしても感情的になりがちなのに対し、内容証明郵便なら落ち着いて文書を作成し、慰謝料の根拠を示せます。
さらに、一般の方にとっては日常的とは言えない内容証明郵便が届いたということが、相手にとってはプレッシャーとなります。
これ以上逃げ続けることは難しい。相手は本気で慰謝料の請求を行っている。ということを実感してもらえます。
内容証明を送り、その内容による示談になるケースが多く、慰謝料の請求では効果的な方法の一つです。
3)法的手段は最終的な方法
話し合いができない、内容証明を送っても結果的に慰謝料の支払いに応じて貰えないといった場合には、法的手段による最終的な慰謝料請求を行うことになります。
法的手段には二つの方法があります。
- 調停
- 裁判
慰謝料の請求は一般調停事件と言って、まずは調停を申し立てて調停委員を間に挟んだ話し合いを持つことが必要となります。
裁判を提訴する前に、調停を経なければならない調停前置主義が適用される案件です。
協議離婚が成立せず、離婚調停を申し立てる場合で、その時点で慰謝料の請求も考えている場合には、離婚調停と合わせて慰謝料請求が行えます。
ここでしっかりと和解に持ち込めれば、別途慰謝料請求のための調停を申し立てる必要がなくなります。
裁判の場合も同様で、調停が不調となり裁判になった場合でも、離婚裁判と合わせて慰謝料請求を行えば、別途裁判を起こす必要がなくなります。
調停では確実な証拠がなくても慰謝料の請求を行えますが、裁判の場合には、確実な証拠が必要となるという違いもあります。
相手の有責がどのようなもので、自分がおった精神的ダメージ、肉体的ダメージがどのくらいあったのかといった、判断材料をそろえる必要があります。
調停は間接的な話し合い、裁判は裁判官による判断という違いがあります。裁判の途中でも和解や合意もできます。
ただ、裁判の場合には、請求金額以内の額で、過去の判例などを参考にしながら慰謝料の金額は合理的に決定されることになります。
調停も裁判も調停調書や判決といった法的効力を持つ文書が作成され、万が一支払いが滞った場合には強制執行が可能となります。
費やした労力の分、しっかりと支払いをして貰える可能性が高くなる方法といえます。
4.すでに離婚済み。こんな私でも慰謝料は請求できますか?
ちょっと素朴な疑問なんだけど、もし離婚した後でも慰謝料請求ってできるの?
じゃあそのことについても説明するね!
すでにで離婚が成立し、新しい人生の一歩を踏み出したとたんに、元の配偶者が再婚した。というケースもあります。
その再婚相手が、実は自分と婚姻関係にある時代からお付き合いをしており、さらにすでに妊娠中。このような場合、確実に元配偶者は不倫をしていたことは明らかです。
このように後から元配偶者の有責を知り、精神的に大きなダメージを受けた場合、慰謝料は請求できるのでしょうか。
1.慰謝料請求権の時効は3年
婚姻中の配偶者だけではなく、離婚後も精神的ダメージを受けた元配偶者は、有責配偶者に対して慰謝料を請求することは可能です。
ただし、権利には「時効」というものがあり、離婚の慰謝料については、時効は3年間となっています。
つまり、離婚した時から3年以内であれば、あなたは有責配偶者に対して慰謝料の請求ができます。
ただし、次のようなことがあると、離婚後3年以内でも慰謝料の請求ができないことがあります。
- 離婚の条件として離婚後はどのような名目であっても金銭の請求はしないこと
- 離婚に際しての債権債務が一切ないことをお互いが確認していること
- これに類する取り決めを行っている場合
このような約束がある場合には、時効前でも慰謝料の請求ができない可能性が出てきます。
約束自体が相手に騙されていた、脅迫されていた、思い違いがあったといった場合には、慰謝料の請求も可能になりますが、騙されたことや脅迫されたことなどを立証する必要も出てくるため、困難になってきます。
離婚をする場合には、このような取り決めはしないようにすることが大切ですね。
1)時効の起点はいつか
先ほど離婚から3年以内であれば時効にならず慰謝料の請求ができるとご説明しましたが、もう少し詳しく時効についてご説明します。
離婚に関する慰謝料には大きく2つの種類があります。
- 婚姻中の有責行為によって離婚をすることになった精神的苦痛に対する慰謝料
- 相手の有責行為によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料
前者は離婚そのものに対する慰謝料の請求で、後者は有責行為に対する慰謝料の請求です。
似ているようですが、微妙な違いがあるため、時効の起点がかわってきます。
離婚そのものに対する慰謝料の請求の場合には、離婚成立時点が起点となります。離婚届を出した日から計算して3年たっていれば時効になります。
一方で、有責行為に対する慰謝料の場合には、有責行為を知った日や有責行為があった日が起点となります。有責行為の内容によって、時効の期間には違いが出てきます。
不貞行為の場合は不貞行為があった時から20年
先ほどから慰謝料の時効は3年という話をしてきましたが、不貞行為の場合には、不貞行為があった時から20年間経つと、時効が成立します。
たとえば、35年連れ添ってきた夫婦の間で、22年前に不貞行為があり、突然夫の婚外子が20歳になったと言って目の前に現れたとします。
あなたは22年前の夫の不貞行為を今知ったことになり、精神的ダメージを負ったとします。
それを原因として離婚となった場合です。
妻としては、夫が不貞行為を行っていたという精神的ダメージと、それを知り離婚することになったという精神的ダメージを受けたことになります。
不貞行為は22年前に行われたことになるため、20年をすでに経過しているために時効となります。
有責行為を知った時から3年
先ほどの例でいえば、22年前の不貞行為でも、不貞行為があったことを知ったのはつい最近であり、不貞行為の相手の名前や住所なども同時に知ったことで、妻ははじめて慰謝料を請求できる状態になります。
慰謝料が請求できる状態、つまり有責行為を知った時を起点として、3年間は慰謝料を請求できることになります。
離婚届を提出した日から3年
有責行為に対する慰謝料ではなく、離婚そのものに対する慰謝料と考えると分かりやすくなります。
35年間連れ添ってきた夫婦の例なら、有責行為を知ってから1年後に離婚をしていることになります。
有責行為に対する慰謝料の請求は離婚後その事実を知った時、つまり離婚の2年後には消滅していますが、離婚そのものに対する慰謝料は、離婚届を提出してから3年後までは請求できることになります。
最終的なリミットとなるのは、離婚後3年、もしくは有責行為を知った日から3年。となってきます。
2)時効が成立したら慰謝料はもらえないの?
すでに離婚から3年が過ぎてしまい、時効が過ぎているから慰謝料はもらえないのか。というと、実はそうとは言い切れません。
時効によりなくなってしまうのは、慰謝料を請求する権利なので、もし有責者が慰謝料を払いますと言ってくれれば、何の問題もなく慰謝料はもらえます。
しかも、一回でも慰謝料を支払ったり、慰謝料を払うといった意思表示を見せたりすれれば、相手は時効を主張できず、慰謝料を支払ってもらえます。
さらに、時効になる前に内容証明で慰謝料を請求すれば、時効は6ヶ月間一時的に中断するため時効を伸ばせます。
さらに時効前に「支払い督促」「調停申し立て」「訴訟の提起」といった裁判上の請求を行えば、その時点で時効は中断します。
離婚後でも時効が過ぎていなければ慰謝料の請求は可能ですし、もし時効が過ぎそうという場合には、時効を伸ばしたり、裁判上の請求を行ったりすれば、時効が中断して慰謝料を貰える可能性が出てきます。
相手に法律の知識がなく、慰謝料を支払うという意思表示があれば、時効を主張できなくなるため、時効が過ぎていても試しに慰謝料の請求をしてみる。というのも試してみる価値はあります。
2.離婚後慰謝料を請求された場合確認したい2つの事
離婚後に慰謝料を請求する場合だけではなく、慰謝料を請求される立場になってしまうこともあります。もし、あなたが離婚後に慰謝料を請求された場合慰謝料の支払いに応じなければならないのでしょうか。
まずは二つの事をしっかりと確認しましょう。
- 慰謝料を支払う必要が自分にはあるのか
- 時効が成立していないか
離婚をすることで慰謝料が貰えると思う人は女性を中心にまだまだ多くいます。
あなたに特に慰謝料を支払わなければならない、有責行為がないのにもかかわらず、とりあえず慰謝料を貰おうとする人もいます。
慰謝料を支払う理由が自分にない場合には、そもそも慰謝料を支払う必要がないことになります。
仮に慰謝料を支払うことが必要な有責行為があった、身に覚えがあった場合でも、時効が成立していれば、支払う必要がなくなります。
時効が成立していないかを確認することは非常に重要です。
有責行為がない、時効が成立しているといった場合には、慰謝料の支払いは必要なくなります。
支払う必要がなければほっとけばよいのか
慰謝料を支払う必要がない場合、そのままほっとけばよいのかというと、そうではありません。自分には慰謝料を支払う義務がないことを、請求してきた相手に対して知らせる必要があります。
口頭で伝えるとどうしても「言った、言わない」といったトラブルが起こりやすいため、内容証明郵便を利用して伝えるようにします。
万が一そのまま放置してしまうと、相手が裁判などを起こし、本格的に慰謝料支払い請求を掛けてくる可能性が出てきます。
無視をするというのは、明らかに相手にやましいことがあるため。という主張をされてしまう危険性もあります。
そうなると不利な状況に立たされてしまうこともありますので、支払い義務がないという時には、相手に対して内容証明郵便を送り、慰謝料支払い義務がないことを伝えましょう。
心当たりがあり慰謝料支払いに応じる用意がある場合
自分が有責行為をした自覚があり、時効も成立していない場合には、慰謝料を支払う必要が出てきます。
ですが、相手の言い値の慰謝料を支払わなければならないのかというと、決してそうではありません。
この時点ではまだ、慰謝料の金額が法確定しているわけではありません。
請求された慰謝料の金額自体が、不当に高いものになっていないかを確認し、場合によっては減額交渉を行うことも可能になります。
まずは請求された慰謝料の金額が妥当なのか、高すぎる場合には減額交渉をするための手段をどのようにすればよいのか。という事を考えていく必要があります。
一般の人が慰謝料の金額の判断をしたり、減額交渉を行ったりする事は難しいため、慰謝料問題に詳しい弁護士などに相談をしてみることがおすすめです。
今後訴訟などに発展してしまった場合にも、心強い味方になってくれますよ。
5.不倫された!配偶者以外にも不倫相手からも慰謝料が欲しい
私も旦那の不貞行為を疑い始めたら、ちゃんとカウントダウンしていかないと!
そんで~、2人分の慰謝料をもらって・・・うふふ
不貞行為一つに対しての慰謝料請求になるから、倍になるわけじゃないよ。
それから、もしかしたら慰謝料請求ができない場合もあるんだ。
不貞行為を原因として配偶者と離婚し、配偶者に対して慰謝料を請求する場合、配偶者だけではなく、不貞行為の相手に対しても、慰謝料を請求したいという気持ちは理解できます。
不貞行為の相手、つまり不倫相手から慰謝料を貰えるのでしょうか。
慰謝料を貰えない場合もある
基本的には不倫相手に対して慰謝料を請求することは可能ですし、実際に慰謝料の支払いをして貰うことも可能ですが、次のような場合には、慰謝料を貰えない場合もあります。
・不倫相手が有責配偶者が既婚者とは知らなかった場合
・有責配偶者が独身であると不倫相手をだましていた場合
不倫相手がそもそも既婚者だと知らなかった場合や、独身であると思いこまされていた場合などは、不倫相手には落ち度がないことになります。
落ち度がない相手に対して慰謝料を請求するのはあまりにも酷ですよね。
ただ、少し調べればわかるような場合は、この限りではありません。
例えば、勤務先の同僚・上司部下といった関係で、社内不倫だった場合などは、結婚していることをうすうす知っているのにもかかわらず肉体関係を持ったことになりえます。
結婚しているかも?と思っていただけで結婚の事実は知らなかったという場合には、過失があると言えます。
このような場合には慰謝料の請求が可能になることもあります。
不貞行為は二人の共同責任
あなたが不貞行為を理由として有責配偶者と、不倫相手の双方に慰謝料の支払いを請求した場合、それぞれに慰謝料を請求するのではなく、二人に対して慰謝料の支払い請求をすることになります。
少し分かり難いかもしれませんが、不貞行為は一人だけで行えるものではなく、2人で行った一つの不貞行為ということになり、慰謝料を請求できるのは、一つの不貞行為についてになります。
一つの不貞行為に対しての慰謝料は、不貞行為を行ったどちらか一方が支払ってもいいですし、二人が半分ずつ支払えます。
二人に対して請求をしたからと言って、一つの不貞行為に対して倍の慰謝料を貰えるわけではありません。
不貞行為に対して有責配偶者から慰謝料を貰えたから、さらに不倫相手からも慰謝料を貰おうということはできません。
不貞行為は許せないけど、離婚はまだしたくない。生活の事を考えると、不倫相手からだけ慰謝料が貰えればよい。と考える方もいます。
ですが、もし不倫相手が有責配偶者に対して、慰謝料の半額を支払うよう請求があり、合意に至らず訴訟などになり慰謝料の半分を有責配偶者が持たなければならなくなる可能性もあります。
不倫相手に慰謝料を請求する場合には、このような点を注意する必要があります。
不倫相手が支払いに応じない場合には訴訟も視野に証拠集めを
不倫相手に慰謝料の請求をしてもなかなか支払ってもらえない場合には、裁判上で慰謝料請求が行えます。
この場合、不倫相手に落ち度があることを立証し、不貞行為の事実を明確にする証拠が必要となってきます。
不倫相手に慰謝料請求をするときには、訴訟も視野に入れて証拠集めをしっかりと行うことが必要です。
話し合いの中で不倫相手から慰謝料を支払う意思がある。といった発言があった場合には、これも証拠として活用できますので、話し合いの内容は録音をしておくなど、しっかりと準備しておくことも大切です。
6.慰謝料を貰うなら少しでも高く。慰謝料UPのコツ
もし貰えることがほぼ確実になったら、慰謝料を少しでも高く貰いたいんだけど、どうすればいいの?
じゃあ最後に、慰謝料アップのポイントを紹介しておくね。
慰謝料を貰う立場としては、少しでも高く慰謝料を貰いたい。という気持ちが出てきます。では、慰謝料を高く貰うためにはどうしたらいいのでしょうか。
1.話し合いで慰謝料を決める
もとも高く慰謝料を貰える可能性があるのは、夫婦間の話し合いで慰謝料の額を決めるというものです。
話し合いで慰謝料を決める場合には、過去の判例や相場などを考えずに金額を決定できます。極端な話、相手が支払うということを合意してくれれば、1,000万円でも、1億円でも、慰謝料が貰えます。
話し合いで慰謝料を決めた場合には、必ず公正証書に残すようにします。
せっかく高額の慰謝料の支払いが話し合いで決まっても、後で反故にされてしまったり、支払いが滞ってしまったりしては意味がありません。
2.調停・裁判の場合はなるべく和解に持ち込む
慰謝料の金額についての話し合いがなかなかまとまらず、調停や裁判となった場合には、判決が下るまで待たず、できるだけ和解に持ち込むようにします。
判決よりも和解の方が多少は慰謝料が高く貰える可能性が出てきます。
和解は当事者同士の話し合いや歩み寄りで結論が出せます。判決に比べると自分の言い分を主張できるため、高い慰謝料を主張する余地があります。
3.裁判では相手の有責行為をしっかりと立証すること
慰謝料の金額は相手の責任の重さに比例して高くなります。
つまり、相手の有責行為をしっかりと立証することで、高い慰謝料を支払ってもらう権利がある事、相手には慰謝料を支払う義務があることを訴えられます。
・DVを原因とする場合には、自分が負った傷の写真や医師の診断書
・モラハラの場合は暴言を受けた際の録音テープや心療内科の医師の診断書
・不貞行為であれば証拠写真や調査会社の調査報告書
・セックスレスなら性行為がないことが分かる日記など
第三者から見ても明らかに責任の所在が分かる、自分が受けた精神的・肉体的苦痛の大きさが分かる証拠をそろえることが、高い慰謝料を貰うためのポイントになってきます。
DVでの慰謝料請求や、モラハラでの慰謝料請求の方法についてはさらに詳しくご紹介している記事もあるため、こちらも参考にしてください。
まとめ
これで、離婚しても損することなく請求できそう!
離婚をした女性は誰でも慰謝料が貰えるといった誤解をしている方は多くいますが、慰謝料はご紹介してきた通り、不法行為によってあなたが精神的苦痛、肉体的苦痛を受けた場合の損害賠償です。
自分が受けた精神的苦痛や肉体的苦痛が大きければ大きいほど、多くの慰謝料を貰えることになり、逆に苦痛を受けていない場合には、慰謝料を貰うことはできません。
少しでも多くの慰謝料を貰いたいという場合には、あなたが受けた苦痛がどれほど甚大な物なのかを立証する必要があることをしっかりと理解しましょう。
受けた精神的苦痛を金額に換算するという事は非常に難しいですよね。
また、受けた苦痛が非常に大きなもので、自分ひとりで相手に請求をすることが難しいケースもあります。
・相手と話し合いを持つことが怖い
・自分一人ではとても太刀打ちできない
・相手が弁護士を立ててきた
このような場合には無理をせずあなたも弁護士を立てることを考えましょう。
慰謝料請求が話し合いでまとまれば問題が少なくなりますが、話し合いがこじれてしまったり、裁判となったりした場合には、どうしてもわからないことが多くなります。
このようなケースでは、自己判断で突き進むのではなく、離婚問題や慰謝料問題に詳しい弁護士に相談をすることがおすすめです。
あなたは沢山傷つきました。これ以上傷をひろげてしまう前に、ぜひ慰謝料という一つの結論を出し、傷をいやすことを考えてください。
一人では大変、さらに大きな傷になりそうという場合には、ぜひ手助けを求めましょう。
あなたが受けたダメージを、相手がしっかりと認識し、金銭という形で償って貰えることを祈っています。